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22 内通者

 一通りの説明を終えて、石田は机上に置いていたバッグから皮財布を取り出した。

「朝早くからごめんね。これはお礼よ」

 その中から五百円玉を一枚出し、来客に手渡す。

「二人でコーヒーでも買って飲みなさい」

「・・・…あっ、どうも」

「ありがとうございます」

 口々に礼を言って、遼と優亜は退出した。

 静かになった小会議室から、石田はしかし、すぐに出ようとはしなかった。彼女には考えるべきことがあった。

 それは次の作戦に関することでも、ましてや今しがた去った両名についてでもなかった。石田が思いを巡らせていたのは、先日、RELICSの部隊が奇襲を受けたときのことだった。


『石田令香、君の能力は把握済みだ。何キロ先まで見通せるか、調べはついている。通報した結果、君が車を停めるであろう地点を割り出すのは造作もなかったよ』


 あのときの宇野の言葉が、どうも不可解なのだ。

(……何故、彼は私の能力を知っていたのかしら)

 もちろん、今までにもRELICSとバーンアウトは何度も衝突している。その際の戦闘データを分析すれば、RELICS側に「千里眼」を使える者がいるであろうことは推測できるかもしれない。

 けれども、その異能力者はRELICSを率いる石田令香なる人物だ、とまでは突き止められないはずだ。RELICSに所属する者たちの個人情報は、政府によって厳重に管理されている。それが外部に流出するとは考えづらい。

(まさかとは思うけれど)

 こうなった以上、できれば考えたくない可能性も意識せざるを得ない。石田は、心に冷たく鋭いものが突き刺されたように感じた。

(RELICS内に、バーンアウトへの内通者がいるっていうの?)


 ビル一階の自販機で、缶コーヒーを二本買う。ベンチに腰かけ、彼らは一息ついていた。

「……相川君」

 缶の中身を半分ほど飲み終えたころ、不意に優亜が言った。

「何だ?」

「次の戦い、絶対に勝とうね」

 はっとして彼女の方を見やると、優亜はにっこりと微笑んでいた。

 彼女だって、苦しんでいないはずがない。宇野の容赦ない攻撃に晒され、まだ傷は癒えていない。自分の過去のことも分からない。それでも、背負っているものの大きさを感じさせない、可憐な笑顔を浮かべていたのだ。

「……ああ。頑張ろう」

 この世界には、過酷な試練などいくらでも転がっている。遼も例に漏れず、父親のことで悩んでいる。だが、優亜の心の強さを目の当たりにし、彼は大いに勇気づけられた。出会ったばかりではあるが、RELICSの仲間とならどんな困難も乗り越えていける気がした。

「バーンアウトの野望は、俺たちが必ず打ち砕く」


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