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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

シリーズ 夢

ぐぁむっ!

作者: Fin

「やめろッ!俺に手を出して組織が黙っていないぞ、お前如きが逃げ切れるはずもないだろ!俺が口添えして……。」


 醜く肥え、禿げ上がった頭に傷跡を残す男が命乞いか怪しい言葉を吐き出す。


「駄目だな……。これは、グレープフレーバー?」


 必死に後ずさる男にゆっくりと歩み寄りながらこの場を支配している男は懐から四角く細長い物を取り出した。


葡萄(グレープ)……、本物よりも甘めなんだよな〜、じゃあ、死のっか?」

「待て、待ってくれ!頼む!金なら渡す!全部だ!」

「要らねぇよ、馬〜鹿!」


 細長い、紙でできた箱。そこから取り出された銀色の包装紙に包まれた菓子、ガム。

 男はそれを噛み始めた。


「別に俺はあんたに恨みはねぇよ、でもさ、あんたは色んな恨みを買ってんだろ?」


 噛んでいるガムに空気を送り込んで膨らませる、慣れている男には容易く、そして限界を超えてやがて潰れる。


 ポンっ!


「何だ……、なんの音だ!?」

「ガムだろ?聞いたことねぇのかよ、俺はガムで戦うんだよ。葡萄味(グレープフレーバー)、紫紺のベールだな。」


 背後を裏路地の行き止まりに塞がれて逃げられない男を紫紺の煙が包む、それは次の瞬間に周囲に赤を撒き散らして男とともに消滅した。


「これは汚ねぇな、溢れる果汁かなんかかよ。つか紫紺ってより、赤紫だよなぁ……。」


 頬に付いた血を拭い、男はこの場を立ち去った。














「これ下さい。」

「百二十九円になります。」


 小銭を探して取り出すのは面倒だ、だけど手持ちの千円札を崩してしまうのは惜しい気もする。


「ちょうど、お預かりします。」

「ありがとさん。」


 結局少し時間はかかったが小銭で払った、ちょうど一円玉が四つあったのは僥倖だ。


 早朝のコンビニ、未だに若干の眠気があるもののそうも言っていられない。まさかこんなに早く組織が動き出すとは思いもしなかったのだから。


「ありがとうございました〜。」


 店員の挨拶を背に聞きながらコンビニを後にする。


「ミント味が減ってたの気付いてよかった。」


 ミントフレーバーの使用頻度は圧倒的なものだ、気が向いたらすぐ噛んでる気がするし、好きだから仕方ねぇけど。

 特に仕事中は基本的にミントばっかり使うし、他のフレーバーはギャンブルすぎて使えねぇ。安定して使えるのはミントが一番だ。


「空が暗いな……、雨でも降りそうだな。」


 暗いというか黒い、空が黒い。早めに屋根のある所に、と言っても室内にずっとはいられない、仕事は屋外が常だ。


 仕事場、というか事務所はここから少し距離がある。隠れるための建物は地下室を作ったりしている間にかなりの広さが必要になってしまったようで、向かうだけで時間がかかる。

 それもミントを使えばある程度解決できる、あんまり人目にはつかない方がいいけど。


「じゃ、一つ。」


 清涼感が鼻を抜けていく、ミントの風味が噛むほどに口内に広がっていく。これだからやめられない、噛んでいる間だけ得られる全能感、多幸感、神にでもなったかのように負ける気がしない。


