表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
ブリコルール
60/640

調達視察

 B812要塞エリア。

 ここには大きな空港がある。


 到着した最新鋭輸送機。操縦はヴォイだ。

 航空管制システムAIの誘導に従って着陸する。

 警備のシルエットパイロットたちは内心どよめいた。


 この新型輸送機を所有しているアンダーグラウンドフォースは少ない。生産待ちなのだ。

 搭載できるシルエットは四機ほど。積載は百二十トンぐらいだろう。だが、これほどまでに防御力と速度を持った輸送機は類を見ない。一ヶ月程前、謎の技術提供によって公開されたばかりの新型なのだ。


 輸送機より降り立った数名の人影。

 最初に降り立ったのは、金髪のブロンド美人。ジェニーだった。

 その後、中年で小柄な日本人の男が降り立ち、次にまた日本人の青年が降り立った。最後に犬耳の少女が後を続く。


 迎えの高級車がやってきた。彼らはB812要塞エリアにある転移者企業王城工業集団公司の来客であり、代表である王雲嵐の客人だ。王城工業集団公司の製品を取り扱っている商社の人間が迎えに来ていたのだ。

 メタルアイリスによる製品購入の視察については警備にも連絡はあった。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 話は遡る。


 メタルアイリスの駐屯施設にコウとアキが来るらしい。

 ジェニーにブルーとフユキが呼ばれていた。


「早速コウ君からの依頼。正確にはコウ君のパトロンからの依頼ね。危険は少なく、とびっきりの破格報酬」

「え?」


 アストライアがコウの後ろにいると思っていたブルーは目を見開いた。

 コウが代理人といっていたのは、あくまで建前だと思っていたのだ。


「名前はライブラ――天秤座と名乗っているわね」

「は、はは」


 ブルーが乾いた笑いを発した。そのままだ。アストライアは天秤座のモデルと言われている。

 正体を隠す気がないのかもしれない。


「私もですか」

 

 フユキの疑問にジェニーはにやりと笑った。


「C級構築技士コウの後学のために、A級構築技士と接触が持ちたいとのこと。指定メンバーにフユキ。そして私かブルーね」

「ふは」


 フユキがあまりのことに変な言葉を発した。あまりに予想外だ。


「コウ君の技能について理解あるお三方のご同行を、と書いてあるね」


 構築技士として察している三人、と名指しされた格好だった。

 微妙な空気が流れている。


「とんでもない依頼ですね……」

「報酬は決して損はさせない戦力の提供。もしくはキャッシュね。キャッシュはそうね。桁違いとだけいっておく」

「明らかに前者のほうが高額な報酬ですよねぇ」


 察したフユキが暢気に分析する。


「ええ。メタルアイリスの名義貸しも含めてね。作戦は簡単。メタルアイリスが兵器の大量導入のため商談。構築技士と話させてくれるところを優先、という名目ね。ちなみに本当に買うことになってもライブラが全額持つって。額はほぼ無制限っぽいよ」

「簡単といえば簡単ですが…… 破格な条件ですね」

「購買や調達は私の仕事じゃありませんねえ」

「それでもうちに二十一世紀のビジネスマンなんてフユキぐらいしかいないし。うちでも調達手伝ってもらってる。何よりコウのことを知っている日本人。一番安心できるよ」

「そう言われたら断れないですなぁ」


 ブルーが思いついた疑問を口にする。


「とはいっても数機の兵器購入ぐらいで私達とA級構築技士の面会なんてしてくれるでしょうか?」

「そこはほら。私達、アシア解放の立て役者だから。極秘といっても、バレバレ。接触を持ちたい向こうにとっても渡りに船でしょうね」


 アシアの稼働は惑星アシアの全要塞エリア、防衛ドームに衝撃を与えた。一部の要塞エリアでは、長らく止まっていたファミリアの生産までスタートしたのだ。そんなことが可能なのはアシアしかいない。

