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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
南極決戦

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四天王

 円卓軍の侵攻が止まる。

 四機のテウタテスの猛攻が始まったからだ。


「なんだよこいつは!」

「腕が六本か!」


 ベテランパイロットも言葉を失う強さだ。

 有線ミサイルも的確に迎撃している。


「まずい!」


 テウタテスの腕部に隠された隠し刃を受け止めるラニウスCⅡだったが 量産型の電弧刀が、限界までたわんでへし折れた。


「電弧刀でなければ俺が真っ二つだったぞ!」


 わずかなしなりで間一髪。ぎりぎりで助かったというところだ。これが高周波ブレード系なら機体が剣ごと真っ二つになっていただろう。

 スラスターを噴かして全力で後退するラニウスCⅡがLDライフルで牽制しながら前線を退く。


「六本腕の機体がテウタテスのエース機ですね」


 クルトが間合いをはかりながら詰める。対応できるパイロットは限られる。


「風神雷神の次は四天王かよ! ギリシャにゃ仏様なんぞいねえだろうが!」


 兵衛が思わず呟く。古代ギリシャに仏像などあってたまるかという思いだ。


「います……」


 気まずそうにアテナのエメが応答した。


「じつはですねヒョウエ。ギリシャ仏教というものが古代ギリシャに存在したのです」

「まじかー」


 驚いた兵衛が思わず呻く。

 アテナのエメがなんとも微妙そうな表情をしている。


「それもアレクサンドロス三世絡みで。東方遠征して死後彼の王国が分裂しました。彼の配下であるセレウコスがアナトリアからインドまで領土を広げ、仏教がギリシャに輸入されてヘレニズム文化の中心となりました。その影響は法であるダルマを広めたアショーカ王に繋がるのです」

「仏法のダルマだな。アショーカも知ってるぜ。なんとも厄介な話だ! アレキサンダー大王が仏教に絡むなら四天王がいてもおかしな話じゃねえな」


 兵衛は馴染み深いアレキサンダー大王という呼称を用いてぼやいた。


「変な原理が働いている可能性はありますね」


 アテナのエメも偶然だと思いたいが、六本腕のテウタテスは仏像のようだ。


「俺もラニウス構築の際、妙見菩薩の概念を入れたからな。人のこたぁいえねえか。道理ですんなり学習されたはずだな」

「妙見菩薩とは北極星の化身、死を司る北斗七星の概念。あなたの口からようやく聞きましたね」


 兵衛とてラニウス系を構築する時、妙見菩薩の概念をインストールしている。


「おっと。そうだったっけ? 興味あるから詳しい話を聞かせてくれ。とりあえず、こいつは現地でなんとかする。援護射撃も頼むわ」


 ギリシャ神話のネメシス星系で仏教概念を学習させるなど、後ろめたさを感じていた兵衛がとぼける。

 戦闘に専念するという言葉は嘘ではない。テウタテスは雑談しながら戦えるような相手ではない。


「全力で支援します」


 アテナのエメがヒョウエに約束する。

 通信を切り終えて頭を抱えるアテナのエメ。


「バルバロイにも極めて強い人間原理が働いているのでしょうか。いえ、働いていないほうがおかしいのですが。古代ギリシャのオリエントといえば普通は中東ぐらいまでの範囲のはず」

『インダス川で引き返した逸話は有名ですね。中東での名はイスカンダル。アレクサンドロス三世の死後、東方遠征は完遂されたといってもいいでしょう。のちのギリシャ・インド王国になります』

「完全限定名アレクサンドロスⅢか。良かった。ゴルディアスの結び目を切ったのがコウで」

『ブリタニオン襲撃にきたバルバロイがアレクサンドロスⅠではなくⅢがきていたら流れが変わっていたのかもしれませんね』


 アストライアも可能性の話としては十分ありえると推測している。その場合、フリギアのアテナは生まれていないので悲惨な結果になっていたはずだ。


「とはいえアレクサンドロスⅢは四天王など意識も認識もしていません。知ったとしてもどうでもよいでしょう。円卓の騎士概念で固めた我が軍に利はあるはず」


 アテナのエメは戦場を俯瞰する。


『全軍に告ぐ。敵エース機と思しき四機のテウタテスを確認。これらの機体は六本もの腕部を持つことから四天王と呼称します。決して無理はしないよう。通常のテウタテスよりもはるかに強敵です』


