【構築技士は元技術者が大半。軍属はいたが軍人はいない。】
大変申し訳ありません。別作品の話を誤投稿しました。心よりお詫び申し上げます。
再発防止に注意します。
ジョセフ・クライマーはE級構築技士。そしてアルゴアーミー総司令官である。
何故このような立場になったのか。数奇な運命としかいいようがない。
米国生まれの彼は米陸レンジャー部隊を退役後、義勇兵としてとある戦争に参加。大型ミサイルの爆心地にいて跡形もなく吹き飛んだはずだったが、気付いたら惑星アシアにいた。それが二年前だ。
転移前も傭兵だった彼は隙をみて、ストーンズ側の勢力に移ったのだ。戦闘好きな彼にとっては幸いにして、常に最前線に放り込まれるからだ。
きっかけはフットボールだった。数少ない転移者たちとフットボールで遊んでいた。ボール一つで遊べるので、人数合わせもしやすい。
そんなとき、飛び入りで参加した青年と意気投合した。アシア人とは思えないほどフットボールの吸収も早く、飲み友達になっていた。
幸いか不幸か。彼は戦術にも一家言あった。
あの青年と飲む機会が再びあり、アシア大戦の分析などを話したところ、実に数多くの質問をぶつけられた。酒は奢りということで、また自らの経験を語る機会が少なかった彼は柄にもなく饒舌となり、詳細に話した。
青年も奥ゆかしく、自慢と受け取らず授業を受けるような態度だったことも好印象だった。
後日ヴァーシャが彼の元に現れ、直接アルゴナウタイ幹部への辞令を下したときは顎が外れそうになった。あの青年はストーンズの神そのもののような存在だったらしい。
名をヘルメス。かの超AIだ。
「ヘルメス様からの招聘だ。是非きて欲しい」
ヴァーシャはそういったが、断れるはずもなかった。
再会したヘルメスは彼にこう質問を発した。
「J582要塞エリアだ。ここは超AIアシアが封印されていて、トライレームが大挙して押し寄せてくる可能性が高い。それでも引き受けてくれるかい?」
「望むところです。ヘルメス様」
「ダメだジョセフ。そんな言葉遣いは許さない。ぼくたちはフットボールのチームメイトだろう? いつも通りに話してくれ」
困惑するジョセフ。ヴァーシャを見たが深く頷いた。どうやらそういう性格らしい。
「わかったヘルメス。思う通りに指揮していいんならむしろ待ち望んでいた環境だ。ただ兵器を融通して欲しい。負けるにしても、一矢報いたいんでね」
「欲しい兵器はヴァーシャかアルベルトに言えばいい。何が欲しいかな?」
「修理もできないアンティークは不要だ。J582要塞エリアなら自前で大部分が調達可能だろ? シルエットは重装備のものを。クソ硬い戦車と火力がある榴弾砲。高次元投射装甲をぶち抜く対空砲。宇宙艦にダメージを与える有線の巨大ミサイルとレールガンも欲しい。戦闘機はあるに越したことはないが、シェルター内で籠城するなら数は要らない」
「ずいぶん具体的だね」
「アシア大戦で敵が用いた兵器で、欲しいものを挙げた。パイロクロアの要塞エリアを落とすなら、宇宙艦を活用するはずだ」
ヴァーシャが薄く微笑み、アルベルトは新型戦車の開発を決意する。
「どうだい? これがボクが見つけた人材だよ。ヴァーシャ」
「さすがはヘルメス様。慧眼としかいいようがありません」
「ところでジョセフ。音楽に興味はないかな?」
「地球でならドラムなら多少触ったことがあるが、転移してからは見たことがねえ」
「決まりだ! ドラムはすぐに用意しよう!」
音楽被害担当が決まったと内心ヴァーシャは安堵する。ギターやベースは見つかるが、ドラム経験者はアルゴナウタイのなかでも貴重だ。
ジョセフには協力は惜しまないと誓っていた。
「ボクのドラムを死なせないように。ただでさえ貴重な人材なんだ! アルベルトもだ。とびっきりの重戦車を作りたまえ」
これで予算は使いたい放題だとアルベルトも小躍りした。
「君はアルゴアーミーのパイロクロア大陸総司令官だが、好きにやりたまえ。建国したいならそれでいい」
「いいんですかい?」
建国まで許されるとは思わなかったジョセフが目を見開いた。
「ストーンズ側につけとはいわない。ボクにつくならね」
「ありがてえこっだ」
ジョセフも今では青年には心酔している。裏切ることなど考えたことはない。
今回の戦争もそうだ。
「トライレームが攻めてくる。君のことだから戦いたがるだろうが、逃げてもいいよ」
「全力で殴り合いできる機会を奪わないでくれ」
「そういうと思ったよ。生き残ってくれ。死んだらバトルもできないからね」
「おっと。ドラムの地位を明け渡すつもりはありませんぜ。一介のレンジャーがどれだけやれるか、あいつらに見せてやりますよ。それにだな。ヘルメス。あんたも忘れていることがある。そこのヴァーシャは例外だがね」
「ん? なんだい?」
