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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
南極決戦

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血塗られた形見の襤褸をまとった騎士

 四機のテウタテスは二機一組で行動し、そのなかにアレクサンドロスⅢが攻撃に参加する。

 五機で一つ。彼等はそれを体現していた。

 四天王相手に有線ミサイルやレールガンによる集中攻撃が敢行されるが、四天王は荷電粒子砲、そして時には剣を用いて斬り落とす。


「忌々しい人間ども! 死ね!」


 四天王と交戦中だったガウェインこと常頼は、予期していたようだ。


「十秒だけなら現行シルエットでも対応できる。――そろそろだと思ったぜ。永遠の火(エターナルファイア)発動」


 冷静に永遠の火を発動させ、アキレウスの手刀を霞の構えで応戦し、受け流すが刀が折れた。

 ガウェインのラニウスCblock3はすかさず予備の小刀を追加装甲から取り出す。


「鹿島新当流・高上奥位十箇ノ太刀――徹位之事(てついのこと)


 装甲筋肉が唸りをあげる。アキレウスの手刀を小刀で押さえ込む。これが人間相手ならそのまま喉元に突き入れるところだが、アナザーレベルシルエットの首回りには無意味だ。

 傷一つつかないとみるや遠くに飛び退いたガウェインのラニウスCblock3は、目標を変えた。


「――太刀一尺五寸短之事たちいっしゃくごすんみじかきのこと


 小太刀を使った技術の数々は甲冑武道における神髄の一つ。

 与えられた時間は十秒。すでに四秒経過している。

 目指す先はアキレウスではなくテウタテスである四天王の一機。懐には入れない。先ほどの兵衛のように内蔵兵装を至近距離で受けてしまう可能性がある。


「潜在能力発動。――炎刃」


 自分が標的としったテウタテスはすかさず刃を展開するが、その腕ごと斬り飛ばすガウェインのラニウス。

 彼の潜在能力は刃に振動を与え、凄まじい熱を持つというもの。――彼の操縦するシルエットの手にかかれば、通常の斬撃に加え、高周波電熱剣と同等の斬れ味が加わるのだ。

 この潜在能力によって高速振動によって刃と対象である物体の摩擦が抑えられ、大きく鋭利さが向上する。高周波電熱剣は振動による高熱を発生させるために鋭利さはさらに増すがエネルギー消費も激しい。

 高周波振動剣や高周波電熱剣は折り畳みが可能の近接兵装で以前は人気だったが、非常に折れやすく脆い。格闘戦が多くなった現在のシルエットにはあまり採用されていないが、その効力が変わるわけではない。


「もう一太刀!」


 左側面に回り込もうとすると、ブレードをもっていた追加腕部が装備をパージする。

 掌をラニウスに向けると、その掌から高温のエネルギーが投射された。


「ちぃ!」


 荷電粒子(ビーム)の一種だろう。掌に砲口が確認できた。

 永遠の火発動中で致命的なダメージはないが、至近距離で受けたため装甲が大きく破損していた。


「時間です」


 フユキがワイヤーを投げ、ガウェインの機体を後退させる。


「させるか!」


 追撃しようとスラスターを噴かそうとするアキレウスにパーシヴァルことヤマトのラニウスⅢが襲い掛かる。

 