 円卓軍のパイロットたちに緊張が走る。

 あのテウタテスのエース機がいるとは想定していなかった。


「もうすぐ円卓の騎士がきます。もう少しだけ、通常戦力で押したい。包囲を完成させ、磨り潰します」

『キモン級とアリステイデス級二隻は配置につきました。じきに制空部隊はアンティークシルエットを排除完了するでしょう』

「次に地上戦力ですね。アキレウスを最優先に排除したい」


 アテナのエメはアキレウス戦まで円卓の騎士が持つ戦力を温存したいところだ。

 円卓の騎士十一機が、最前線に到着する頃合いだった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 テウタテスに斬られそうになるラニウスCⅡをヴァーシャのボガティーリがフォローに入る。


「退け!」

「助かる! ランスロット!」


 パイロットはそういってラニウスCⅡを戦線から下げる。


「まったく羨ましいものだ。えり抜きではないパイロットでもあれほどの技量を持つとは」


 ヴァーシャがそう呟き、眼前のテウタテスに対峙する。

 背後には四天王と呼称されたテウタテスがいるが、司令塔でもあるようだ。連携しているテウタテスが効率的に詰めてくる。


「四天王一機ぐらい倒してみせたいが、アレクサンドロスⅢへ到達するまでに脱落するわけにもいかん!」


 ヴァーシャの目標はアナザーレベル・シルエットだ。こんなサイボーグが搭乗するシルエットもどきに負けるわけにはいかない。

 そう思うものの、超反応は厄介だ。研究や想定はしていたが、それ以上の性能といえる。


「ちぃ!」


 側面に回り込んで近接武装を振るうテウタテスに思わずヴァーシャが舌打ちする。

 正面にもいる。ボガティーリはかろうじて初撃を躱す。しかし追撃に対応する手段がない。


「ランスロット。突出しすぎですぜ!」

「バ――アグラヴァイン!」


 ボガディーリ・コロヴァトのパイロットはアグラヴァインことバルドだ。円卓の騎士が最前線に到着したのだ。


「通信を切るとは何事ですかい。モルドレッドもお怒りですよ」

「戦闘に専念したかったのだ。謝罪しておく」


 バルドは髭面を厳めしくしてヴァーシャに苦言する。 


「そうそう。緊急ですぜ。モルドレッドから伝言です。死ぬ気でガラハッドを守るようにと」

「ガラハッド? あの少年整備兵か」


 何故こんな若い少年兵がガラハッドなのか。

 ヴァーシャにも理解しがたいものだったが、コウが最前線に出した理由はあるはずだ。

 コウはこのような少年を死地に送ることは好まないはずだからだ。


「ガラハッドが死ぬとモルドレッドが物理的に死ぬそうです」

「どういうことだ! 詳細を話せ」

「ガラハッドはアシアの騎士以上の大物だとか。アナザーレベル・シルエットにも複数の搭乗経験があるそうで」


 そういいつつ、器用にテウタテスの斬撃を躱しているバルドのボガティーリ・コロヴァト。

 バルドとしても円卓劇よりは戦闘に専念したいところで、ヴァーシャの気持ちは理解している。


「重大な案件だな。アーサーに詰めねばならん」


 EX級構築技士以上の重要人物がいるとは思えなかったが、ヘルメスの本体の安否に関わるとはただごとではない。

 ヴァーシャは考えを改める。


「へい。俺もそう思いますが後回しで。こいつらをなんとかしないとやばいです」

「わかっている」


 バルドは傭兵という立場からヴァーシャのサポートには慣れている。

 ヴァーシャは焦燥感が募っているようだ。


「ますますこんなところで手こずっているわけにはいかんぞ! 邪魔だ!」


 前方には神代の兵器が待ち構えている。

 身近により強者がいるかもしれない。

 そんな決戦時において、ヴァーシャ自身がテウタテス如きに後れをとるような醜態を晒すわけにはいかないのだ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 極点管理施設の左右に回り込んだキモン級やペリクレス級二隻から多くの航空機が飛びだした。

 ひときわ巨大なその攻撃機がある、その名はサンダーストームⅡ。シルエットを搭載可能な重攻撃機が三機が平行してキモン級から飛び立った。


「ここらが限界かもしれねえ!」


 パイロットが回避行動を繰り返す。サンダーストームシリーズは機体制御にシルエットを用いており、ⅡのベースはラニウスCⅡだ。

 地面すれすれの低空飛行を行っている。


「十分よ。投下して」

「ベルフィーベ! 了解です!」

 

