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18 再会

 白装束は全員取り押さえたはずであるし、宇野が「瞬間移動」以外の異能を使えるわけでもない。それにもかかわらず、乱入者による攻撃は止まなかった。RELICSの隊列が乱れ、あちこちで悲鳴が漏れる。

 あっという間に混乱に陥った状況の中、石田だけが冷静さを失っていなかった。

「……あわわわわ、どうしましょう。敵がどこから撃ってるのか分からないです」

「福住さん、うるさい」

 今までで最もシンプルな罵倒を相方に浴びせると、石田は「千里眼」を解き放った。輝く瞳が周辺をくまなくサーチし、見えない敵の姿を炙り出す。

『……皆さん、そこの茂みです!』

 石田の意をくみ取り、福住がRELICSのメンバーに敵の位置を伝える。列の前方にいた隊員たちが、我先にと草むらへ銃弾を浴びせかけた。

 茂みの中から、人影が飛び出してくる。彼は大樹の枝へと跳び上がり、石田たちを品定めするように見下ろした。

「おっと、危ないところだった」

 フード付きのパーカーを被っているため、男の顔はよく見えない。銃弾がかすった様子がないところを見ると、運動能力は相当高いと思われた。


 宇野に追撃を加えようとしていた遼も、福住からのテレパシーを受け取っていた。攻撃の手を止め、木の上に立っている人物を見やる。

「これは助かりました。援軍が到着したようですね」

 痛そうに胸部を手で押さえながらも、宇野はほくそ笑んでいた。

 遼の視界の隅に、神谷の姿が映る。彼は隊列の前に飛び出し、男に右の手のひらを向けていた。

「バーンアウトの幹部か。面白い、俺が倒してやる」

 言い終わるより前に、神谷の右手から念力が放たれた。けれども、男は軽く体を捻って躱す。

 その拍子に、深く被っていたフードがふわりと払い除けられた。自分とよく似た、鼻筋の通った顔が露わになる。

「……そんな、まさか」

 遼は思わず、喉の奥から絞り出すように呻いていた。

 樹上からこちらを見下ろしていたのは、遼の父親―行方不明になっていたはずの、相川壮一に他ならなかった。


「何で……」

 嗚咽に近い声を漏らしながら、遼はよろよろと父の元へ近づいて行った。狼狽のあまり、もはや宇野を仕留めなければという使命感は薄れつつあった。

「何で父さんがここにいるんだ。十年前、ファイア・ボムで死んだんじゃなかったのかよ」

 RELICSの隊員たちの視線が、次々に自分に集まってくる。それにも構わず、遼は一段と声を張り上げた。

「……確かに俺は、あの大火災で命を落としかけた」

 息子とは対照的に、父は淡々と語った。十年ぶりの再会だというのに、壮一は何の感動も、動揺も見せていなかった。ただ、冷ややかな目で遼を見つめるのみである。

「だが、生き延びたのだ。異能力者に覚醒したことでな」

 先刻、壮一の撃ち出した火炎弾の威力は、白装束たちのそれを凌駕していた。レベル一以上になりえないコピーではなく、生命の危機に晒されることで力に目覚めたオリジナル。

 少なくとも彼は、遼と同じように拉致され、無理やり異能力者にされたわけではないらしい。

「……じゃあ、どうしてバーンアウトに味方してるんだ」

 けれども、それならなおさら疑問が湧く。遼の問いに、壮一は間髪入れずに答えた。

「人類を救うためさ」


「やっぱり意味分かんねえよ」

 震える拳を握り、遼は父親を睨んだ。彼はもう、遼の知っている壮一ではなかった。

「バーンアウトは人知を超えた災害を引き起こして、多くの犠牲を出してる。父さんが命を落としかけたのも、奴らがファイア・ボムを起こしたからなんだ。あいつらは、人類の救世主なんかじゃない」

「何だと」

 壮一が眉をひそめた。

「父さんは奴らに騙されてるんだよ。だから、俺たちと一緒に……」

「相川壮一。その者の言葉に耳を傾けてはいけません」

 遼の言葉を遮ったのは、宇野であった。いつの間にか、彼は壮一の隣へと瞬間移動している。

「彼らRELICSは倒すべき敵です。さあ、見せてやりなさい。君の実力を」

「了解だ」

 こくりと頷き、壮一が木から飛び降りる。その体から放たれるオーラに圧倒されたように、RELICSの隊員たちは後ずさった。


『仲間を守る盾として、一緒に働いてもらうつもりよ』


 石田からかけられた言葉が、脳裏をよぎった。

 おそらく、壮一の異能はバイロキネシス。仲間を守るべく、遼は隊列の前へ出た。既に全身の皮膚は硬化済みである。

 だが、目の前に立つ父からは殺気が溢れ出し、遼は足がすくみかけるほどであった。

「ファイア・ボムの洗礼を受け、俺は生まれ変わった。レベル四のバイロキネシスの力、とくと味わうがいい」

 自分たちを嘲笑うように吐き捨て、壮一は右手を振り上げた。その手のひらの上に、巨大な鬼火が燃え盛る。


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