円卓の騎士出陣
2025/05/09 コウのセリフに矛盾があったため修正。幻想兵器アーサーの正体はネメシスが作り出した空間内で明らかになったのでコウは知りませんでした。
五番機は円卓に手を置く。
置物の中にいるマーリンと会話するためだった。
「これは我が君。ご機嫌麗しゅうございます」
魔術師の姿をしたアベルが笑う。杖を担いだ姿が様になっている。
「はは。ところでアレクサンドロスⅢの配役はあるのか?」
「むろんでございますとも! かのルキウス・ティベリウスにはレオという武将がいました。アレクサンドロスⅢにはレオという配役を与えましょう」
「逸話はあるのか?」
「いいえ。ありません。レオは単に名前だけ。ジェフリー・マンモスの書にもどのような武将だったかも記載されておりません。――ただし!」
マーリンが悪戯っぽく笑う。
「レオにはモデルがいます。実在のローマ皇帝レオ一世です。かの者はマケドニアのアレクサンドロス三世が支配したトラキアの地出身。かつてバルバロイと呼ばれたトラキア族とイサウリア族という異民族が主体のレオ朝の人物なのです」
「バルバロイの皇帝。それでレオか。わかった」
五番機は円卓を離れ、コウはMCSの中から円卓軍に向けて檄を飛ばす。
「レイラプスとタロスは計画通り倒された。汝ら円卓の騎士でアレクサンドロスⅢを倒してみせろ! これよりヤツの名は――ルキウス・ティベリウスの配下レオとする」
コウの五番機はサバジオス攻略のためパンジャンドラム【円卓】とともに待機する。
「おう!」
円卓のパイロットたちがコックピットの中で応じる。
「アーサー王直参。円卓の騎士十一名。出陣せよ!」
十一機のシルエットが甲板に並び立つ。
ランスロットが欠けたので急遽円卓軍の中から一人追加された。
「ガウェイン! 出る! レオの首を獲るぞ!」
太陽がでていると三倍の強さになる、原典唯一のアーサー王円卓の騎士ガウェイン。
ガウェインにはラニウスCblock3のリーダー格である吉川常頼が選ばれた。ツネヨリは鹿島新当流の遣い手であり、つかみ所がなく飄々とした性格をしている。
彼は円卓の騎士隊隊長にも任命された。
「ケイ、出撃する!」
アーサー王からすると義理の兄にあたるケイに選ばれたパイロットはコウの兄貴分である黒瀬泰之だ。
プレイアデス隊を率いるヤスユキだが、今作戦ではラニウスCblock3に機種転換している。
「パーシヴァル! いくぜいくぜいくぜ!」
聖杯探索を成し遂げた円卓の騎士パーシヴァルには野太刀自顕流の剣士東大和。
ヤマトは豪快な太刀筋で敵に特攻する。
「トリスタン。でます!」
二人のイソルデという女性との恋で有名な円卓の騎士トリスタンには、影武者部隊の射撃担当だったネレイスの少女イラーラが選ばれた。
「ガレス! 征くぞ!」
「美しい手のガレス」で知られるガレスには、ユートンが指名された。
円卓はラニウス系統とボガティーリ系統が中心だが、彼女の機体は当然、天馬。コウとジャリンがさらなる調整を行い、仕上げた。
「ベレアス。出る」
湖の乙女に愛された円卓の騎士ベレアスにはアノモスが選ばれた。
「ペリノア。発進する」
かのエクスカリバーを折ったベリノア王には、ジェイミーがついた。
彼は愛機であるラニウスCⅡAに搭乗している。
「久しぶりの実戦ですねえ。ユーウェイン、いきますよー」
獅子を連れた円卓の騎士ユーウェインにはフユキが選ばれた。機体は最新の戦闘工兵機レヴァイランティに搭乗する。
P336要塞エリアは馬上槍の名手ラモラックとして配役されたパルムに託された。
「うちのランスロットが迷惑をかけた。このボクが補うとしよう。モルドレッド、出る!」
アーサー王の甥であり、死因となったモルドレッドはドリオスことヘルメスである。乗機はボガティーリなので、ラニウス系と互換性もある。
ドリオスの正体は一部の者しかしらない。
「悪役なら一安心だ。誉れ高き騎士なんてご免だぜ。アグラヴェイン、いくぜ」