 サンダーストームⅡは急上昇し、その中からグロウスビークが発進する。

 妖精の女王に登場する美しき女射手を演じるはフェアリー・ブルー。


「あたいもここでよか」

「ニミュエもですか。投下します!」


 もう一機のサンダーストームⅡからは湖の乙女ニミュエ役のイオリが搭乗している。

 同様に急上昇したサンダーストームからラニウスCblock3が出撃した。


「ようやく合流ですね。ベルフィーベ」


 グロウスビークの着地点付近にはフユキとアノモスがいる。


「いくぞニミュエ」

「おうさ」


 今や息がぴったりのベレアスとニミュエことアノモスとイオリ。二機のラニウスCblock3がテウタテス攻略を開始する。 

 もう一機のサンダーストームはさらなる奥地へ侵攻する。


「あのサンダーストームⅡは聞いていないが…… 俺達は護衛任務を継続するぞ」


 サンダーストームシリーズは操縦システムもシルエット。ラニウスCシリーズだ。

 パイロットは何を搭載しているか知っているのだろう。護衛するために二機のサンダーストームⅡが加速して、追い越して先導する。

 

 同時にキャメロットからは攻撃機ブーンが離陸した。

 二機一組でパンジャンドラムを空輸する役割だ。テウタテスに有効なパンジャンドラムは限られている。

 マーリンが開発したうなぎのゼリー寄せ(ジヤリドゥイール)マークⅢだった。


「これも爆雷投下になるんですかね……?」


 ふと疑問に思ったセキセイインコ型のファミリアが悩む。


「自走爆雷だから爆雷投下でいいんじゃね」


 深く考えないシロフクロウ型のファミリア。


「しかしこんなときにパンジャンドラムでいいのか」

「どういう意味だ?」

「エースパイロット精鋭部隊、航空戦力、可変機、パンジャンドラムから間接支援の車輌まで総動員して、いまだに前線を崩せない」

「うなぎのゼリー寄せなどを投下している場合ではないか……」

「何もしないよりはましだろうが。マーリンがどんな改良を施したのか」

「泥濘用パンジャンドラムはすべて爆発済みだそうだからな。俺達が運んでいるこれ(・・)はなんだ」


 このシリーズのパンジャンドラムはテケリテケリと不気味に軋るので、ファミリアたちからも気味悪がられている。

 意志があるとさえ感じる挙動を取ることもある。


「わからん。俺達はただ前線に運ぶだけだ」


 ブーンは全機で四十機。二十機ものジヤリドゥイールマークⅢを運んでいる。ブーン自体に戦闘力も耐久力もないので戦闘参加は厳禁とされている。

 極点管理施設敷地内に到着し、自走爆雷を投下するブーン。制空権はほぼ掌握したようだ。


「頼んだぜパンジャンドラム……」

 

 引き返すブーンパイロットのファミリアたちは、自分たちが運んだ自走爆雷に祈るしかなかった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


テウタテスのエース機登場です!

六本腕です。制御するバルバロイも相当優秀な個体でなければいけません。ここは完全平等のストーンズとは違うところですね。

五人いることが定番になりつつある四天王ですがリーダー+四機ということで普通に四天王です。


ギリシャ仏教。ギリシャ・インド王国です。アレキサンダー大王の部下が支配した東方はダルマを広めたアショーカ王に繋がります。

ギリシャと仏教には交流があり、その名残がギリシャ彫刻にも確認されています。


・兵衛がようやく自分の口で妙見菩薩インストールを白状しました。ep442でコウがアシアに伝えていますね。

ヘスティア「追試です」

・アレクサンドロス三世。またの名をイスカンダル。アラビア語圏ですね! 英語版Wikipediaにも宇宙戦艦ヤマ○の架空の惑星と記載されています!

・総力戦なのであらゆるネームド投入。ブルーやイオリも当然です! ネレイス(水の精)なので湖の精由来の配役です。

 アノモス君がまた外堀を埋められています。鹿児島出身のお父さんにご挨拶に行く日も近そうです。

・祈りを託す兵器はアレ


東京取材は充実していましたが、ここに書けないほど色々あったので活動報告で記載します。

気になる方は読んでみてください! 

応援よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
腕六本にはロッポンギのオドリコで対抗だ! と思ったら、かの有名なジュリ…は港区でした。あれれ… バルドは落ち着いてますが、ヴァーシャは危険なほど空回りしてますね。 一人では対処するなと言われている相手…
 ……テケリテケリって…ショ〇スやんけ!Σ(゜Д゜)  名前からして不定形だとは思ってましたけど、ク〇ゥルフ神〇って…有り?(;^ω^)。  とりあえず、現時点で私が予想できることは一つ。  この攻撃…
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