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プロローグ

初めまして、菜ト花です!

読んでくれてありがとうございます。

少しでも「逃げもふ」に興味を持ってくれたら嬉しいです。

楽しんでいってください!


 その日は、彼女の3歳の誕生日だった。



「なんで(ナギ)ちゃんのかげ、うごいてうの?」

「かげふみなのに、じぇんじぇんふめにゃい!」

「凪ちゃんだけずうい!」



 彼女はこの日まで、家の中から出たことがなかった。だから、友達と呼べるような子もいなかった。でもこの日、彼女は初めて家の外に出て同世代の子たちと遊んだ。


 初めての友達ができた。ひとつ年上のしっかり者の姉のような存在・香耶(かや)と、優しい兄のような存在・(りん)は一番の親友になった。


 皆初対面の彼女にも優しくしてくれていた。緊張していた彼女の手を引っ張り、輪の中に入れた。


 その日は皆で影踏みをした。お互いの影を踏みあうだけなのに、あの時はすごく楽しかったのを、彼女は忘れないだろう。

 

 そしてそれは突然起こった。ある子が彼女にこう言った。影が勝手に動いているよ、と。

 最初はみんな信じなかった。

「しょんにゃわけにゃい、みまちあえにゃの」

「だってぇ、ほんとうだもん!」

 皆が彼女の周りに集まっていった。彼女は身動きが取れなくなったけれど、影は不自然にゆらゆらと動いていた。

「うわあ、ほんとだ!」

「すごぉい!」

「かげがうごいたりゃ、ふめにゃいよ!」

「えー、なぎちゃんいいな、ずうぅい!」

 皆に悪気はなかったのだろう。ただ単純に、遊びに有利な、影が動く彼女を羨んでいた。


 しかし、この日を境に、両親を中心とした周りの大人たちの彼女に対する態度がはっきりと変わっていった。そして、それは彼女にとってひとつの大きな分岐点になった。初めての友達は、幼馴染になって、これからもずっと仲良しでいられるはずだった。


 でも、なれなかった。



 もともと、彼女こと(なぎ)は生まれた時から他の子とは違っていた。


 両親は2人とも和ノ国出身で、中流階級の人たちが住む街の1つ、桜街(さくらがい)で料亭「(あお)」を営んでいる。


 名前は知らない。


 この国では宮殿に御座(おわ)す帝を頂点に、上流階級・中流階級・奴隷階級と身分が分かれている。上流階級とは主に政治に関わる仕事をしている、裕福で偉い人たちで、奴隷階級とは文字のまま奴隷によって構成されており、そのほとんどが犯罪者だ。つまり、一般人は皆中流階級であり、凪たち家族もその中の一部だった。桜街は屈指の観光地として有名で、その中でも「蒼」は絶品高級料理で評判だった。周りと比べて少し裕福なだけの、至って普通の家庭だった。


 それでも、凪が両親の名前を覚えていないのは、ほとんど話したことがないからだろう。


 この国の人は皆、黒髪黒目だ。和ノ国では太陽神を唯一の神とする天道が熱心に信仰されており、何かあった際には、太陽に祈りを捧げる。天道によると、黒髪黒目とは太陽神に守護されていることを表すと同時に、和ノ国の国民として認められていることを示す。和ノ国の国民であるならば、黒髪黒目であることはごくごく当然のことだった。凪の両親も例外ではない。


 しかし、凪は黒がすっぽり抜けてしまったような白髪と、赤い眼をもって生まれてきた。


「にゃんで、なぎのかみとおめめは、おとうしゃんとおかあしゃんとちがうの?」

 

 まだ両親が優しかった2歳の頃、聞いてみたことがあった。


「凪の髪はね、ほかの人とは違う色だけど、大丈夫よ。アルビノって言ってね、色が抜けてしまっているだけの」

「あうびの?」

「そうよ。凪の髪は白いけど、元々は黒ってことよ。だから、大丈夫」

「でも、たいようしんしゃまがまもってくだちゃるのは、くろいかみのひとなんでちょ?」

「そうだが、決して太陽神様の加護がないわけではないからな、大丈夫だぞ」

「じゃあ、なぎのおめめは?なんでまっかっかにゃの?これもあうびの?」

「・・・っ」

「そ・・・それは・・・」


 あの頃でさえすでに両親は酷く怯えた目をしていた。赤い眼はアルビノでは説明がつかない。凪はこのころから周りとは比べ物にならないくらい賢かった。両親はよく、まるで自分たちに言い聞かせているように、太陽神の加護は必ずある、大丈夫、とお互いを抱きしめて励ましあっていたが、凪に向ける顔はいつも少し引きつっていたことに凪自身が気づいていた。内心では気味悪がっていたのかもしれない。凪があまり泣かない、手のかからない赤ん坊であったことも理由のひとつだろうか。食事や風呂など、必要なとき以外は放置気味だった。


 そうして、凪は家の外に出ることがなかった。凪にとっては、自分の家の中がすべてだった。



 そして、3歳の誕生日。


「凪、お外に出てみようか」

 

 朝食の後、突然母は、意を決したように凪にそう言った。


「おしょと?」


 凪は首を傾げた。


「そうよ、凪は家から出たことがなかったわよね」


「・・・」


 凪は黙って視線をさまよわせた。


「凪?どうしたんだい?」


 黙ってしまった凪に父が尋ねた。


「おとうしゃん・・・・・・おしょと、こあいよ・・・」


 凪にとって、家の外は未知の世界だった。


「大丈夫だぞ、ほら、お友達もできるぞ!」

「そうよ、ご本にも出てきたでしょ?仲良しができるのよ」


 両親は安心させるように私に笑いかけた。


「・・・しんゆう、できりゅ?」

「もちろん!きっとできるわ!」


 凪は、ぱあっと顔を輝かせた。


「・・・なぎ、おしょと、いく!しんゆう、ちゅくりゅっ!」



そして、冒頭に戻る。




 ・・・・・・その日から一週間も経ったころには、凪は周りから「白い悪魔」と呼ばれるようになっていた。

最後まで読んでくれてありがとうございます!

初めての投稿、なんか緊張しました…定期的にとはいかないかもですが、頑張って投稿していこうと思うので、応援よろしくです!頑張るぞー!おー!


ぜひ、ブックマークやお星さまポイントをよろしくお願いします。感想も待ってまーす!

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