拷問や奸計に優れた役回りを押しつけられるアグラヴェインにはバルドが選ばれた。誇り高き騎士よりは悪役のほうがましだと本人は思っている。
「えと。はい。ガラハッド、でます!」
聖杯探索を成し遂げ、呪われた十二番目の席に座る円卓騎士。もっとも崇高な聖杯騎士にはフラックが選ばれた。
フラックはレヴァイランティではなく、ラニウスCblock3を戦闘工兵方面にフォーカスした機体に搭乗している。コウが念入りに調整した機体だ。
コウは五番機のMCS内でドリオスからの個別通信が鳴っていることに気付き、応答した。
「モルドレッド。どうした?」
「珍しいね。少年の整備兵を最前線に出すなんて。君――アーサー王らしくもない。何か理由があるのかなと思ってさ」
モルドレッドことヘルメスは疑問に思った。
コウの性格なら少年整備兵を何故危険な円卓直属にしたのか、確認したいようだ。
「ああ。それか。伝えることを忘れていたよ。モルドレッド。お前にも関係あるからな」
「へえ?」
「ガラハッドを侮らないほうががいい。戦闘工兵の技術をユーウェインから、射撃をベルフィーベから、剣術を俺やウーサー王から学んでいる。なんでもありの殺し合いなら俺でも危うい」
ウーサー王役は鷹羽兵衛である。
「それは面白い人材だ!」
「ガラハッドを死ぬ気で守ってくれよ。彼に何かあるとお前の本体が危うい」
コウが悪戯っぽく笑う。
これはいつもしてやられる意趣返しに近いかもしれない。
「ボクの本体とはただごとではないね?」
コウの意味ありげな発言にヘルメスが食いついた。
「彼は二機種ものアナザーレベル・シルエットに搭乗している。俺だって一度も搭乗したことはないぞ」
「は?」
「搭乗した機種は接近戦のアナザーレベルシルエットと砲撃機であるナウシカアだ。俺よりモルドレッドのほうがよく知っているだろう?」
「……本当の話かい? 接近機はよくわからないが砲撃機ナウシカアの名が出るなら嘘ではないな」
ヘルメスも砲撃機ナウシカアの名など久しぶりに聞いた。
アナザーレベル・シルエットの中でも特殊な機体で、後年生まれたアストライアたちにも馴染みが薄いはずだ。
「幻想兵器と化したアナザーレベル・シルエットに選ばれた人間だ。聖杯探索を成し遂げた、無垢の聖騎士ガラハッドはフラックが適役と判断した」
「だろうね! そんな人間がいるなんて思いもよらなかったよ!」
「もう一つ。彼は惑星リュビアで、モルドレッドが苦手とするソピアーの息子。ネメシス星系の暴力装置と親友だ。疑うなよ。疑うと彼はコンタクトを取ってくるぞ」
ネメシス星系の超AIは存在が疑われると登場したがる。プロメテウスしかりテュポーンしかりだ。
テュポーンの名を直接いわなかったことは武士の情けだ。
「待て!」
血相を変えたヘルメスが慌ててコウを止める。
「俺なんかよりよほど大物だ。彼に口実を与えたくないなら、死ぬ気で守ってくれ。任せたぞモルドレッド」
「嫌がらせか! 第一だな! そんな重要な少年を最前線に送るなよ!」
暢気なコウにヘルメスは本気で怒鳴っている。
ヘルメスのいうことももっともだ。コウは必死に言い訳を考える。
「ランスロットが暴走しなければウーサー王配下で運用したんだよ。円卓は十一人いるからな」
「嘘をつけ! 十二番目の騎士はガラハッド以外死ぬからな! 補充は他の円卓だろう!」
コウのブラフを即座に看過するヘルメス。
さすがは謀略の神を模しているとコウが感心する。アストライアやアテナのエメが聞いたら説教コース間違いなしだろう。
「ばれたか。ま、そういうことだ。ガラハッドを務まるヤツはそういないとはマーリンの弁だ。俺もそう思う」
「またあの夢魔の仕業かい? もはや悪魔の領域だろあいつ。 わかったさ! 君以上の大物がいるとしれただけでこの作戦に参加した甲斐があったよ!」
そういって通信を遮断するヘルメス。
マーリンにしてやられた気分だった。