「行くか。」


 周囲の風が気圧を無視して俺の体全体を前へ押し出す。それが加速力となって俺は今風と一体だ。

 噛んでいる間強化されている体はちょっとやそっとじゃ傷つかない、少しぐらい無理な機動もできる。

 そのぐらいできなきゃ俺たちの敵とは戦えないからな。


 ここはもう既に一般とは隔絶された場所だ、こんな人間にはあり得ない動きをしていても問題はない。ないが……。


「廊下は走るな。」

「ウガッ!?」


 あ〜あ、まただ。俺が走る通路と交わる通路からニョキッと伸びた腕によって俺の進路は塞がれ、当然俺は衝突した。


「それは止めろッ!」

「廊下を走るのはやめないのか?」


 こいつはこの事務所の防衛線、禿げ上がった頭に幾重にも傷がある男だが、こいつは見た目ほどおっかなくはない。真面目だ、学級委員みたいな奴だ。


「悪ぃな、急いでたんだよ。」

「そうか、次から気をつけるようにしろ。」

「分かったよ。」


 もう何回も繰り返された会話だが、彼はそれ以上何も言ってこない。改善されないにもかかわらず。


「痛ぇ。」


 さすった鼻が痛みを伝えてくる、どんな剛腕なんだよ、まったく。


 さて、仕事だ。


「おっ?ゴミ箱発見!」


 一応偉い奴と合う訳だし、噛んだままって訳にもいかないからな。しっかり包んで捨てとく。


 靴底が床との間に奏でるリズミカルな音が響く。むしろ音はそれしかない。するはずもないが、味気ないのは確かだ。


 この場所にいる人間自体少ない上に、余計な音は遮断されている。外から内にも内から外にも音が届くことはないからな。


「おはようございます、ガム先輩。」

「はいはい、おはよ、水銀剣使いくん。」


 新人はあまり仕事を任されない。だからといって暇な訳じゃない、こうして誰よりも早く事務所に来て人が来るのを待つ。そして仕事に向かう誰かに付いて学ぶ、それをうちのお偉いさんに認められるまで続ける訳だ。まったく面倒くさい限りなんだけどな。


「先輩は仕事ですか?」

「あ?分かんね、あればやるけどさ。」


 新人が仕事に付いて行けるかどうかは、連れて行く権利がある俺らが決める。だから新人は顔を覚えられようと必死になる。まあ、俺は連れて行かねぇけど。

 そんなときは普通に新人くんを無視して奥に続く扉を開く。何でも偉い人間がいるとこまで真っ直ぐ向かえる造りは良くねぇらしい。


「上林傑です、入ります。」

「ああ、入りなさい。」


 低音が腹の底に響く、喉がよく鍛えられてるんだと思うんだが。それも当然な話で、返事を返したこの男は声で戦闘すら行う古株なのだ。


「今日も、と言いたいところだがね……。」

「何かありました?」


 古株、とは言ってもこの男、音無和樹が最古参かと言うとそういうわけでもない。立場も年齢も実力も上には上がいる訳だ。

 それで、音無さんがこう言い渋る案件といえば大体想像がつくんだが、ろくでもない事なのは確かなんだろうなあ。


「まあ、新人の尻拭いをさせる訳にもいかんだろう、お前はもううちの稼ぎ頭だもんだからな。」

「あ〜、例の組織関係すか?」

「ああ、クラムベリの構成員と知らずに手を出したらしくてね、今は重症だ。」


 クラムベリ、最近よく構成員を見かける。証なのか何なのか、体のどこかには必ずケーキのタトゥーが入っている。そんな可愛らしい証とは裏腹にやってることは酷いもんばかりだ。殺しに盗みは当然、まあ、バレないようにやってるのが普通だ。たまに大々的に大量殺人までやる奴らだけど、大体大まか手の内が知れてきた。

 暗がりが奴らの得意分野なのか、地下鉄、地下街、そういったとこはクラムベリが必ず居るって言っても過言じゃねぇだろうな。


「新人って誰すかね。」

「入って一月の大拳だな、決して弱くはない。」

「……ただの構成員じゃねぇ、か。」

「私もそう考えている、だが相手が誰か分からない。」

「新人の負傷状況はどうでした?」

「切り傷、胸部を真一文字にバッサリと。」


 刃物を使うクラムベリの構成員で、かつ名の知れるほどに腕の立つ奴。かなり選択肢が絞られる、小さなナイフでは無さそうだし蝶はねぇ、長めの刃物で言うと蟷螂?それか絵描きか?

