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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
南極決戦

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最強、敗れる

 アキレウスは地表に降りて、地を這うように極点管理施設の段差に向かう。

 

「今の攻撃は危なかった。許されていいのか、あんなものが!」


 惑星間戦争時代でもそんな火力を生み出せる爆薬は存在しなかった。

 もっとスマートに威力を生み出せる兵器が山ほどあったからだ。


「何をしておるアレクサンドロスⅢ! 極点管理施設から出るな! この愚か者!」


 絶叫するサバジオス。最強といわれたアキレウスを傷付ける手段を敵がもっていることに恐怖しているらしい。


「は!」


 短く返事だけして、急いで元の位置に戻るアキレウス。

 無能に愚か者といわれただけではらわた煮えくりかえる思いだが、それを歯ぎしりで噛み潰す。

 アキレウスにダメージを負ったミスはアレクサンドロスⅢの責任だからだ。


「アキレウスがこの有様とは。エウロパ様から拝領した神代の兵器を…… おのれトライレーム」


 膝から下が消滅している。咄嗟に斬り捨てたのだ。

 頑丈な装甲が仇となり、砲身のように凄まじい高熱が集中してアキレウスを内部から破壊する寸前だった。

 バルバロイの反射神経がなければ下腿部の切り離しは間に合わなかっただろう。


「それによくも――この俺を地に這わせたな。この屈辱、忘れんぞ」


 地面すれすれで飛行しているといっても、地を這うに等しい。ずっと浮遊しなければいけない。

 戦闘に脚など要らないアナザーレベルシルエットだが、整備も不可能になるということだ。

 アレクサンドロスⅢは脳裏に二機のシルエットを刻みつけた。


「あの二機は必ず殺さねばならん。半神半人たちよ。お前たちはあの爆薬について何か知らないか」


 もう三十人も残っていない半神半人に確認する。

 生き残っている者は能天使(パワー)クラス以上のアンティークシルエットに搭乗している者たちだけだった。


「――思い出しました。おそらく電子励起爆薬です。金属水素は水素の金属相でありそれ自体が高エネルギー状態なのですが、連中は金属水素をさらに電子励起状態にして威力を高めていたはずです」

「そのような絶大な兵器がありながら、お前らはなぜ忘れていたのだ?」


 苛立ちが抑えきれないアレクサンドロスⅢが、声を荒げる。バルバロイが感情制御不可能になるほど、焦燥しているのだ。


「電子励起爆薬を用いた兵装はアシア大戦のさなか、ほんの一時期使われていただけなのです。大戦途中で使われなくなったからですよ。友軍に被害がでたとも我らによる鹵獲を恐れたともいわれていますが両方でしょう」

「あれほどの威力だ。確かに味方に被害がでてもおかしくないだろうな。だから連中は使い手を厳選して、封印を解いたと」


 半神半人も空から降ってくるパンジャンドラムの脅威は訴えていても電子励起爆薬については忘れていた有様だ。

 彼等のいう通り、兵器開発の過渡期に生まれて短期間のみ使われた爆薬なのだろう。


「槍さえあれば」


 今や敵の手にあるエウロパの投げ槍。遠く及ばないにしても警戒すべき電子励起爆薬。

 アレクサンドロスⅢはトライレームに追い詰められていることを実感した。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


