第25話 ハイドラの一日
〇ハイドラ視点〇
ヤマタイ国、天気のいいある日。
ハイドラは縁側でお茶を飲んでいた。
「今日もいい天気ね」
「お婆ちゃんかお前は」
失礼なことを言ってくるこの男はヤオという名だ。
「いいじゃない。ここは日向ぼっこするのには丁度いい場所なのよ」
「そうか。俺は畑仕事に行ってくる。お前もたまには手伝えよ」
「気が向いたらね」
ヤオは畑仕事をして市に売りに行くのが毎日の日課で今日の市は午後からの予定だ。
まだ畑自体はそこまで広くないのでたまに畑仕事を手伝っている。赤い土が広がるのを待たなければならないのも原因だ。
ハイドラは少し休んでから畑に向かう。
「お、来たか。収穫するのを手伝ってくれ」
当たり前のように言ってくる。
一体どこの世界に畑仕事をするドラゴンがいるというのか。
しかし手伝う。働かざるものは食うべからずだから。
「それにしても熱っついわねー」
日が高くなって気温も上がる。
「ミミ、氷の魔装具で氷の霧を作って」
「ガウー(了解なのです)」
「あ、ずるいぞ。俺にも作ってくれ」
三人で冷んやりと涼む。
クールダウンしながらヤオが言ってくる。
「野菜の出来も良いから今日は結構売れるはず」
ヤオがいきなり野菜の話を振ってくる。この男の頭の中には野菜しかないのかしら。
「今日は肉じゃがの実演販売でしょ?売れるといいわね」
まあ何だかんだで商売をするのは楽しいからその辺はいいのだが。
◇ ◇
「珍しい野菜扱ってるよー、ダイコン、ニンジン、タマネギ、肉じゃがの試食もしているよー!」
「レシピもありまーす。どうぞご試食くださいー」
ヤオに合わせて客の呼び込みをする。
「肉じゃがって何だ?試食させてくれ」
「はいどうぞー、ご試食くださいー」
男が肉じゃがを食べた瞬間、
「美味っ!何だこれ!?」
驚愕する。
それを見た他の客も、
「私にもおくれ!」
「俺もだ!」
次々に殺到する。
「美味しい!」
「野菜がホクホクする!」
「はーい、野菜も試食もたくさん用意してるので順番に並んでくださーい」
順調に野菜が売れていく。嬉しい悲鳴を上げたい気分だわ。
そこに客のお婆さんが声を掛けてくる。
「お二人さん若いね。夫婦かい?」
「違う」
「違うわ」
二人は即答する。
そういう関係になりたいワケじゃないけど即答されると少しイラっとするわね。
「よし、ハイドラ今日はここで店を閉めよう」
周りを見るともうそろそろ閉店の準備をしてる店がちらほら見受ける。
「結構儲かったわね」
「この調子でもっと店を広げていこうぜ」
ヤオはすぐ調子に乗る。今度こそ気を付けないと。
そうこうしているうちに日は傾き、夕空が視界に広がる。
「夕日が綺麗だな」
「そうね」
ヤオが改めて言ってくる。
「これからも宜しくな」
「私の気が変わるまでね」
そんな二人をいつまでも夕日が照らしていた。
感想と評価有り難うございます!
やる気が充填したので引き続き頑張ります!




