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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
ブリコルール
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アライアンス

 コウたちは王雲嵐たちによる盛大な食事会に招かれた。

 広東料理を未来でここまで再現した彼らの情熱も素晴らしい。材質不明だが蒸籠まで存在している。


「これは凄い! 美味しいな。チャーハン。久しぶりのお米だ……」


 コウは久しぶりの米、いや生まれて初めての本格中華に思わず目眩がしそうになる。


「食材は植物由来はだいたい手に入る。肉は合成肉だけど、未来だねえ。品質は一等級だよ」


 ウンランが色々と教えてくれる。


「良い情報は聞けましたか?」

「大変勉強になりましたよ。C級構築技士に役立てることができるかは不明ですが」


 商社のショウイチが気になったのか、聞いてくる。

 コウはよどみなく答えた。


「見込みはあるよ、彼は。だけど残念だがコンベの出番はないのかも」


 ウンランが割りこんできた。これ以上にないフォローだ。


「それは残念です」


 本当に悔しそうなコンベにコウは思わず笑いそうになった。


「頼むよショウイチ君。メタルアイリスに我々の製品をアピールしてくれたまえよ」

「わかっていますよ」


 恰幅の良い将官のような王城工業集団公司の幹部がショウイチをからかう。

 現在は装甲車の商談がジェニーと進んでいる。彼らも上機嫌だ。

 一回目でいきなり具体的な購入の話になるとは思ってもいなかったのだ。


 ただし、フユキが提案した要求性能と補修部品の話の要求水準は高い。互換性の少ない部品は、転移者企業の供給体制に依存するからだ。

 それは逆にメタルアイリスの購入意思の高さを感じさせた。


 コウがジェニーに耳打ちし、ジェニーは若干驚いた顔をしたがすぐに真顔に戻った。


「ええ。こちらの火力がある装甲車は魅力的です。私達がX463攻略戦に突入したときもこの装備があればと思いましたね」


 ウンランと幹部の顔色が変わる。それは、現在一切表に出ていない情報の一つ。


「私共の製品がお役に立てるような場面があったと?」

「もちろんです。あの時の敵はケーレスや敵陣営のアンダーグラウンドフォース。そして敵側の構築技士による、超重戦車。これがとにかく厄介でして」

「超重戦車だって!」


 ウンランが思わず声を上げる。そんなものを作る構築技士がいたとは驚きだった。


「惑星間時代のレールガンを無造作に乗せたシルエットサイズの巨体。問題は火力より防御力。シルエットはこの戦車を盾代わりに。超重戦車と共に構築された戦車部隊の防衛ライン。これが難物でした」

「それは…… 確かに厄介そうですな」


 幹部も呻く。そんな兵器相手に戦った経験を持つアンダーグラウンドフォースなどそうはいないはずだ。


「我々はなんとか撃破に成功。ですがそこまででした。やむなく撤退したのです」

「今商談しているのは、レールガン搭載の重装甲タイプの装甲車かな?」

「そうです」


 ウンランの質問にコンベが答える。


「戦車より機動力があり、火力も同程度。我々やアライアンスのストームハウンドに必要なものです。少なくない車両が破壊されているので」

「やはり同盟(アライアンス)を組んでいたのですか」

「ふふ。内緒でお願いしますね」


 もちろんこんなことは情報を出したうちにも入らない。ただ、彼らだけが知っているという情報を提供することも大事なのだ。

 いわゆる、あなただけに教える作戦。美人が使うとより効果的だ。


「もちろんですとも。確かに機動力と打撃力が欲しくなるのもわかるね」

「超重戦車の機動力は皆無でしたけどね。防衛戦に使われると厄介なことこの上ない。我々は攻め手には不慣れなのもありました」

「攻勢に回った経験のあるアンダーグラウンドフォースはそれこそ貴重です。良いお話を聞かせて頂いた」

「まったくですな!」


 ウンランと幹部たちはジェニーの話に聞き入っていた。


「では商談の品は九式の火星(フオシン)か」

「はい。まずは六輌でお話させていただいております」


 コンベが嬉しそうに笑う。


「調達価格は一輌四万ミナですね」


 フユキがコウに耳打ちする。約四億円らしい。

 戦車の半額に近い額だ。ただ、ジェニーが検討するということはそれだけの価値があるということなのだろう。


「それはそれは。ありがたいですね。ただ、私は構築技士。商売にはうといのでコンベに任せます」

「私としては商売はこちらで。私どものコウとウンランさんが仲良くしていただければと思っております」

「そこは心配いりませんよ。彼はすでに歳の離れた老朋友(ラオポン)です」

「ありがとうございます」


 こうして最初の訪問先の交渉は無事終わったのだった。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



「うぅ。お腹苦しい」

「食べ過ぎですよ。でも、頑張りましたね、コウ」


 うつむいて呻くコウの頭を、そっと胸元に引き寄せるアキ。コウはされるがままだ。


「情報はちょっと出し過ぎたかな?」

「そんなことはないですよ、ジェニー。ウンランはアシアと接触してコウのことをすでに知っていました。回りくどい駆け引きを行うよりは信頼を得られたと思います」

「それなら納得。打ち解けるスピードが桁違いだったものね」


 ジェニーも納得した。ウンランの指示もあってか、交渉はスムーズだった。


「そうですね。一輌三万ミナ、補修部品もあわせると結構なお買い得になりましたよ。ウンランさんの心証が良かった点も大きいでしょうね」

 

 フユキは交渉の結果を皆の端末に送付する。


「買っちゃっていいのかな?」

「いいですよ。コウもかなり勉強になりましたし」


 財政面の話もアキが全部仕切ることになっている。


「あなたたち、どうでもいいけど。客前であんまりいちゃつかないように。端から見ると完全に恋人同士よ」

「え? どこがだろう。アキ、ごめん」

「私はまったく! 問題ありません」


 余裕の笑みを浮かべるアキ。狙い通りのようだ。かたくなにコウの頭を離さない。


「自覚がないというのは困ったものね…… アキ。あんまり攻めすぎないであげてね。うちのブルーが泣いちゃうから」

「はい」

「何の話なんだ」

「コウ君…… 表紙にだまされたラノベを読み直すといいです。結構古めのキャラやってますよ」

「なんのことだ」


 鈍感系といいたいフユキに、まったく自覚がないコウ。

 ジェニーも苦笑いだった。


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