『アキレウスの両下腿部を破壊した。我々の現行技術でも十分に通用するということだ! 征け! 円卓よ!』


 アーサー役にも徐々に慣れてきたコウが檄を飛ばす。


「やってくれたなアーサー。ボクたちもうかうかしていられないね。四天王如きに手こずっている場合じゃない」


 フェアリーブルーたちはシルエット搭載レベルの火器でアナザーレベルシルエットの両脚部を破壊した。

 エース機用テウタテスに手こずっている場合ではない。


「モルドレッド。通信を切っていました。申し訳ありません。ガラハッドのことはアグラヴァインから聞いております」


 ようやくヴァーシャから通信が入る。


「ガラハッドをよく見守るように。父親のようにね!」

「承知いたしました」


 ガラハッドはランスロットの息子なのだ。


「ところであの爆薬はなんだい」

「電子励起爆薬です。アーサー王が封印していたはずですが、解除したものかと。シルエット砲弾サイズで要塞エリアのシェルターも破壊可能です」

「以前報告にでてきたアレか。しかしあれほどとは。アナザーレベルシルエットの下方で爆発させ、高熱を足首のなかから流し込み、内部から破壊しようとしたか」

「ロケット攻撃はそのためでしょう。アキレウスが飛ぶと予測していた者が数名いた。おそらくアーサーとマーリン、ユーウェインでしょう」

「ユーウェイン? 戦闘工兵部隊の隊長か」

「彼はアシア大戦以前よりジライヤ、サイレントボマーなど呼ばれ旧半神半人側の傭兵に恐れられていた者。P336要塞エリアの護りを任されるなどアーサーの信認も篤い」

「そこまでの者か。層の厚さが羨ましいね」

「仰る通りです」


 万年人材不足のアルゴフォースにとって、トライレームが持つ人材はすべて魅力的だ。

 生産力や制圧地域の広さで考えれば、指揮官級が彼らの十分の一でもいれば戦争は変わるかもしれない。


「ところでランスロット。四天王は倒せると思うかい?」

「難敵ではありますが、倒します。我々はあの程度の兵器は倒さなければなりません」

「そうだね。彼等がアキレウスの両脚を破壊したことは事実。ならばボクたちはヤツを破壊せねばならない。少なくとも足手まといはごめんだ」

「同意です。いきましょう。バルド、お前もだ」

「了解ですぜ」


 四天王を攻略するために近寄る三機。

 一方クルトと兵衛も四天王の一機と対峙している。


「ここは俺に任せて先にいけといいたいところだが、どう攻略すっかな」

「腕が鳴りますね。硬く、速く。パワーがある。単純に強いということです」


 四天王二機が同時に動いた。動きが完全に同調しており、鋭い突きをフラフナグズに向かって繰り出す。


「むう!」 


 大きくバックダッシュして躱すフラフナグズ。

 輝く閃光が横切った。


 アキレウスが右腕部の手刀でフラフナグズの胸部を貫いていた。

 脚部がないぶん、常時スラスターで動くしかない。むしろ地面という制約から解き放たれたのだ。


「クルトさん!」


 兵衛が叫ぶ。


「その機体、現行シルエットにおいて近接最強と聞いていたが――他愛もない。このアキレウスは全シルエットのなかで最強なのだ!」


 アレクサンドロスⅢが吼える。

 しかしクルトの目は闘志を失ってなどいない。


「最強とはどれぐらいのパワーか、見せてもらいましょう」


 フラフナグズはアキレウスの腕部を掴み動きを制止しようと試みる。

 アキレウスが強引にフラフナグズの腕部を引き千切った。


 ――あまりある装甲筋肉の束を、無造作に。


「そこまでのパワーが……」


 最強たる所以。フラフナグズが備える無数の装甲筋肉の束を引き千切ったのだ。


「いけません!」


 フユキがコードを射出し、フラフナグズの胴体を引き寄せる。

 兵衛のラニウスCblock3もまた狙われていた。残りの四天王二機が襲い掛かる。

 左右と――頭上からの拝み斬りを同時に繰り出した。


「馬鹿野郎が! くらうかよ!」


 兵衛はすかさずスラスターを全開させ四天王のうちの一機の懐に飛び込む。


「懐――ぐわ!」

 

