第18話 逃亡
深夜・迎賓館入り口
「遅かったな」
「イサヤ領主・・・」
迎賓館の入り口のドアにイサヤ領主が背を預けている。
――最初に協力を申し出てくれたのはイサヤ領主だった。
「君ならこうすると思っていたよ」
「じゃあ俺が去る理由もわかりますよね?」
イサヤは頷く。
「ああ、大量殺戮者になりたくないんだろう?」
俺は拳を握る。
「そこまで分かってるなら何故!」
領主は涼しい顔で、
「私が王国に忠誠を誓う人間だからだ」
イサヤはすらりと剣を抜く。
「言葉じゃ駄目なんだな」
「ああ。ここを通りたければ君の力を示して見せろ」
――ハイドラを受け入れてくれたのもイサヤ領主だった。
俺はダイコンソードを取り出す。
「ハイドラ、ミミ、俺に力を貸してくれ」
「任せて」
「ガウ」
「それでいい。まとめてかかってこい!」
まずハイドラが飛び出す。
上段蹴りを放つ。イサヤは体を捻って躱す。
次にミミが縦に飛び、飛び蹴りを放つ。イサヤは剣で弾く、ミミはくるりと回転して後ろに降りる。
俺はダイコンソードを振り下ろす。イサヤは剣で受け流し、ヤオの脇腹に蹴りをかます。
「ぐはっ」
ヤオは膝をつく。
「どうした。お前の信念はそんなものか!」
「くそっ、死んでも文句言うなよ!」
ハイドラが鞭を取り出してイサヤの剣を絡めとる。
「!」
「ここ(王都)で買った鞭が役に立ったわね!」
「ミミ!行けっ!」
「ガウー!(任せて)」
――魔王軍撃退の指揮官を任せてくれたのもイサヤ領主だった。
ミミの魔導籠手が真っ赤に燃える!
ボワッ! 火柱がイサヤがを囲む!
「くらえぇぇっ!タマネギ手榴弾!」
ドガァァァン!
イサヤが爆発に巻き込まれる。
◇
「おい、大丈夫か、イサヤ領主」
ヤオはイサヤを抱え起こす。
「流石に君が危惧するだけあって野菜兵器は強力だな」
「ニンジンミサイルやカボチャ地雷はもっと凶悪だよ。こんなん人に使うもんじゃない」
領主はよろよろと上半身を起こし告げる。
「私は君の逃亡を阻止しようとして倒された。これで言い訳は立つ」
「領主・・・」
「さあ行け、君は君の行く道を進むんだ」
――俺は領主に何か返せただろうか?
俺はぐっと涙を堪えると、
「有り難う、イサヤ領主」
懐から筆と紙を取り出す。
「この『伝達の筆・伝達の紙』ってマジックアイテムを渡しますので魔王軍が攻めてきたら知らせてください」
「君ってやつは」
領主は苦笑する。
ヤオは手を振りその場を去る。
イサヤ領主への道程・上空
ハイドラが声を掛けてくる。
「クォォォ?(これからどうするの?)」
「必要な荷物だけを持ち出して南へ向かおう」
「クオ?(南?)」
「ナカサ領を越えてさらに南に、海を越えるんだ」
ヤオはびしっ、と南を指さす。
「目指すは南の大陸!」
ここまで読んでいただき有り難うございます。
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