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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
次世代規格への道

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垂直/短距離離着陸型重攻撃機

 低コストであるケーレスの最下級機アント型ワーカーが、群れをなして侵攻していた。

 アント型は最上位機であるコマンダー型以外はバッテリー駆動タイプ。通常火器でも対処できるが、大量生産されるのだ。

 そのコストは軽装甲車並だと言われている。侵攻してくる場合は数十機単位。


 それを指揮するのは戦闘力の高いソルジャー型や高次元投射装甲を持つコマンダー型。さらに旗艦ともいえるマンティス型がいるのだ。

 確認された戦力はワーカー型が三十機。ソルジャー型が十二機。コマンダー型が三機。そしてマンティス型が一機。

 

 彼らの勢力圏に突如として現れた、野営地。 

 その威力偵察のため、というには戦力過多といえるだろう。もちろん防衛ドーム攻略には物足りない戦力だが、十分過ぎるほどの戦力だ。

 

「こちらフォックス1。敵勢力発見」


 低空飛行を維持しながら、偵察ヘリが姿を現し、後退する。乗っているパイロットは狐型のファミリアだ。

 ストーンズ側に人間がいたら驚いていただろう。簡単に落とされるため長らく偵察ヘリは使われていなかった。

 案の定、レーザーやレールガンの対空射撃がヘリを襲う。


 ヘリは地形を利用し、うまく回避していた。

 メインローターの他に機尾にダクテッドファン型の推進(プツシヤー)プロペラを備えている複合ヘリコプターだ。その加速は通常のヘリコプターの限界である、時速四百キロを優に超える。


「こちらサンダー1。了解した」

 

 回答したサンダー1と名乗る声は女性。ブルーだった。


「サンダーストーム。出撃する。コウ、準備は?」

「オーケー」

「A1サンダーストーム、発進。五番エレベーターを使用します」


 キモン級の航空機用エレベーターから機体がせり上がる。

 折りたたまれた翼が展開され、水平になり、指定の位置に移動する。


 シルエット輸送能力を持つ垂直/短距離離着陸(STOVL)型の重攻撃機であった。

 新たに開発した戦闘攻撃機だ。対空戦闘も想定はしているが、現在敵勢力の航空機戦力は少ない。現在は専ら対地攻撃仕様だ。

 A1サンダーストームと名付けられたその機体もまた、初陣となるのだ。


 恐るべきその巨体は全長29メートル幅17メートル高さ7メートル。

 用意されたハードポイントは多種多様の兵装に換装できる。

 ワイヤー誘導式の対地、対空、対艦ミサイル各種から、多連装ロケットポッド、ECMポッド、投下用通常爆弾まで、いかなる対地攻撃任務も遂行可能だ。

 

 自動展開されるレールカタパルト。これでサンダーストームを時速七百キロまで加速させるのだ。

 山の中腹がわずかに開き、星空が見えた。

 A1はそのまま射出され、夜空を舞う。


「目標ポイント到達。交戦を開始する」


 ブルーが告げ、遠く離れた場所にいるケーレスたちに向かって攻撃準備を行う。

 コマンダー型とマンティス型がレールガンを用い対空射撃を行ってくる。

 

 この重攻撃機は二発の強力な三次元推力偏向ノズルを搭載している。

 運動性能は極めて高い。急速なポストストール機動を行い、射線をずらし回避していく。


 パイロンにぶら下げられたワイヤー誘導のミサイルが火を噴き、コマンダー型に向かっていく。このワイヤーは誘導目的もあるが、ウィスを通して貫通力を高める狙いもある。

 コマンダー型はただの一撃で爆散した。


 星空に向かうが如く、夜空に向け上昇を続けていたA1が急降下に転じた。

 ほぼ真上に陣取ったA1に対し、アントワーカーの対空射撃が間に合わない。


 近付いた。レーザーが命中する。嘲笑うが如く、びくともしないA1。装甲特化の重攻撃機だった。

 今度はロケットランチャーから大量のロケットが投下される。ワーカーたちは慌てて回避するも耐えられるはずもない。巻き込まれ破壊されていった。

 迎撃を行おうとするソルジャー型も、回避行動に転じる。敵機はいまだに急降下中なのだ。

 

 機首下部に装備されている、六砲身の巨大なガトリング砲が姿を現す。その口径は60ミリ。クルト曰く惑星アシア最大口径の機関砲だ。

 装弾数は一千八百発。毎分二千四百発、射程はおよそ一千八百メートルの性能を持つ。対マーダー兵器ではもっとも威力が高い兵器の一つだろう。


 ワーカーたちの回避行動を嘲笑うが如く、掃射し破壊し尽くす。60ミリ弾の巨大機関砲が一秒間に発射される弾数はおよそ40発。まさに弾丸の嵐である。


 マンティス型のレールガンが機首付近に着弾する。だが、被弾した箇所が小さな爆発を起こすと、すぐに消えたのだ。黒い跡を残すのみ。


 マンティス型は理解不能な状態に陥った。

 急降下は効果的であろう。だが、この速度、このままでは確実に失速する。いくら高性能な推力偏向ノズルを搭載していても、不可能だ。

 

 その疑問が解消したときには、破壊されていた。

 己が両断されていたのだ。


 急降下するA1重攻撃機。その胴体から現れた一機のシルエットが投下された。五番機が大剣を携えて降下したのだ――脚で機首を蹴り上げるとはAIすら予想しない。

 勢いを利用し、そのまま水平飛行に移り、しばらくのち上昇に転じたA1だった。


 五番機はそのまま落下し、マンティス型を両断したのだ。

 自重を乗せた空中からの斬撃は、易々と高次元投射装甲を切り裂く。

 

 生き残ったワーカーたちが群がってくる。

 その瞬間、破壊されていく。背後から偵察ヘリが機銃やミサイルで援護射撃を行ったのだ。重攻撃機単機運用などはさせない。

 隠密能力を生かし、タイミングを計っていたのだった。


 援護射撃を受け、コマンダー型を狙う五番機。

 驚くべきことに、五番機は跳躍し、前転しながらの回避運動さえしてみせた。

 一気に間合いを詰め、コマンダー型を易々と撃破していく。

 運動性は向上している上、加速用の推力偏向スラスターも装備している。機動性、運動性ともに良好な機体となっている。


 撃滅までにはさしたる時間はかからなかった。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



「ブルー。さっきはごめん」

「さっきの蹴り上げね。まったく気にしてないから」

「本当か」

「本当ですよ。そうだ。じゃあご飯奢ってくれたら許してあげる」

「お安いご用だ」

「あとは――この機体、とてもいい。私が乗ってもいい?」

「え? ああ。それは俺も願ったりだが」

「決まりね」

「でもA1は失敗作みたいなもんで…… いっそブルーのシルエットのスナイプいれとく?」

「いれとくって何?! ああ、もう戻らないと。コウ、説明しなさい!」

「帰ったらね」

「もう! 仕方ない。帰りは拾えないから頑張って帰ってね」

「そちらも。お疲れ様」


 シルエットと連携すること前提で運搬能力を持たせた重攻撃機だが、森の中を降下は厳しい。垂直離着陸機能は有しているが、やはり安全が確保されているところでないと着陸できない。


 戻ったら失敗作の意味を説明しないといけない。性能的にでは無く、運用的に、だ。

 

「出来はいいんだけどな…… 本来の意図と違ってしまっているから、やはり失敗作だよなあ」


 ぼやくコウを乗せた五番機は、闇の森を疾走し続けていた。


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