 テウタテスの胸部から巨大な杭が発射され、ラニウスの胸部を破砕した。右胸部から右腕部まで根こそぎ破壊される。


「胸部に暗器だと…… まじかよ!」


 シルエットに内蔵兵装は不可能だ。人間を模している以上、肉体に刃物を仕込むことなど不可能でありフェンネルOSが受け付けない。

 テウタテスは四本腕に内蔵兵装を仕込んでいることは兵衛自身がよく知っているが、胸部にまで内蔵兵装があるとは想定しなかった。


「俺もまだまだ甘いな」


 片腕一本で剣を構える兵衛のラニウスより前に出る円卓の騎士たち。

 兵衛は冷や汗をかく。永遠の火や潜在能力を使う暇すらなかった。


「ヒョウエさん! いったん下がって下さい!」

「くそ。一匹ぐらい道連れにしたかったんだがな。任せたぜ。すぐに戻る」


 胸部からえぐられているラニウスで戦闘続行は厳しいと判断した兵衛は後退する決意をする。


「四天王はスラスターに全身暗器だ! 気を付けろ!」


 兵衛が警告を発する。他のパイロットなら死んでいた可能性が高い。

 他の部位にも兵装を仕込んでいる可能性もありえた。


「コウ。ヒョウエさんとクルトさんがやられた。アキレウスを中心に四天王が手足のように動いている」


 ケイ卿を演じるヤスユキが、コウに事実だけを淡々と告げる。

 アキレウスは待ってなどくれない。武器を無くしたら、神体ともいうべきアナザーレベルシルエットで殴るのみ。

 四天王は手足のように連動している。


「――しかしここは俺たちを信じてくれ」

「わかっています。ケイ卿」


 ヤスユキをケイ卿に抜擢してくれたマーリンに感謝するコウ。

 本音で話せるこの男は、彼にとっての兄貴分だ。


「四天王がスラスターを温存していた理由は推測できます。戦闘中の彼等は補給が厳しい」

「そうだよな。俺達のように金属水素をふんだんに使えるわけでもなさそうだ。ただアキレウスが厄介だ。フラックに…… あの少年を矢面にはだしたくないが、頼む」

「わかった」


 コウは通信を切り替え、フラックに繋げる。


「ガラハッド。聖杯の準備だ」

「わかりました」


 フラックは緊迫した面持ちで頷いた。


「――すまん。アキレウスと戦わせたくなかったんだが」

「気にしないで。僕は望んでこの場所にいるんだよ、コウ兄ちゃん。おっといけね。アーサー王」


 そういって通信を切るフラック。


「アレキサンドロスⅢとアキレウスに【円卓】を使いたいぐらいだ」

「ダメです」


 マーリンがきっぱりと言い切った。


「最強たるアキレウスを、彼等が倒せなければ。今は我慢の時です」

「わかっている」


 マーリンことアベルも焦燥感が募っている。


「任せるということは辛いでしょう? アーサー王。あなたは今それを学ぶべきなのです」

「俺の教育係が厳しすぎる」

「甘いコウにはぴったりですね」


 アテナのエメも同じ気持ちのようだ。

 他人に責任を負わせ、職務を全うするまで見守るということも辛いものなのだ。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


アキレウスへのダメージはアレクサンドロスⅢとサバジオスにも大きな動揺を与えます。

同技術の惑星開拓時代の兵器ならいざしらず現行技術で最強のアナザーレベルシルエットにダメージを与える手段があるとは想定していなかったからです。

また二人の関係修復も不可能なレベルに。サバジオスが悪いのですが。


電子励起爆薬が使われた回数はあまりないので半神半人が忘れていたとしても責められません。

地表に向けて撃つと怒られますと前回フユキがいっていたように、極点管理施設にダメージを与える可能性もあります。

サイレントボマーはep153ですね。モチーフはサイバーコネクト(のちにツーになる)さんのPS1ゲームです。


そして四天王はなんでもあり。装甲が硬いなら暗器も仕込み放題で厄介です。

不意打ちでは火も潜在能力も使うことができず、ヒョウエも一時撤退。

アキレウスと四天王の連携で、円卓の騎士そのものが総崩れに。


トライレームのエースパイロットは出し切りました。

ここから押し返す必要があります。そうでなければアキレウス単機によって被害が大きくなるからです。

マーリンにも打つ手なし?!


応援よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
 …前回のシ〇ゴス擬きが、中身爆薬ではなく腐食性の粘液だったらもっと楽だったかもしれませんね(´・ω・`)。  ………かなりエグイ構図にはなっちゃいますが(;^ω^)。
死ななければ安い。部品を規格化してきた甲斐がありましたね。あぁド◯ケンの補給は早い…w 致命的破損なのに短時間で修理復帰となれば普通は動揺しそうですが、サイボーグだからなぁ。 全身暗器は全身ミサイルの…
修理する技術が無いから基本アキレスは今後足無しだな いずれにせよ先は無いのか
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