 何れにせよ新人に荷が重いのは間違いない、結局誰か行く羽目になりそうだ。


「面子のためらしい、手紙が添えられていたよ。まったく、意味の分からん連中だ。」


「じゃあ、俺らも俺らの面子を守りに行きますかね。」

「まあ、敵組織全体が動くなんてことの無いように頼むよ。」

「善処でいいすか?」

「……構わん。」


 許可貰いましたー!やる事やりますかね。


「失礼しまーす。」

「暴れたまえ……。」


 あー、音無さんが一番怒ってんわ。

 怖い怖い、仲間思いのいい人だけどね、ホントは自分が行きたいの我慢してんだよ。あの人が出ると被害がでけぇから。


「さて、仕事だ。」


 今持ってんのは、ミント、グレープ、ソーダ、オレンジ、ストロベリーの五種類か?十分足りるとは思う、まあ買い足す必要は無さそうだな。

 ミントの汎用性は異常だ、正直ミント以外は試すためだけに持ち歩いてるようなもんだ。まあ、ただ噛むためってのもあるけど。戦闘にも、移動にも使えるミントはまだ使いみちがある。


「情報屋に連絡、新人が潰されたから潰す。相手の情報調べて後で届けろ。」


 今じゃガム噛んだままでも会話には困らねぇ、それをいいことに情報屋に連絡する。情報屋っつっても情報屋ってコードネームの仲間だ、ちなみに俺は基本はガム、音無さんはエコーだ。


「じゃ、情報は足で稼ぎますかね。」


 俺は駆け出した、風になって。


「廊下は走るな。」

「アガッ!?」


 ……幸先悪ぃな。














 その知らせが入ったのはその日の午後だった。丁度雨が降り出した頃だ。確かに電気屋のテレビが仕切りに午後から雨だとか言ってたっけな。情報屋は仕事が早い。


 それに仕事は確かだ。


「駅か……。」


 人の多い所は厄介だ、戦闘になった場合は人を守りながらになるし、不利だ。

 まあ、今日はソーダもあるし問題は無いっちゃ無い。ソーダの力は相手と俺自身の居場所をなんでか分かんねぇけど移動させられる。


 ただ、相手が思ってたより大物だったのには驚いた。蝶とか蟷螂とかの通称がついてる奴でもそいつらは構成員の一人でしかねぇけど、今回関わってる奴は幹部の一人らしい。通称は「帝斬」で、刃物使いと言われれば刃物使いだとは思う。


「こんなとこで何やってんだろ、こんな大物が。」


 いたらおかしいって程じゃねぇけど、目的が不明なのは間違いねぇ。早めに対処するに越したことはねぇな。

 帝斬と言えば、九月に起きた虐殺の中心人物。

 六十と七人が死んだ虐殺だってのに警察は動けなかった、殺したのがクラムベリのメンバーじゃなくて操られた被害者たちだったからだ。


「……人間を操る、あれは洗脳の力だったのか?」


 この街を南北に横断する巨大な国道、この下に地下鉄の駅がある。そこに相手はいる。

 帝斬は確かにあの場所にいたが、洗脳をしていたのは多分別の奴だ。帝斬は護衛、或いは目付けだったのかもな。


「階段は、道路の向こうに一つだけだったか?」


 まあ、見れば分かるか。


「行くか。」


 今回は帝斬の他にクラムベリのメンバーはいないらしいが、幹部が一人と言うのは珍しいんじゃないか?


 帝斬の姿はすぐに目に入った。流石に目立つな、あの馬鹿でかい大太刀は。帝斬は未だかつてその大太刀を振るったことがないらしい。大方あの大太刀を抜く前に腰の小太刀でかたが付くのだろう。

 そんな和風な武器ばかりだが、服装はパーカーだ。下はダメージ多めのダメージジーンズ。


「誰だ?お前はうちのメンバーじゃねぇな、メンバー以外は全員ブッ殺す。」

「こりゃまたとんでもないイカレ野郎だな。」


 いきなり斬りかかってくることは流石にないらしい。じゃあ、この間に俺はガムを噛んでおくとしようか。ミントフレーバー、今日はまあ、雨も降ってるしな。すぐに終わらせて帰る。

 幸い人もいない……、何故だ?何故人が一人もいない?