「アシア救出には構築技士資格が必要だ。構築技士は元技術者が大半さ。軍属はいたが軍人はいない。技術者連中が戦い慣れしているわけじゃねえ。指揮経験があるってヤツがどれほどいるんだ。アルゴナウタイにもいえるがな」
軍人と軍属の違い。それは軍務に従事するか否かである。兵士や救護兵まで軍務を遂行する者が軍人だ。しかし軍属は軍務とは関係なく軍隊関連の職務をこなす者全般を示す。兵器設計者から基地内の売店店員、清掃業者まで多岐にわたる。
ジョセフもA級構築技士五人は知っている。二名ほど剣士はいるが趣味が講じて、転移後から最前線にいた結果だ。転移前に戦争経験や兵卒上がりはいない。ましてや部隊の指揮経験者などは皆無だ。
軍人であったヴァーシャなど例外中の例外だろう。
「頼もしい。ヴァーシャ。アルベルト。コメントは?」
いたく満足げなヘルメス。
「その通りだ。ジョセフ。実戦経験のある指揮官不足は我々も痛感している。半神半人どもは頭が固すぎて使いものにならん」
「君の言う通りだ。構築技士に過ぎない私がメガレウスを指揮して、轟沈させてしまった。軍人ならやりようがあっただろう」
「トライレームではそうだな。アシアの騎士は別格だろ? 場にいるだけで士気があがる。たまにいるんだ。そういうヤツはさ」
「異論はないな」
「トライレームで軍人といえる者はメタルアイリスのバリー。あいつはとびっきり優秀な指揮官だ。宇宙で初戦闘したロバート。隊長のジェニーとサイレントボマーフユキ。そして元ストームハウンド隊長ファミリアのリック。しかしこのメンバーがパイロクロアの主戦場にでるかは疑問だね」
ジョセフは傲慢な嘲笑を浮かべた。
「とくにフユキがでてきたらレンジャー出身の俺でもやべえ。戦闘工兵なんて化け物揃いだからな。しかしアシア救出には構築技士が必要だろう? まずフユキは出てこない。P336要塞エリアの守りじゃねえかな。攻めてくるとなると構築技士が運営している企業軍が主体とみた。ならあとは弾数と兵器が重要だ」
「アシアの騎士がきたらどうする?」
「どうもこうもねえよ。出来れば捕らえて、不可能なら殺すしかないな。しかしアシアの騎士が向かうならパイロクロアではなく、アレオパゴス評議会のA009要塞エリアだと踏んでいる」
「同感だ。あの場所こそがストーンズ勢力の総本山だからな」
ヴァーシャと同等の読みをしているジョセフ。
「俺ァ奴らに本職ってヤツを見せてやりてえのさ。ヘルメス。あんたにゃ悪いが暴れさせてもらうぜ。損耗率なんてつまらねえことは言うなよ。肥料候補だった奴らだって上手く使いこなしてみせらあ」
「頼もしい。ボクからの命令はただ一つ。存分に戦争を楽しみたまえ!」
最高の命令だっった。
そして彼は今、最高司令官としてシルエットのMCSにいる。
「宇宙艦一隻とは舐めた真似をしてくれるな。てっきり護衛船団方式かと思ったぜ。アシアがいるこの場所に、お前達は必ず来る。だから兵器を山ほど作って待機していたんだ。一泡吹かしてやる」
彼に与えられた機体はドラチェン。喧嘩屋という意味を持つ、ボガディーリ系統に属する機体だ。軍隊格闘技経験者のジョセフにとっては申し分のない機体である。
「旧型の戦車エーバーⅠとⅡを計五百輌。新型戦車レーヴェⅠが三百輌。こいつはJ582要塞エリアの資源を注いで量産した。超重戦車ビサマラッテはシルエット用の動くトーチカだ。対艦も想定はしているが、宇宙艦相手にはちと心元ないとはいえ、砲撃卿の力作だ。期待しているぜ」
前線を支える戦車が必要と考えたジョセフは、ありったけの戦車を用意したのだ。
「対空型シルエットは千機ちょい。まだまだ足りねえが、仕方ない。アベレーション系統も活用しての防衛網だ。戦車は定石。シルエットは奇策。トライレーム相手には両方併用するしかないだろう」
ウーティスの救出宣言から布告から防衛網まで二十分たらず。常に備えは怠っていなかった。彼は軍人なのだ。
「兵器の質は向こうが上。ならとにかく数を用意するしかねえ。ありったけの余剰兵器をヘルメスが回してくれた。パイロットは人買いや人攫い紛いまでして掻き集めたが、その甲斐はあったってもんよ」
パイロクロア大陸全土から人員は集めた。グライゼンや協力勢力に要請して敵対する防衛ドームを殲滅しては、その人員たちを配置させた。
シルエットを戦闘で喪失した傭兵や、人買いも使った。以前よりましな境遇なら不満も抑えられるのだ。
「防衛ってのは我慢なんだ。とくにゲリラ戦はな。封印区画の連中は我慢してくれよ」
「あなたとはチームメイトです。信じますよ」
「フットボールも我慢が大事だよな」
ヘルメスに心酔している半神半人たちもいる。彼らは変わり者で、競技や遊び嫌いな半神半人でも肉体を得たことによって嗜好が変わり、ジョセフともフットボールで交流している仲だ。文句もいわずにジョセフの配下になってくれた。