「脅かしすぎたか」
「事実だし?」
五番機のMCSのパネルに姿を見せるアリマの姿があった。
これだからテュポーンは油断がならないと思うコウだった。
一方ヘルメスはバルドに急いで連絡を入れる。
「バルド。あのガラハッド少年が倒されるとボクが物理的に死ぬ。死ぬ気で守ってくれ」
「いきなりどうしたんですかい。えーとモルドレッド」
「すまなかったアグラヴェイン。彼はおそらくアシアの騎士以上の大物だ」
ヘルメスは演技を素で忘れるほど動揺している。
「まじですかい!」
「彼は君も戦ったアナザーレベル・シルエット。あの神代兵器二機種の操縦経験があるそうだ。アーサー王がいうのだから嘘ではないし、そんな嘘をつくメリットもない」
「げぇ……」
気弱そうな少年に見えたが、そうではなかったらしい。
「わかりました。ランスロットにはどう伝えます? やっこさん、通信を遮断してやがりますぜ」
「接近して伝えよう。頼む」
いつになく必死なヘルメスに、頷くしかないバルドだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
アテナのエメが指揮を執る。
「先行している王城工業集団公司やアトゥ・グループを援護してください。敵は前線を下げたテウタテスとファイティングマシンのライラプスです」
アストライアとアサヒから、円卓軍と称された精鋭部隊が出撃する。
ラニウスやフッケバイン系統で構成された軍だ。
「円卓軍。出撃!」
先頭を駆けるフラフナグズとラニウスCblock3。
「ウーサー。出るぜ!」
ヒョウエは円卓の騎士などよくしらないが、配役名で名乗りを上げる。ウーサー王はアーサー王の父親だ。
アレクサンドロスⅢ討伐は他の者に譲ったが、対テウタテス攻略部隊の座は譲らなかった。
「ボールス。でます」
フラフナグズのクルトも同様に、出撃を望んだ。役柄はボールス王という。
ガリアの王であるボールスの息子に円卓の騎士ライオネルや同名のボールス卿がいる。
「よく聞きやがれ! テウタテスはこちらの動きを見てからの超反応だ! それを踏まえて戦え!」
テウタテスと実際に戦ったヒョウエが、円卓軍に警告した。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
アレクサンドロスⅢも配役が指定されました。
・レオ
ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』に登場する将軍。単なるレオのみで戦闘描写などもとくになし。
歴史上のレオ一世はレオ大帝とも呼ばれ、東ローマ帝国レオ朝の初代です。後期ラテン語ではなくコイネーギリシャ語を法制化した人物です。
西ローマ帝国に介入や征服をしようとももしていたのですが、失敗。西ローマと東ローマ共同で北アフリカのヴァンダル族と戦争をして敗北。とにかく戦争と政争、フン族襲来と重なり混乱していた時代です。
レオ一世が交渉して和平となりましたが多額の借金を支払うことになりました。功罪相半ばする半ばする人物ですね。
東方正教会では聖人指定です。
・円卓
一部影武者部隊がネームド昇格。フユキ戦闘参加。
ガラハッド君はアーサーとナウシカアに搭乗した経験のあるフラック少年。アリマ少年の友人として初登場なので、何かあるとテュポーンがキレます。
ヘルメスマジギレ案件です。
ちなみにいなくなったランスロットの正式な補充要員はペリノア役のジェイミーです。
円卓の騎士直属部隊とは別に、円卓軍も結成されています。
数百名いるらしいので仕方ないですね! クルトと兵衛が推参しました。
兵衛はアーサーの父役ウーサー、ガリアの王ボールス王役にはクルトが指定されました。円卓の騎士はサー・ボールス(卿)になります。
コウ、兵衛、バルドの三人がかりでようやく倒したテウタテスと衝突。レオ将軍まで簡単には到着できません。
応援よろしくお願いします!




