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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
南極決戦

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もう一つの攻略法

 三機のシルエットがテウタテス一機に立ち向かう。

 場合によっては四機。それ以上は動きに制約がかかりすぎる。

 射撃武器は使わない。LDライフルやレールガン砲弾は効果が薄い。テウタテスは惑星間戦争時代の材質な上、アンティークシルエットよりもはるかに厚い、戦車のような装甲を誇る。


「く!」


 距離を詰められたパイロットが思わずLDライフルを構える。

 発砲した瞬間、テウタテスはさらに距離を詰めて腕から刃を展開させて斬撃を放つ。

 別のラニウスがすかさず切り落とした。


「撃つな。被弾上等で斬ってくる」

「すまない。つい……」


 距離を取って射撃する。当然の行動だが、このテウタテスには通用しないのだ。

単機でも高性能なテウタテスだが、真価は周囲のバルバロイと連携、いや連動する隙の無さだった。

 

 トライレームでも中破して後退したシルエットもいる。このままではより死傷者も増えるだろう。


「こいつらもお互いをサポートしているな」


 ある意味マーダーにも近い、一種の超個体。多数の個体から形成されている集団にも関わらず一つの個であるかのように振る舞う動きを連想させる。


「サイボーグならではの情報共有か。軍団となると厄介だ」


 一対多数でもテウタテスは即座に別の機体がフォローに入る。

 人間離れしている連携。人間ではなくサイボーグのバルバロイだからこそ可能な動きだった。


「どう崩す?」


 その時、通信が入る。


『航空部隊より通達だ。攻撃を仕掛ける。タイミングを合わせてくれ!』


 トライレーム円卓部隊のMCSに通信が響き渡る。

 キャメロットからの飛行部隊だ。


「しかしまだアンティークシルエットもいる!」

『空は私達に任せてね!』


 ジェニーの声がする。極点管理施設の向こう側から新型可変機ルーサントの航空部隊が飛来したのだ。


「みんな思い出せよ。同時攻撃は連中、瞬時に優先順位をつけてそこから斬りかかる」

「しかし同時攻撃にも限界がある。クソゲーCPUには反応させる前提で、そこに対応する技を置けっていっていたな」

「どうやって反応させるか。これしかないだろうな!」


 空中から有線のミサイルが放たれる。

 後方のバトルシルエットからもだ。大型で装弾数はないものの、有線による高次元投射装甲化されているミサイルはテウタテスにも有効だ。

 そのタイミングに合わせて円卓軍が斬り込む。


「どれほど超反応が優れていて、腕が四本あるといっても、どれほど優れた連携でも、それだけだ。振るという動作があるなら戻すという動作も必要。撃つなら構える動作がいる。――すべて潰してしまえばいい」


 アーサーことコウが小声で口にする。


「超反応でも技に限界がある。こちらも同様に出が早く大きな判定がある技を置く。インチキ対空なんてしゃがみ大パンチモーションがあったな」


 昔のゲームを懐かしむ。

 居合と格闘ゲームは通じるものがあるような気がして好きだった。判定が強い技は、範囲が広い抜刀と同じ。技の発生の速さと、隙の少なさが両立していればなおよい。

 ゲームで硬直モーションが長ければ、それだけリスクの高い技なのだ。居合も同じで戻りが遅ければ、それだけ隙となる。個対複数を想定する居合の型の数々がこの惑星で役立つとは思わなかったこと。

 しかし過去を懐かしんでいる場合ではない。


「俺達は直前まで動きを見せない、いわば無拍子で対抗した。戦場で戦っているパイロットにその戦術を強いることは不可能だ。しかしトライレームの一人がクソゲーのボスを単純な方法で倒した」


 狙い澄まして飛び交う砲弾やミサイル。短発ではない。過剰ともいえる弾幕だった。


「ごく限られた距離においてのみガードするラスボス。そいつを一度でもガードさせてそのまま連射可能な速い飛び道具で削り殺す。テウタテスにも有効かもしれないということでシミュレートしてみた結果――正解だった」


 空中からの航空編隊からの集中有線ミサイル攻撃と、バトルシルエットによる間接支援攻撃。直後に襲いかかる選りすぐりともいえる円卓軍のアサルトシルエット部隊による斬撃。

 腕部が四本あろうが、暗器だろうが関係ない。テウタテスのパイロットであるバルバロイは優先順位をつけようとしてもつけられないほどの攻撃を受ける。

 せいぜい有線ミサイルの迎撃のみで、それ以外の動作は不可能で、守り続けるしかない。


「テウタテスなら削り殺せるさ」


 本来、テウタテスはまともにやりあう相手ではなく航空戦力や遠隔攻撃で対処すべき敵。

 

「包囲が完成した。あとは切り崩すのみ。そうすれば――王は動かざるを得ない」


 前線で動きがあった。


『レオ、動きました』


 アテナのエメからコウに通信が入る。


「円卓の騎士たちに告げる。レオが動いた」

「こちらガウェイン。了解した」


 円卓軍がテウタテスを退けながら、一丸となってアレクサンドロスⅢが搭乗するアキレウスに向かっていく。


「頼んだぞ、みんな」


 コウにはサバジオスを討つ役目があり、今は動けない。

 味方であり、ライバルでもある彼等を信じるしかなかった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 空中でも激しい戦闘が行われていた。