彼らは合計五機。アンティーク・シルエットに搭乗して封印区画に待機している。転移者の司令官に対してアルゴナウタイでは破格の戦力だ。
「おい。グライゼン連中やアルゴナウタイ側の勢力に通達はしたか?」
「通達しております。戦闘に貢献したものは、評価に応じた賞金と採掘利権の分配です」
「要塞エリアが落ちたら何にもならねえ。やれるもんは全部撒いてやれ。いざとなったら奪い返せばいいからな」
一時の夢ぐらい見させてやってもいいだろう。もし必要になった場合は奪い返すまでだとジョセフは嗤う。
「トライレーム。制空権はくれてやる。地上ではどんな戦術を使う? 俺は待ちくたびれてパイロクロア大陸を火の海にしちまうところだったんだぜ」
愉悦を隠さない生粋の戦争狂。それがジョセフだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「対艦ミサイル。すべては防ぎきれません。可変機は敵防衛網の排除を」
ヒヨウの装甲は強固だが、1キロを超える大型宇宙艦。回避には向かない。アイギスがなければ、被害はさらに大きかったであろう。
敵の超重戦車は口径800ミリのレールガンランチャーを備えた対艦仕様。
周囲の主力戦車は走行と火力のバランスをさらに上昇させた新型だった。
「アルゴアーミーも防衛ドームからまとまった数の援軍もきていますね。人を釣ることが上手いのだろう」
「転移者で間違いないでしょう。半神半人にそんな駆け引きはできないですから」
「要塞エリア制圧が目的ではないにしろ、この相手は危険だ」
「元兵士の転移者でしょう。私はこの場で敵指揮官を殺しておきたいですね」
クルトが冷徹な視線を要塞エリアに送る。アンティーク・シルエットに頼らない用兵。
現行の戦術に適応している指揮官なのだ。
「同感だ」
ヤスユキも敵指揮官を警戒している。主力戦車とシルエットの連携は厄介だ。
アサルトシルエットに対する戦術を確立しているアルゴナウタイなど遭遇したことがない。
「それでも我らはアシア救出さえできればいいんだ。シェルターを破壊して、封印区画にさえ入れば戦術上の優位はあまり意味を為さない」
「もう少しでグラウンドアンカーが発射できます。シェルターを破壊しましょう」
ジョーが提案する。工兵がシェルターに接近する時間はなさそうだ。
「シェルターを破壊したら、アンカーはすぐに切り離してくれ」
「了解です。ヒヨウ浮上せよ。防空網、さらなる強化を」
戦闘機編隊が集まり、長距離ミサイルの迎撃に専念する。
ヒヨウが浮上し再び高度を取る。
「座標指定完了。グラウンドアンカー装備。――うわッ」
ヒヨウがグラウンドアンカーを投下した瞬間、艦体に爆発が生じ、船尾から地面に衝突した。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
新年あけましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いします!
新年早々、別作品の話を誤投下してしまい、大変焦りました。皆様ご報告ありがとうございます。そして大変申し訳ございませんでした。
あやうくネメシス星系に中禅寺湖が爆誕するところでした。自動車業界ならナゼナゼ分析ものです。ネメシス星系に日光/栃木○ードはありません。多分。でもバハムートいるし琵琶湖は探せばあるのかもしれませんね。
今年もネメシス戦域の強襲巨兵を軸足に、余裕があれば他作品もどんどん書いていきたいと思います!
さて今回の敵は転移者です。奇縁あって、ヘルメスに拾われました。
レンジャーなのでゲリラ戦も得意です。戦闘狂はたくさんいましたが、戦争狂はあまりいませんでしたね。
前二章の出来事。パイロクロア大陸の戦乱。多くの防衛ドームが失われ、ブリタニオンの孤児たちオイコスが保護された理由。ストーンズ勢力であるグライゼンが戦力豊富な理由がここに繋がるのです。
本来ならパイロクロア戦記ともいうべき章が一本成立するかもしれませんね。
六番機のフラン。アルゴアーミーのジョセフ。あともう一組、戦乱の主役となるべき者が登場します。あと数話、お待ちください。
今年の抱負ですが、やはり再書籍化でしょうか。ただ現状厳しいようですし無理はしないようにするつもりです。
ラブコメもミルスミエスも完結が見えてきました。本筋のメカ物が執筆できないので、もう一本。好きなメカ物を書きたいですね。
誤投下のご報告ありがとうございました! 本年もよろしくお願いします! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
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