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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
南極決戦

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飛ばして落とす

 コウは作戦が開始する前の会議を思い出す。

 円卓軍には事前にコウから説明があった。隣にはヴォイがいる。

 小さな会議室には、パイロットが集まっている。兵衛やブルーの姿もあった。 

 

「敵の最大戦力はテウタテスだ。こいつ一機に俺やヒョウエさん、凄腕の傭兵の三人がかりでようやく勝てたという強さを誇る」


 実際の地下闘技場〔パライストラ〕で戦った映像を流す。


「シルエットに似た兵器ではあるが、シルエットではない。四本腕に暗器じみた近接内蔵兵装。そして何よりもこちらの動きを読んだ反則レベルの超反応とそれを可能にする運動性能に加え、装甲はアンティークシルエット同様、惑星間戦争時代の水準で製造されている。南極攻略戦でも多くの死傷者をだした」


 真剣に画像を見入るパイロットたち。


「こちらの僅かな動きさえ見落とさない。シルエットの予備動作を読むんだ。剣術でいえば()かりの動作全てに反応してくる。俺達は拍子も調子もない、いわば無拍子で対抗したが戦場では厳しいだろう」


 南極戦での戦闘場面に切り替わる。永遠の日(エターナルファイア)を使ってかろうじてテウタテスを退けるラニウスAの姿が映し出される。


「エターナルファイアを使って、ようやく立ち向かえるレベルの強敵だ。しかしのテウタテスにも弱点はある。――超反応だ」

「超反応が弱点に?」


 ヤスユキがみんなを代表して質問する。


「懸かりで反応するなら誘いも可能だ。相手は大昔のクソゲーさながらだ。というわけで大昔のクソゲーを見て貰ったほうが早い」


 ヴァイはモニタにエメのために作ったPC端末を接続する。


 ヒストリーウォリアーというドット絵で書かれた古くさいゲーム画面が登場する。


「これは俺の先輩である修司さんととよく遊んだレトロゲームなんだが……」

「修司だと?」


 思わぬ所で孫の名がでて、驚くヒョウエが立ち上がる。


「ええ。あとでヒョウエさんには詳しく話します」

「話の腰を折ってすまねえ。頼むわ」


 椅子に座り、コウが話を続ける。


「いきなりラスボス戦だが、とりあえず見てくれ」

「コウ。お前がやれ。俺、このゲーム弱いんだ」

「仕方ないな……」


 ヴォイにいわれ、コウは仕方なくキャラクター選択をする。

 三十六名に及ぶ歴史上の人物が並ぶ。ソクラテスなどギリシャのお馴染みのキャラから戦国武将、近代の格闘家。実に雑多な人選だった。

 コウは持ちキャラであるアシカガヨシテルを選択する。


「まずラスボスを倒す。みてわかる通り昔のゲームにありがちな技ではなく、こちらの入力したレバー入力に対して反応するアルゴリズムで理不尽なまでに強い。どうしても強いCPUを作れなかった時代の、インチキみたいなものだ」

 

 ラスボスはニーチェという思想家である。中ボスのマルクスのほうが強いともっぱらの噂だ。

 コウはさくっとラスボスを倒すと、神は死んだァ! と絶叫しながら第二形態に変身する。


「真のラスボス。ニーチェ・ディオニソスだ。これがクソ強い」


 コウの使うヨシテルがあっという間に一本取られる。


「普通に戦ったらこんなものだ。二本目から超反応の例を示す」


 キャラクターを操作し、後退するヨシテル。小パンチを一回押すだけで、ニーチェが凶悪な必殺技を繰り出す。


「これが超反応か……」


 格闘ゲーム経験者のパイロットが思わず口にだした。コウがいいたいことを理解したのだ。

 このゲームはマイナーメーカーのゲームなので、プレイヤーは殆どいなかった。


「超反応はパターンではめるしかない。動作は限られるからそのパターンを読んで有効な技で攻撃する。このニーチェ・ディオニソスの超必殺技の[永劫回帰]は即死級の威力を誇り、飛び道具の[力への意志]は相手の飛び道具を消滅させてガードを固めていると削り殺される」


