第２話：ダークエルフの幼女
面接が終わり、
「せっかく時間ができたのだから魔導師（正社員）の採用面接に行ってみたら、なんつー面接だ……、クソだ……」
時刻は夕方５時を周り、辺りはうっすらゆっくりと暗くなり始め、なおかつ対象的に夕日の橙色が眩しくうなだれる一青年をジリジリと照らす。
タクヤは面接の結果に反し、強烈なプレッシャーからの開放からかやや安堵した表情纏いとぼとぼと面接会場の最寄り駅に向かう街道を歩いていると、夕日のためかそれを遮るシルエットがふらふらと揺れ動きながらこちらに向かってくる。
そのシルエットの丈はタクヤのそれよりはるかに小さく、全体的に華奢――いや、子供なのか――とタクヤは瞬時に察する。
「おい……、あのガキ……、様子が変だ」
そのシルエットがタクヤに近づくに連れ、正体が明らかになる。
肌の色は褐色、耳の先端は鋭利な形状、髪の色は銀色に輝きそれを大きなおさげを二つにその先端は三つ編みに纏められ、魔導師風のネイビー色のマント、服はゴシックロリータベース、手には魔導師の杖、頭部には蛇がモチーフと思われるハットが被さっている。
ダークエルフの幼女……
そしてこの身なりおそらく魔法を学んでいるのだろうか？
ダークエルフという存在についてだが、彼らは数にしてみれば少数種族であるのだが、全く見たことはない、という感じでもなくたま～に目にすると言う程度には見かけるものであるのだが、一点、いや数点。
左目の周辺には稲妻型のタトゥーあるいは傷、眼自体にも特徴があり、左右の目の色が異なる“オッドアイ”なのだ。
更には、幼女なのに巨乳――！
あまりにも奇妙なため、タクヤは目の前の幼女の奇妙な外見を注視していたところ、
「――か、すい……た、で……すぅ……」
「んっ？」
タクヤは目の前のダークエルフの幼女がなにかボソボソと喋っていたので、思わず反応する。
（いやいや、このガキ、何かのコスプレなんじゃ？なんか妙だからスルーしよっ）
タクヤは面倒くさがりだ。
彼の性格であれば当然のようにこの奇妙な外見の幼女を華麗にスルーし、帰宅直行するのは当然であり、彼はそれを迷いもなく実行する。
二人が交差する瞬間、タクヤは普通に人を避ける感覚で右肩を後ろに引き体をよじるように目の前の幼女を回避――――
だが幼女は一旦タクヤの側面を通り過ぎたと思いきや、
「！！」
タクヤの視界から消え去り、彼のベルトに褐色の幼女の小さな手がかかる。
「うおっ！？ちょっ！？何をする――！？」
「うう～、お腹が空いたですぅ――！」
「いや、なんで腹が減って人のズボンを脱がそうとしてくんだっ？」
やばい！
とタクヤの直感はそう囁く。
なぜならズボンを脱がされた状態で幼女の目の前に立つ状況が今生まれようとしており、その状況は傍から見たら“変態”は自分で、お回りさんこっちですよろしくばかりに通報されるのが目に見えるからだ。
タクヤは早くこの状況から脱しようと抵抗を試みようと、体を揺さぶるが、
（くそっ、こいつガキのくせに力つええ！ さっきの消える動きの件といい、この怪力の件といい……）
「一体全体、なんなんだ？お前？お腹が空いたって！？それが何で俺のズボンを脱がすことに直結するんだ！？」
「じゅるり……、香ばしい匂いがするのです――！それはお兄さんの足からです――！」
幼女のオッドアイの目つきは虚ろだ。
意識が遠のいているのだろうか？
タクヤは幼女とのもみ合いの中、この異常さに一つの結論を導く！
（“魔法”だ！しかも超強力っ！）
彼は難しい問題をあっさりと解けてしまったかのようなすっきり感を得たのだが、その瞬間、
……ぷつり……
何かがちぎれる音がした。
その後ズルズル、とタクマのズボンは幼女の手により降ろされた。
「ちょっ――、待てよっ！？キャ―――――！」
「美味しそうな焼き立てパンです――――！ あ～んっ！」
がぶりと幼女の歯がタクマの太ももに食い込み、
「ぎゃあああああああああああああ――――！？」
タクヤは絶叫した。
「きゃああっ！？ 男が小さい女の子の前でズボンを脱いでる！ 警察よっ！ 早く警察に通報しなきゃっ！」
「痛い痛いって、違うから――――！！誤解だから――――！」
幼女とのもみ合いを見た通行人のOL風の若い女性が警察に通報しようとしていたので、タクヤは全力でそれの静止にかかった。