 飛行能力があるアンティークシルエットは防空担当だ。しかしトライレームが率いる戦闘機編隊には為す術もない。

 有線ミサイルに中口径レールガンまで搭載している。火力は十分だ。

 加えて重攻撃機である大砲鳥Ⅱ部隊の重火力も加わり、地表からはバトルシルエットの対空砲火が飛んでくる。


「――人型はもしや戦闘機にとっては的なのでは」


 半神半人のパイロットが呟いた。常識すぎて、改めて口にすると被弾面積の多さと速度の遅さが致命的だった。

 エンジェルは最高速度500キロ程度。トライレームの戦闘機はマッハ3から1を自在に使い分ける。


「サバジオス様! 我々も地上戦へと移行したい」

「ならん。誰が空を守るというのだ」

「しかしこのままでは我々が全滅してしまいます!」


 サバジオスは考え込み、口を開く。


「アレクサンドロスⅢ。何か良い案はあるか」

「ありません」


 アレクサンドロスⅢは取り付く島もない。


「陸はトライレーム軍の精鋭相手に持ちこたえるのがやっとの状況。あなたこそ手に持っているビームライフルを活用してはいかがでしょうか」


 サバジオスは、様付けで呼びたくないアレクサンドロスⅢの意図に気付かなかった。


「ふむ。余自ら助力をしよう。感謝するがいい。半神半人ども」


 指導者として相応しい姿を見せるべく、荷電粒子を放つビームライフルを構えるオルフェウス。

 ビームは虚空を貫いた。


「助けてください! アレクサンドロスⅢ!」

「頼む! あんなの援護射撃にもならない!」


 アレクサンドロスⅢは答えない。

 アレクサンドロスⅢには、オルフェウスが放つ虚空のみを切り裂くビームの軌跡を、哀しげな視線で見送ることが精一杯だった。


「――」


 アレクサンドロスⅢがどうしてこうなったかを訝しむ。何故、あそこまで外せるのか。

 今のサバジオスは正真正銘の人間であり、MCSにも認識されているはずだ。

 そして二分後、ようやく一つの結論に辿り着いた。


「MCSは人間の能力を拡張するもの。そも、その能力が拡張するほどなければ?」


 アレクサンドロスⅢこそは完璧な人間パーフェクトヒューマン。数万もの惑星アシアの人命を利用して成功した、唯一完全なる成功例。

 MCSに人間であると認識された、人でありバルバロイである存在だ。


「オルフェウスの乗り手は拡張するほどの能力もないということか」


 サイボーグとして冷静に結論を把握する。

 レバーを握り住める手はアルコール中毒のために震えている。人間になってから訓練など一度もしたことはないだろう。

 照準に標的を捕捉して撃つ。そんなことはほとんどやったことがないのだ。やったことがない操作をMCSが拡張できるはずもない。

 その点でいえば半神半人の肉体は身体能力が高い人間が選ばれている。


「アナザーレベル・シルエットとはいえ、乗りこなす人間が極めて無能――訂正だ。著しく能力が低い場合、真価を発揮することは不可能ということか」


 口は出すが実務能力が皆無で、威張り散らす支配者など不要だろう。

 アレクサンドロスⅢはこの戦闘を乗り切ったのち、放蕩生活を送るようならサバジオスを殺したほうがいいかもしれないとさえ考える。


「このアレクサンドロスⅢ直属の部隊はバルバロイのなかでも精鋭。テウタテスも他の機体とは比較にならん」


 アレクサンドロスⅢ直下の精鋭は四機。

 かろうじて残った惑星間戦争時代の技術を駆使して作り出したテウタテス。バルバロイのエースしか搭乗できない特殊なテウタテスがある。

 そのテウタテスは一目でわかる外観をしている。腕が六本。いわゆる六臂の姿をしている。六本腕のテウタテスを使いこなすことはバルバロイでも困難だ。


「負けるとは思えぬ。しかし勝てる未来も演算できぬな」


 アレクサンドロスⅢという完全限定名を得てから、はじめて漏らす弱音だった。


いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


テウタテスは強力です。闘技場では真価を発揮できない理由が、部隊による連動です。

タイトルを「超個体」にしようかと思ったのですが「超固体」回があるので諦めました。


コウの戦術は数で押し切る、力技です。対策もより相手よりも判定の強い技を使えという常道ではあるけれど策といえるものではありません。そも削り殺しによる判定勝ち狙いのような考え方です。

待ちガ○ルはもはや死語。

テウタテスはMCSではなく、七感のようなものもありません。拡張した人間知覚と正確無比な機械との対決でもあるのです。


一方アレクサンドロスⅢは組織的に窮地です。

担ぎ上げた神輿が予想以上に使い物にならなくなったからです。牡牛の中にいた時はましだったのですが、知能も知識もすべて今の中年男性の肉体基準。

エイムすら、射的をしたことが一度もない素人なら当然できません。もしくは才覚次第でしょう。

ネメシスの人化処理は一切の才覚を与えておらず、もはや呪いです。

そしてテウタテスにも当然エース機があります。アレクサンドロスⅢはエース機出撃するほどに押されるとは想定外で、少し弱きになりつつあります。


というわけで現在東京のはずです! また書けるようなことがあれば活動報告や後書きで記載しますね!


応援よろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
神輿は軽いほうが良いとは言いますが、軽すぎて明後日の方向に飛んでいっては廃棄するしかありませんな。 戦場で後ろ弾がありそう。
進化は真価の誤字かな? もう戦局としては終盤に入ってるんですよね。 ここまで来ると劣勢覆すの無理かな。 サバジオスはアナザーレベルシルエット乗せておく価値すら既にないのね。 文字通り飾りになってる…
一撃でなく飽和攻撃。処理落ちさせるためのDDoS攻撃みたいなものか。 エース機は六本腕!? 動かせるのは凄いけど、処理負荷も高いような… それだけ腕に処理を割くと、脚はどうか。泥濘はもう乾いてたでしょ…
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