 小パンチを行うコウのヨシテル。ニーチェが襲い掛かるが、バックダッシュしながら空中で上昇系無敵必殺技を使い迎撃する。小パンチの連打はパターンが狂うので連打は禁忌だ。

 この作業を繰り返し、ようやく一ゲージ削って一本を取る。 


「こんな感じだ。テウタテスはこのゲームに匹敵するクソゲーCPUなんだ。このゲームはあとでみんなに配布する。理不尽を実感して欲しい」

「待ってくれ。空中の上昇系無敵技がないキャラは詰んでいるのでは?」


 格闘ゲームの腕に覚えがあるパイロットが質問する。


「ご明察。上昇系無敵技がない場合、吸い込み判定の広い空中投げを持っているヤコブかマエダ・ミツヨ、喰らい投げが可能なライデン・タメエモンぐらいしか対抗できない」

「クソゲーすぎるな……」

「CPU戦はクソゲーだ。大手有名ゲーム雑誌のクロスレビューで5567という点からもわかる」


 コウはコントローラーを置いて壇上に戻る。


「テウタテスは連携プレーでハメ殺すしかない。四本腕があり、動作も機敏でとにかく隙がない。装甲材は惑星間戦争時代のものでアンティークシルエットよりも厚い。単純に強い」

「ハメ殺せなければ即死なんだな」


 ゲーマー世代が多い転移者には通用したようだ。惑星アシア生まれの人間にはこのクソゲーを味わってもらうしかない。


「聖域から報酬としてもらったテウタテスをもとにシミュレーターでは模擬戦できるよう、アテナのエメとアストライアが対テウタテスの仮想敵シミュレーションを提供してくれているから、各パイロットは攻略法を探して欲しい」

「ところでコウ。修司はいったいどのキャラを使ってたんだ?」

「これです。主人公キャラのカツ・コキチのライバル、チバ・シュウサクです」


 幕末志士風のキャラクターをコウが示す。


「おう。わかった。俺も触ってみるか」


 こうしてトライレームパイロットたちの対タウタテス戦対策が始まった。

 ゲームもシミュレーターもあまりのクソゲーに、辟易した様子を隠そうともせず、しばらくは対策会議という名の愚痴会が定期的に開催されるようになった。

 やがてヒョウエやコウを見る目が畏怖が帯びるようになっていったという。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 円卓軍が接近する。構成機体はラニウスが多いが、他メーカーのシルエットもある。

 テウタテス部隊との交戦に突入したのだ。


「あなたがたとはやり合ってみたかったんですよね!」


 気合いを入れるクルト。フラフナグズの限界を試すにはちょうどいい機会だ。

 敵のブレードとグラムがかち合い、別方面から斬撃が飛んでくる。

 裏拳ではたきおとすが、残り二本の腕から仕込まれた刃がフラグナグズを襲う。

 間一髪のところで、テウタテスの腕部が斬り飛ばされた。支援に入ったラニウスのパイロットがいたのだ。


「ボールス王! こいつ、やっぱり人間の反射神経では厳しいですよ! 本気のクソゲーです!」


 極力役名で呼ぶ指示がでている円卓軍のパイロットが、クルトに呼びかける。


「そうですね。噂に違わぬクソゲーっぷりです」

 

 コウのせいで理不尽な難易度を示すクソゲーという言葉が定着した。


「私を入れて三人でテウタテスが一機がようやく。装甲もアンティーク・シルエットより厚い。しかし動きが直線的ですね。パイロットがサイボーグになってようやくフェンネルの優位性を補えるようですね」


 パイロットの行いたい動きを読むフェンネルOSと違い、テウタテスはすべて手動だ。人間の手が補えるものではない。


「超反応とわかっているのに、パワーとスピードが圧倒的です。単純に強いという厄介な兵器です」


 フラフナグズは剣を振り下ろそうとする瞬間、突きに動きが変わる。

 たとえ装甲材は硬くとも、フラフナグズの圧倒的な装甲筋肉の前では無力だ。


「――フラフナグズツヴァイの斬撃には対応できないようです」

 

