第13話 在宅ドラゴン
「ハイドラ。お前、人間に変身できたのか?」
「そぉよ。傷は治してもらったんだけど精神的なダメージが大きくてね。しばらく人間になれなかったの」
微笑みながら俺を見つめる。
「で、今日貴方に話しかけてもらって、もっとお話ししてみたいなーって」
ハイドラは目をうるっとさせて、
「迷惑だった?」
「いやいやいや迷惑なんかじゃないぜ?」
俺は首を振る振るする。
チョロイわね。そんなハイドラの内心を知らずに、
「ただいきなり増えてたんでビックリしただけだよ」
「そ。なら良かった」
今度はミミがむっとして、
「ガウ(ご主人様だらしない)」
「いや何言って・・・ご主人様?」
ミミはきょとんとして。
「ガウ?ガウ?(え?ご主人様でしょ?)」
「いやいやいやヤオでいいよ」
ミミはぶすっとして、
「ガウガウウ?ガウ(私ずっと仕える人を探してたの。いいでしょ?ご主人様)」
ハイドラはにやにやしながら、
「いいでしょ?ご主人様ー?」
ヤオは頭を掻きながら、
「あーもう、わかったよ!ご主人様でいいから!」
「ガウー!(やったあ!)」
ミミはハイドラとハイタッチする。
「で、お前らは今日どうすんだ?」
「ガウガウ!(私はご主人様と一緒に寝る!)」
「私はお風呂でひと浴びさせて貰うわ」
ハイドラは風呂場の入り口に手を当て、振り返る。
「覗いたら殺すわよ。あとミミは私と一緒に寝なさい。ヤオは外の納屋で寝てね☆」
その夜。ヤオは納屋の藁の上で
「くっ!悔しくないぞっ!っていうかハイドラ性格変わってないか?」
不毛な夜を過ごしたのだった。
次の日。
俺が切り出す。
「家を買いに行こう」
ハイドラが応える。
「なんで?」
「俺の寝る場所が無いからだよ!」
ハイドラは顎に指を当て、
「そういえばそうねえ。で、どんな家にするの?」
「とりあえず寝室は3部屋欲しいな。あと食堂も必須だ」
「お風呂とトイレもいるわね」
「ガウ」
ヤオは俯き、
「ほかに部屋も何部屋か・・・結構大きな家になるな」
「お金はあるの?」
ヤオはイサヤの街を囲む農地の3分の1を占める土地の小作人を統べる地主兼農場主である。
俺は指でピースをし、
「かなり溜めてある。ちょっとした豪邸だって立てれるぞ!」
「あら。ヤオは有望物件ね」
「ガウ!」
ヒードラは筆と紙を取り出し、
「じゃあ条件を書き出して不動産屋さんに持っていきましょう」
「よし」
「ガウ」
不動産
「・・・この条件の家ってありますかね?」
「うーむ」
店主は咳払いをして、
「結構お金掛かりますよ?」
「予算はこれくらいで」
ヤオは予算を書いた紙を渡す。
店主はそれを受け取り、
揉み手で対応してくる。
「こんな物件などどうでしょう?」
「ここの部分こうなってる物件ある?」
「ではこれなど」
ハイドラは店内の張り紙を見て回る。
そして、
「ねえねえ!これなんか良いんじゃない?」
「ガウ!」
「どれどれ・・・お、いい物件じゃん。でも、なになに?幽霊出ます?おい、店主、これどういう意味だ?」
「それは、その、事故物件というやつでして。墓場の隣にあるんです。除霊しても次から次へと湧いてきてキリが無いんです」
「いらんわ!」
そんなこんなでチェックした物件を幾つか直接見て回り、
「ここならいいな」
「立地も良いわね」
「ガウ!」
念願の新家が決まった
ここまで読んでいただき有り難うございます。
評価とかしていただければやる気とか出ます。