「ふん!」


 手刀がラニウスの胸部を貫こうとするが、追加装甲をパージして離脱するヤマト。

 その側面に二機の四天王が回り込む。


「永遠の火――キエエエエィ!」


 間に合わないと悟ったヤマトは永遠の火を発動させ、猿叫の雄叫びをあげる。

 斬撃を見切り、四天王の胴体に袈裟切りを叩き込んだ。追加の左腕部をまとめて二本斬り飛ばす。

 しかし四天王もただではやられない。右腕部からブレードを展開して、ラニウスの左腕部を切断する。鋭い音とともに暗器の刃が胴体に食い込む。


「ち、これでおしまいか」


 テウタテスの刃が抜けない。数秒後には両断されるだろう。


「何いっているんですか!」


 Dライフルを乱射して、カバーに入るトリスタンことイラーラ。


「老人より先に死ぬんじゃない」


 ベリノアことジェイミーがヤマトを連れて離脱する。

 離脱を阻止すべく、果敢に追撃する二機の四天王。


「ぐ!」


 背後から斬りかかられ、背面が大きく損傷するジェイミーのラニウスだったが、ヤマトのラニウスを外さず駆け抜けた。


「まずいな」


 テウタテスが狙う目標は――イラーラのラニウス。近接戦が苦手な彼女は永遠の火を使おうとも有効打を放てないだろう。


「いくぞニミュエ」

「そうはさせん」


 ガウェインとパーシヴァルが交戦中、間合いを計っていたベレアスことアノモスとニミュエことイオリのラニウスが必殺の突きを同時に放つ。

 深追い状態だった二機の四天王は対応が間に合わず、四本腕となっていたテウタテスのコックピットを二本の刃が貫いていた。

 テウタテスは腕部を振り回して抵抗するが、やがて稼働を停止した。


「これでようやく一機か」


 アノモスが苦々しげに吐き捨てた。敵は強い。

 四天王を一機倒すために円卓主力三機を喪失した上、クルトと兵衛も退場している。

 このままのペースで消耗させられるのはトライレームのほうだ。


「ベレアス! 避けろ!」 


 アキレウスが接近していた。

 ガレス役のユートンが叫び、突進する。


「死ね! アキレウス! 永遠の火!」


 憎悪を込めた瞳で、天馬はアキレウスに突撃する。

 

「ダメだ! ユートン! 退け!」


 アキレウスには火をもってしても穿ち抜けない。ユートンがもっとも理解しているはずだ。アキレウスは必殺の手刀を放つ。


「明鏡止水!」


 側面に回り込み、肩関節にランスを放つ。


「ムダだ!」


 ランスを掴んで腕部ごともぎ剥がす。あまりのパワーに絶句するユートン。

 