 死体はない。少なくともこいつに殺されたわけじゃない。


 待て、考えろ。駅に人がいないなんてことがあり得るのか?こんな事が起こっていいのか?


「来ねぇのか?じゃあ俺からだなッ!死ねェッ!」


 咄嗟のことで少し反応が遅れた、が問題ない。アクセルミント。身体能力を底上げして加速する。


 砂埃と衝撃を残して帝斬の小太刀が柱を削った。


 ショックミントッ!


「はあッ!」


 完全に決まった。曲げられていた腕が瞬時に伸び、帝斬の体を打つ。小太刀を振り切った状態で隙きだらけなところに入ったのだからこれで立っていたら人間じゃない。


「い、ってぇな、おい……。」


 何で立ってんだよ。ほんとに人間か?


「ああ、もう切れちまった。」


 帝斬が見せつけるように緩慢な動きで大太刀を抜く。凄まじいプレッシャーだがやってやれないことはない。


「オゥラァッ!!」


 上段の構え!見た目通りの質量を持った刀が高い技量を持って振り下ろされる。なかなかの脅威だ。

 なら前にでるッ!


 アクセルッ!


 床にはられたタイルがいくつも浮かび上がるほどの衝撃がすぐ横で爆発する。だが、問題ない。そのどれもが俺の攻撃に影響を与えない。


「ヒットミントッ!」


 狙うのは無警戒に晒された顎。それを下から蹴り上げる。帝斬は少なくとも十メートルは飛んで倒れた。普通の人間ならこれで殺せる。


 帝斬は立ち上がった。多少ダメージはあっただろうが、まあ、それほど聞いてはいないだろうな。


「……ッてぇな、やるじゃねぇか。やめだやめだ、……武器とか要らねぇわ。」


 言葉通り帝斬は大太刀を捨てた。ぽきりぽきりと指を鳴らしている、やる気は十分と言ったところだろう。


「元々なぁ、俺は武器なんてねぇけどよォ。眼鏡の奴がうるせぇからな。」


 帝斬は獰猛に笑った。そんなに楽しそうにされると俺も楽しくなるな。


「やろうぜ?」

「アクセルッ!」


 しなやかな帝斬の腕の先、先程までの太刀とはまた違う確実に敵を仕留めるための武器だ。帝斬に太刀は必要ない。その両の拳が十分に必殺の威力を秘めている。


「くちゃくちゃ煩ェッ!」


 帝斬の右の拳が頬を打った。少し集中力が切れた。それはまあ、いいけど、ガムが飛んでった。これはマズイ。


「どうしたよ、ああ?さっきまでの威圧感がまるでねぇ!そこらの従僕共と何ら変わりねぇじゃねぇかよ。」

「うるせぇよ、雑魚が。」


 囀んな。


 新しいガムを取り出す時間を作れるか、いや作るしかねぇんだけどな。


「ガムか?ガムを使う特異体質だよな?聞いてるぜ、うちのメンバーがずっとガム噛んでる野郎にボコされたってな。殺られたら殺らねぇと、だろ?」

「知らねぇよ……。」


 風船ガムは駄目だ、噛んでる間効果のあるやつじゃねぇと、隙ができる。だとしたらミント。ミントじゃ多分勝てねぇ。効果が分からねぇのを使うのはリスクがでかいが、戦況をひっくり返すなら悪い手じゃない。


