第19話 港町
ナカサ領港町サーペン
「あれ?南の大陸まで飛んでいかないの?」
「行けなくはないけどトイレとかどうするのよ?」
切実な問題があった。
ハイドラは人型の姿を取っている。港の人間を驚かせないためだ。
俺たち3人は港の商店街を歩く。
「港町だけあって商品に魚が多いわね」
「ベジタル王国最大の港町だからな。そりゃ多いだろう」
「ガウー(美味しそう)」
ハイドラはノースリーブの胸元をパタパタ仰ぎながら、
「それにしても暑いし潮風で服がベタベタするわ」
ゴクリ、俺は生唾を飲む。潮を含んだハイドラのノースリーブは胸のラインがくっきり表れていたからだ。
「なーに見てんのよ、性少年」
「べべっ別に見てねーし!」
「ガウー(エロいですねー)」
そうこうしているうちに商店街を抜け港に着く。
港には大小多くの船が停泊していた。
「出来るだけ大きな船で行こう。海の魔物に沈められたくないし。・・・そう言えば魔王軍の海の支配はどうなってんだ?」
ハイドラは呆れた目で見てくる。
「そんなことも知らないの?海は海神の勢力が殆んどを占めてるのよ」
「海神って海の神族の末裔だっけ」
「そうよ。海の神族は人間族と魔族に対して中立を保ってるの。積極的に人間や魔族に干渉することはないわ」
「じゃあ海の旅は安全なのか」
「腹ペコ海獣や機嫌の悪い海獣に出くわさなければね」
ハイドラはくるりと回りウインクしてくる。
「さ、南大陸行きの船を探しましょ」
ヤオ達は船を探す。港にいる人達に聞き込みをすると、ちょうど南大陸行きの大型船を見つけた。
「お、タイミングが良かったな。さっそく乗船手続きをしよう」
「ガ、ガウー!(船、初めて!)」
そして港を出港し、ヤオはハイドラに聞く。
「なあハイドラ。やっぱベジタル国王の説得は無理だったと思うか?」
「無理ね。あの手のタイプは利用できるものはとことん利用する。余程の事が無い限り自分の意思を曲げないタイプよ」
「だよなあ」
離れゆく大陸を眺めながらヤオは思いにふける。
ベジタル王国では色々あった。
貧しい幼少時代。農業を学ぶ農学校時代。
そこそこの収入があった屋台時代。
そして異世界野菜転生辞典との出会い。
イサヤ領主とナカサ領主との出会い。
異世界装備化転生本との出会い。
装備の性能を確かめようとダンジョンに潜った日々。
ハイドラやミミとの出会い。
魔王軍との戦い。王様との離縁。
色々な事があった。色んな出会いがあった。
「次の大陸でも良い出会いがあるといいな」
ヤオは期待に胸を膨らませながら遠ざかる陸地をいつまでも見ていた。
ここまで読んでいただき有り難うございます。
評価とかしていただければやる気とか出ます。