「ゆくぞ」


 アノモスが加勢する。


「邪魔だ!」


 アキレウスの手刀をかろうじて避けるアノモスのラニウスだったが、大きく胸部を破損する。

 間髪をいれず、もう一発手刀を放つアキレウスだったが、別のラニウスが手刀を捌いた。


「なに?」

「ニミュエ! ベレアスを連れて戦場から離れて!」

「恩に着っど」


 アノモスのラニウスを胴体から担ぎ上げて全速力で退避するイオリのラニウス。

 ユートンの天馬もイラーラのラニウスが回収して撤退する。

 アキレウスは動かない。眼前に立ちはだかるラニウスがいるからだ。


「あなたはボクが相手をします」


 フラックのラニウスCblock3だった。

 アキレウスがフラックのラニウス相手に手刀を放つが、フラックはその手刀を読んでいたようだ。紙一重で躱していた。


「貴様、何者だ!」


 手刀を幾度もなく放つが、アキレウスの攻撃はすべて読まれていた。

 このラニウスは、永遠の火など使わずにアキレウスの攻撃すべてを回避している。


「ただの整備士(メカニック)です」

「そんなわけあるか!」


 再び手刀を繰り出すが、その攻撃もかわされる。


「おっと今はガラハッドだった」

「抜かせ!」


 爆轟(デトネーション)駆動(アクチュエイター)と装甲筋肉を柔軟に利用して攻撃を回避しているフラックのラニウス。

 手刀が三度空を切った時、アレクサンドロスⅢは的確な判断を行った。


「お前は後回しにする。他のヤツが死んでいく様をみているがいい」


 永遠の火を使ったラニウスにも逃げられ、目標を変えるアレクサンドロスⅢ。

 フラックはテウタテスからは距離を取っていたので、深追いはしなかった。どのみちダメージを与える手段は少ない。


「まだ聖杯は使えない。四天王がまだ三機もいる。このままだと発動する前にボクが撃破される恐れがある」

「そうだ。フラック。それでいい」


 コウが声をかける。フラックは頷くしかなかった。

 一方モルドレッドことヘルメスは舌を巻いていた。


「なんだあの少年は。アキレウスの動きを全部読んで、凌いでいたぞ」

「アーサー以上の大物に偽りはなさそうです」


 バルドも認めた。アキレウスの攻撃をあれほど的確に躱せる自信はなかった。


「まずい!」


 ヴァーシャが異変に気付く。

 高速で移動を開始した二機の四天王がガラハッドのラニウスを猛追していた。


「あの少年がアキレウスの手刀を捌いたのだ。みすみす追撃させてなるものか」


 ヴァーシャはフラックを追うテウタテスに背後から斬りかかる。


「私とて近接兵装は開発している。――アロンダイト!」


 ヴァーシャとしては珍しく片刃のサーベルを用意していた。片手で斬れる装甲ではない。両手持ちに切り替えている。

 アロンダイトとはかつてランスロットが竜退治に使用したとされる剣で、ハンプトンのビーヴィスという人物の息子が持つことになる剣だった。

 ハンプトンのビーヴィスこそはロシア語圏で非常に人気がある物語であり、ボガティーリとして伝わる物語の原型ともされる。


「やはり!」


 背後に目がついているかのようにテウタテスの追加腕部が、背面にいるヴァーシャに襲い掛かる。

 巨大な刀身が出現していた。


「させん!」


 結晶を生成して伸ばしたこの刀は強靱ではあるが非常に研ぎにくい。三本しか生産しておらず、所有者はヘルメスとバルドのみ。

 突くように腕部を斬り飛ばすボガティーリ。その間に振り返り、迎撃態勢に入るテウタテスは至近距離からビーム砲を乱射する。


「くそ、速いぞあいつ!」


 腕部を斬り飛ばしたテウタテスが囮となり、もう一機がフラックを追い掛ける。

 明らかにアレクサンドロスⅢの指示なのだろう。


「他の円卓は何をしている!」


 ヘルメスが叫ぶ。フラックの死は非常にまずい。ヘルメスたち三機で、四天王二機を受け持って持ちこたえていることが奇跡のようなものだ。

 アキレウスが加わると先ほどの円卓のように崩れていくことは目に見えていた。


 突如、巨大な攻撃機が落下してきた。気付いたテウタテスは着弾前に砲撃して爆破させる。

 サンダーストームⅡの、抜け殻だ。


 一機のラニウスがすかさず降下し、もう一機の四天王に食らいつく。爆発の中から見慣れたシルエットが降下する。コックピットを担当していたシルエットだった。

 被弾をものともせず、テウタテスの両腕を無造作に斬り飛ばした。

 そのラニウスは加速力が異常だった。


「コウ兄ちゃん……? ではないよね」


 あまりに五番機に似た形状。

 独自な初期型の形状は、五番機以外ありえないと思われた。


「あなたは私と六番機が護るから。――円卓の騎士ブルーノ。ここに推参しました。身の丈があわない、血塗られた形見の襤褸をまとった騎士。戦いにおいてはろくに勝てない未熟な騎士です」


 少女フランはそう名乗りをあげた。マーリンから教えられた円卓の騎士ブルーノは若く未熟で、自分にぴったりの配役だと歓喜さえ覚えた。

 兄の形見――彼女の身の丈にはあわない、六番機とともに参戦を決意したのだ。


いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


アキレウスと四天王の連携に、円卓の騎士も為す術がありません。

脚がないとはいえ攻守最強のアキレウスと六臂のテウタテスはその連携が脅威です。

長期戦に持ち込むとアキレウス以外は撃破できますが、被害も膨れ上がります。


・鹿島新当流の技名難しい……

・トライレームの円卓が総崩れですが、彼等はとくに個人プレイが目立つので連携が上手ではないかもしれません……

・アロンダイト自体は日本の小烏丸のようなもので、アーサー王伝説ではなく後世の騎士がランスロットの名剣を使ったという由来の剣です。

 Bevis_of_Hamptonは14世紀頃に成立したイギリスの伝説的な英雄です。アロンダイトは彼の息子が受け継いだもの。中英語や古フランス語から広まりました。

 ロシアにも流れてロシアの民間伝承になるほど大人気だったそうで、ランスロットがヴァーシャ配役なのもこのせいです。

・フラックがアキレウスの動きを読めるのは理由があります。近いうちに明らかに!

・サンダーストームⅡから切り札投入です。


彼女はアストライア以外のトライレームメンバーと初邂逅になりますね。

円卓の騎士ブルーノ。円卓の騎士のなかでも未熟といわれた騎士でもあります。詳細は次号!


応援よろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
さすが四天王は強い。個々の性能に加えリアルタイム同調可能なら納得の結果。 とはいえ一機倒す間に円卓総崩れは読んでてハラハラするぅー。 ブルーノは、日本語wiki読んだら馬上x 徒歩◯と記載ありますけど…
そいや5人目の四天王は居ないのか、良かった
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