「俺の拳はなぁ、ここの柱ぐらいなら簡単に砕ける。当然お前の頭蓋もな。」

「そりゃ凄いな。」


 ガムの包み紙を外す。手探りだ。片手でやるしかないが、今帝斬が動き出したら流石に中断するしかない。


「何か企んでるんだろッ!ハハッ、もっと上手くやりゃあ良かったな。」


 帝斬が迫る。避けられない。とんでもなく重い一撃が胸を叩いた。真っ直ぐ正面の突きだ。


「カハッ!?」

「お返しだ。」


 掌底が顎を打つ。意識が飛びかける。グラングランと視界が揺れる。その程度じゃ落ちない。ふらつきながらもガムを口に突っ込んだ。


「今度はどんなのを見せてくれんだ?」

「黙ってろ。」


 それらしい効果が現われない。効果がないのか?いやそんなはずは、今までそんな事はなかった。

 オレンジ、なるほど。


「よし、分かった。待たせたな。」

「いいぜッ!来いやッ!」


 オレンジは爆発だ。これは両刃だ、上手く使えなきゃ共倒れ必至だな。


 手始めに帝斬の足元を爆破する。轟音と煙がそれらしい、が効いてはいないだろうな。煙を巻いて帝斬が飛び出してきた。やっぱりな。威力が足りねぇ。


「おらァッ!」


 踵落としだ、大振りだ。避けられる。すぐさま爆破する。今度は避けられる。威力を上げる良い方法はないか、同時に爆破は出来るのか?出来そうだ。


「連鎖爆発!」


 閉じられた地下鉄のホーム内に爆発音が響く。さっきも帝斬が柱を砕いたが、崩れたりしないだろうな……。


「効いた、効いたぜ。お前はぜってぇ殺す。」

「やってみろよ。」

「ああ、殺ってやんよ!」


 ラッシュだ。一つ一つが必殺の拳を掻い潜る。

 攻撃こそ最大の防御を体現している帝斬につけ入る隙はない。


 帝斬のすぐ背後を爆破する。帝斬は俺の方向に向かって吹き飛ばされることになる。賭けだが勝算は十分だ。


 渾身で殴る。ただそれだけだ。


「馬鹿か、お前の強化されてない拳は効かねぇよッ!」


 直前で両腕をクロスさせて防御する。お前はトラックか何かか?骨がいった。だが、時間は稼げた。


「残念だよな、頭が弱いってのは……。」


 吹き飛ばされて俺の体はもうホームの外だった。閃光が視界を埋め尽くす。


「流石は日本、ダイヤ通りだ。」


 そして俺の口の中にはソーダ味のガム。視界は瞬く間に入れ替わった。


 最後の最後で帝斬は油断した。何が起こったかも知らないままで死んだことだろう。


「別に俺はあんたに恨みはねぇよ……。でもさ……、あんたは恨みを買いすぎた。」


 地下鉄のけたたましいブレーキの音がする。運転手からは突き飛ばされたように見えただろうか。何にせよ俺の仕事はひとまず終わりだな。


「さよなら、最高の拳士。」


 俺みたいな正々堂々という言葉を置き去りにするような戦いじゃない。少なくとも帝斬の戦いには向いている方向が確かにあった。














 それからの事は俺の知ることじゃない。後処理?事後処理?そう言うのはそれ専門の業者がいる。

 でもまあ、俺にもまだやる事があるっちゃある。報告書を書いて提出するまでが仕事だ。


 音無和樹様


 報告、帝斬は殺害した。


 上林傑


 こんなとこか?


 俺の報告書なんて毎回こんなもんだ。考えたって大した文章になるわけじゃないしな。さっさと面倒なことは終わらせるに限るぜ。


 あのホームが帝斬によって占領されているのは有名な話だったらしい。鉄道会社はどうやらそこそこの金額を納めていたらしいとも聞いた。


 帝斬の意思で金を納めさせてたとは思えない。そういう奴じゃないだろうしな。


「……帰るか。」














 この世界には、特殊な力を持った人間がいる。その殆どが、なんの皮肉か犯罪組織に加担していた。


 俺たちの仕事は、それを狩ること。


 ただそれだけだ。

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