次世代技術供与
アストライアの戦闘指揮所に、コウたちは集まった。いるのはヴォイ、にゃん汰、アキ、エメのメンバーだ。
オケアノスを通じて技術供与する計画のためのミーティングだ。
「これは思い切ったことをするにゃ」
リストを確認しながら、にゃん汰が感心する。
「A級構築技士に一律販売なんですね」
「そう。量が多いから欲しい技術だけ買って貰えればいい。約束したものや依頼するために必要な技術は渡すけどね」
「A級限定は意味があるのかにゃ」
「B級構築技士やオークションにすると、ストーンズ側についた構築技士に技術が渡る可能性も高い。いずれは仕方ないが、少しでも遅らせたい」
提供リストは三種類ある。A級構築技士に供与するもの。オークションで供与するもの。何もせず供与するもの。
【A級構築技士向け技術リスト】
『パワーパック追加型金属水素用超高温高圧炉について』
『金属水素生成型システム運用について』
『施設対応型金属水素生成装置・保管技術』
『上位電磁装甲技術』
『装甲筋肉技術』
『簡易装甲筋肉採用複合駆動技術』
『新型デトネーションエンジン技術』
『各種ビークルとシルエットとの連動を想定した次世代機体』
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【技術オークションによる製造権/技術分与可能技術リスト】
『航空機用金属水素応用エンジン』
『金属水素貯蔵型システム運用について』
『次世代複合駆動技術計画』
『新型ナノ製鋼法』
『汎用型プラズマ装甲技術』
『新型複合駆動方式』
『オクタアザキュバン使用兵装構造技術』
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【構築技士ランク制限無し提供技術リスト】
『次世代モジュール規格』
『追加装甲新規格』
『一般工場生成可能ナノカーボン複合合金材』
『新ハイエントロピー合金生成技術』
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ずらりと様々な項目が並んでいる。
「コウ。技術革命を興すつもり?」
エメがぽそっと呟く。
「革命といっても。惑星間戦争時代のローテクなんじゃないかな」
「それでも喪われた今ではオーパーツだ。さながら技術復興ルネサンスだな」
ヴォイも今回ばかりは真顔で確認している。
「このリストを通じて、俺たちの封印された知識も解放されている。認識封印って奴は厄介だ」
「そういうものなのか」
どうやらリストを確認した時点で、かつてどのようなものだったか、三人には理解できるらしい。
「企業や要塞エリアの再編まで始まりそうにゃ」
「持っている技術は同じ。どうブリコラージュするかのセンスは問われるな」
「ドリル二号機作ろうぜ!」
「わかってる! ドリルはメタルアイリスのメンバーにも評判いいからな!」
アキが想定価格を見て呆然とした。
「金属水素炉ってこんなに高いんですか。オケアノス経由で購入すると二十万ミナ!」
日本円で二十億相当。財務担当になりつつあるアキも呆れる価格だ。
「シルエットが戦闘機並の機動力をもつことになる。シルエット。値段も戦闘機だけど」
「これは仕方ない。惑星間戦争時代の技術そのもの」
エメも把握したようだ。
「リアクターはこの超高圧炉併用を前提に設計されていたようだ。今のパワーパックは廉価版みたいなものだって調べるとわかった」
「ホウ素を元にした一次元トラス素材をリボン生成し二次元シート状に成形。ナノ物質を数十センチの厚みにした金属水素小型炉。惑星アシア上だと作れる施設ほとんどない気がする」
「同じホウ素でもボロフェン系素材はシルエットの構造材に使われている。炉を作成可能な施設はこことあと八カ所あるようだが、人類側には四カ所しか残ってないらしい。残りは宇宙にあってオケアノス経由でも購入できるはず」
「この上位電磁装甲は金属水素小型炉の技術ですね」
「そう。だけどコスト的にも普及が難しいと思うから、タンク貯蔵型のプラズマ装甲を使ったタイプを用意しておいた」
「なるほど。金属水素の精製施設さえあれば、エネルギー資源を購入して使用できるわけですね」
「メタルアイリスは万全になるにゃ」
四人の説明に答えていくコウ。
とくに反対意見もないようで安心した。
「大型金属水素炉は企業が管理するんですね」
「最初はそのほうがいいかなって。金属状態を維持する管理方法も気に留めないといけない。大型水素炉の設備投資費も凄い額になる」
「二十一世紀でいえば油田を所有するようなもんだからにゃ」
「貯蔵型は純粋に推進剤やプラズマ装甲の燃料として運用。生成小型炉を搭載していないシルエットや航空機を運用するために所有者が購入。これが普通になる」
気になった点を見つけたエメが質問する。
「次世代モジュール規格って、単に大腿部と腰分のジョイント部分を交換して車輪兼用のジョイントにするだけ?」
「そうだよ。脚が破壊されたら自走できないからね。単に接続ユニットを移動用と割り切った車輪を最初から仕込むんだ。そうしたら戦場で脚を切り離して修理に戻れる。接続部をいっそ移動手段にしてしまおうと」
「小さな工場でも出来る改装だな」
最後まで読んだヴォイが気付いた。
「コウ。新型ラニウスはAもBも生産はTAKABAに投げるのか? 今後の継続生産を前提に、とは書いてあるが」
「提案してみるつもりだ。ダメならクルトさんところで頼むつもり」
「断るところはないだろうがな」
「B型は製造施設の大改装も必要だから、企業として考えると微妙。経営で考えるとスルーしたいはず」
コストの概念はケリーにみっちり仕込まれた。原価や加工費だけではなく、施設投資費用も考えないといけない。
「必要な設備の改修項目見たら、そうなるか」
ネメシス星系の重工業は完全オートメーション化がされている。
想定したもの以外を作ろうとすると大幅な改修が必要だった。
営利企業である以上、構築技士の希望だけで進めるわけにはいかないだろう。
あとはオケアノス経由で各地の構築技士に連絡を取るだけだ。
各地の構築技士の反応次第で今後の展開も変わるのだ。
コウ自身期待と不安でいっぱいだった。
いつもお読みいただきありがとうございます!
遂に技術革新回を迎えることができました。
今回のエピソードにより、新世代到来となります。
皆様の応援のおかげで、本日、四半期一位となることができました!
本当にありがとうございました。
これからも応援よろしくお願いします!