 剣の軌道を変える。振り下ろしたほうが早いに決まっているが、フラフナグズの百本もの装甲筋肉は不可能を可能にする。

 同様の軌跡を描く機体はラニウス上位機のデトネーションアクチュエイターのみ。


「エウロパの兵器にも通じることがわかりました。ランスロット、あなたの機体はどうでしょうか?」


 構築技士として悪戯心が沸いたクルトが、一人で特攻しているランスロットことヴァーシャに呼びかける。


「私のボガティーリ・ヴォルガは装甲筋肉を重視している。――恥を忍んで告白しよう。テウタテスは難敵だ」


 同じ円卓軍としてラニウス部隊がフォローに入っている。

 助けられたことを己の恥だと思っていたヴァーシャだったが、考え直す。傲慢であろう、と。

 コウ、ヒョウエ、バルトたち三人の死闘を思い出したのだ。


「己の機体がどこまでこいつらに通じるか、楽しみで仕方がない」

「同意しましょう」

「二人とも! テストしている暇はありませんからね!」


 円卓軍のバズヴ・カタツヴァイが暢気な二人に注意を促す。


「まったくだ。舐めてかかると即死する。ヘルメス様に感謝だ。バルドを叱り飛ばすところだった」


 ヴァーシャとて気が抜けない相手だ。バルドへの評価を見直す。彼はむしろよくやったほうだろう。

 ヘルメスの助言は的確だ。部下の実力を見抜けない無能な上司になるところだったところを救われた形だ。

 それでもこれほど貴重な実戦データを得る機会はそうないはずだ。


「しかしこれほどの戦力でも厳しいとは、な」


 ラニウスのパイロットが漏らす。決して押しているとはいえない趨勢だった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


架空の格闘ゲーです。モデルは色々ですがワー○ー2が一番影響を受けています。筆者は空中無敵技が苦手だったので空中投げでボスを倒しました。

以前ゲーム世界転生で間違って格闘ゲーム世界へ転生してしまったネタを書いたのですが一発ネタの大喜利にしかならなかったので断念。その名残です。

この架空ゲーの対戦ダイヤグラム一位はマルクスです。いつか書きたいなあとは思います。


・シルエットは内蔵兵器禁止ですが、テウタテスはありです。ep457と458あたりです。

・トライレームはテウタテスを入手しています。ep462に事前交渉あり。

 トライレームもテウタテス対策は進めてはいましたが、惑星アシアにもういるとは予想していませんでした。

・兵衛は一刀流の系譜。修司と婚約者は北辰一刀流です。


ヴァーシャも理論と実践は違うと改めて認識したようです。

トライレームパイロットはシミュレーションを重ねているので難敵は承知。知っていたとして対処できるかは別の問題です。


来週更新分2/7は取材のため自動更新20:00です! 珍しく二泊するので連絡などは日曜になるかもしれません。ホテルのWi-Fi環境次第ですね!再び市ヶ谷へ。

今回は千葉拠点です! いつもの秋葉原はグラボ争奪戦で戦場ときいて避けました。

一太郎環境のために4070tiにしていたので5000シリーズはパスです。一太郎のためです。重いんですよ! 

今でも10万字一括変換やら校正かけるとフリーズします。メインメモリも32あるのですが。

4070tiはAI生成しようにもビデオメモリ12Gしかないので不向きです!


応援よろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
ダイアグラム更新をするのだ、ポ◯ター! やれ実物の入手解析が出来てなかったら反攻作戦さえも悲惨な未来になるところでした。 なんか専用機が軒並みアップデートされてるようですし、事前練習してればハメられる…
レトロゲームをサルベージしたのか1から作ったのか、クソゲーまで再現するとは、どちらにせよ凄い労力かかってますね。
でも超反応系CPUは特定の行動に反応して決まった技出してくるしね 辛い上に楽しくないけど倒しやすいとは言える
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