 そしてアシアの再稼働には解放した存在がいるはず。アシアからの回答はないが、メタルアイリスとストームハウンドの合同軍と言われている。


 大量の問い合わせがジェニーとリックに届いている。二人とも回答は同じ。「アシア解放については守秘義務に抵触するためお答えいたしかねます」だった。

 実質的に関与は認めた形だ。


「なるほど。わかりました。今回は残念ですがお留守番させていただきます」

「あら。一緒にいってもいいのに」

「ビジネスに箔は必要でしょ? フユキ」

「そうですねえ。あるに越したことはないですね」

「わかった。では私とフユキで行ってくるね。お留守番お願い」

「わかりました」


 こうして二人はコウと合流したのだ。

 彼らは最初の転移者企業に向かっている。

 そして行きの輸送機の中での出来事。


「なんで果てしない未来にスーツがあるんだ……」


 コウがスーツを着こなせていない。ネクタイが結べなくてフユキに助けてもらったほどだ。結んだことなど人生に二回ぐらい。情けないが仕方ない。


「私はこの服好きですよ」


 アキの長身はスーツが似合う。さながらリクルート中の就活生だ。自慢の尻尾対応のスカートに黒ストッキングだ。


「二十一世紀から二十二世紀の転移者がもたらした文化ですねえ」


 フユキは貫禄がある。普段温厚な彼も、今はやり手のビジネスマン。さすが元本職とコウは呻いた。


「なんだかんだいって着る機会あるんだよね。スーツ。ネメシス星系は礼装文化がなかったからすぐ定着したのね」


 ジェニーはグラサンに胸元を強調したスーツ。色っぽすぎて目のやり場に困るぐらいだ。キャリアウーマン然とした貫禄がある。


「えと、フユキさん。お金の単位ってもう一度教えてもらえるかな」


 今まで金銭的なやりとりが必要なかったコウだったが、さすがに取り引きの場でそれはまずいだろうと思い、フユキに再確認する。


「通貨単位は覚えやすいですよ。兵器で使う商業通貨と言いまして、大雑把に一ミナ一万円。百ドルちょいです。そう使うことはないでしょうが生活通貨として百デナリが一ミナですね。その下の単位がアス。三つとも古代通貨が語源です。ミナは日本人が漢字で当て字も作ってまして。書くとこれです」


 端末を使ってフユキはコウに漢字を見せる。


「僉って書いてミナと呼ぶのか」

「使ってる人はそういないでしょうけどね。作業用の一番安い中古作業用シルエットで五十ミナ。装甲車で五千~五万ミナ、戦車は八万から十万ミナ程度からスタートですね」

「私の機体が十五万ミナぐらいかな」

「差ありすぎだなシルエット。作業用なら確かに中古自動車の年式古いモデル程度か」

「車といってもピンキリでしょう? 空飛ぶ高級車なんてあったらなおさら。地球に居た頃の無限さんの小型ジェットが六億円ぐらいですね」

「ネメシス星系は全てオケアノスがお金の管理をしていると」

「そうです。オケアノスは巨大なデータベース兼保証機構です。IDと直結もしている。管理通貨制度の完成形ですね」

「闇市とかなさそうだもんな」

「ありますよ? 現物を使った物々交換、金やダイヤではありませんが価値のある物体をお金代わりに使います」

「金の代わりになるもの?」

「ええ。AスピネルとAカーバンクルです。Aスピネルはピンキリですが、Aカーバングルは小さく安いものでも一千ミナします」

「そんなにするのか」

「一番小さいサイズで、宇宙艦の動力になりますからね。リアクターが大型のものでないと動力として成立しないんですが」


 闇市場があるとは意外だった。しかしストーンズ側にTAKABA製の高性能シルエットが渡っているのを実際に見た。

 大枚はたいた、とバルドがいっていたことを思い出す。

 需要があるところには暴利でも供給もあるのだと実感する。 


「おっと、そろそろ到着ですね」

「最初の目的地は王城工業集団公司ですね」

「企業のアポは三社でしたよね。ジェニー」

「ええ。コウ君の希望と、拠点から近い場所で。最初はシルエットの他に車両開発にも力を入れている王城工業集団公司ね」

「それがですね。お出迎えは日本の商社らしいですよ」

「日本の? なんでまた商社が」


 予想外の国の名前にコウが驚いた。


「総合商社大手の紅信(べんしん)ですね。転移者のなかに何人かいて物流関係を仕切っています。聞いたことありませんか?」

「いや、ないかな」


 コウにとって商社とは接点がない。気にしたこともなかった。


「彼らが聞いたら泣きますよ。日本を動かす総合商社五社のうちの一社なのですから」

「笑われる、の間違いじゃないのか」

 

 自嘲気味に笑った。日本に居た頃は商社など最も縁遠い世界だったのだ。


「日本ではスマホの販売網から鋼材、インフラまで。彼らはモノや情報を動かし、ビジネス環境を作ります。このネメシス戦域でも」

「転移してからも商社なんてものをやるのは凄いと思う」

「構築技士やアンダーグラウンドフォースの誕生が物流の必要性を高めたと聞いているね」

「商社の相手は私がしましょう。彼らは物流の他に、危機管理や情報も商材です。どんな些細なことからでもお金を見つけ出します」


 フユキは商社を警戒しているようだ。

 そんな話をしている最中に、目的地へ到着したのだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