再び託されたもの
2023/12/23 少し飛び飛びになっていることを指摘受けたので、改め補足加筆しました。
ゾラから改修した六番機の説明を受けるフラン。
「コウさんから私に?」
「D級構築技士になったお祝いだそうです。五番機のお古なので気にせず使ってくださいとのことでした」
フランもまた純アシア人には珍しくD級構築技士資格をもつに至っていた。トライレームの構築技士資格検査で、新たに判明したのだ。
「そんな! 滅相もない!」
五番機。今のフランは知っている。惑星アシアの最先端を行く、変革の機体。
六番機はただの同ロットに過ぎないのに、コウはフランを気に掛けてくれた。
ただひたすらに恐縮するのみである。
「新しい六番機は装甲筋肉や交換可能な外装をすべて交換します。型番はTSWーR1C型block3ですね」
「C型!」
コウが頭上からアドバイスをくれたことは鮮明に覚えているフラン。
「コウさんがエメ提督を救出し、現在もその改良型であるblock3として活躍しています。六番機はC型block3改とでもいうべき機体になりますね」
フランは気が遠くなった。恐れ多いのだ。
とんでもない代物であることは明白である。
「block3改はblock3と同等の性能を持ち、爆轟駆動という機能に対応しています。操作は実戦で慣れてください。コウさんが六番機用に変更した特性は一点のみ。あなたの特性に合わせ飛行性能を犠牲に装甲強化を施しています」
地を這うように襲いかかる戦術を取るフランには、飛行能力より装甲を重視したほうがいいだろうとコウは判断したのだ。
見た目はさほど変わらないが、より質量のある、ベレロフォン用に開発した装甲材が採用されている。ベレロフォンは追加装甲を纏えないが、六番機はその上でblock3の強襲飛行型追加装甲を身につけることになる。
「ゾラさん。聞いて貰えますか」
「はい」
「最初、コウさんに出会った時、亡くなった兄が助けにきてくれたと思いました。この六番機のパイロットです。どうして、ここまでしてくれるのでしょうか」
「あの方も大切な方から五番機を託されたと思っているのです。五番機のパイロットになる予定だったお方。タカバヒョウエ会長の戦死したお孫さんから」
「タカバヒョウエ。伝説の傭兵ですね。そんな方もお孫さんを……」
フランもヒョウエの立志伝は知っている。社員を食べさせるため剣一本で成り上がり資本金を集めてTAKABAを創設した、伝説の傭兵だ。
「転移前はコウさんとは数歳違いだったようですよ。とても仲が良かったとか。あなたのお兄さんとも年が近かったのでしょうね」
その話を聞いて身が震える思いのフラン。不幸なのは自分だけだと思っていた過去が恥ずかしくなったのだ。
セリアンスロープにとってその経緯はもはや常識として知られている。フランには話す必要があるだろうとゾラは判断した。
「あの人も、大切な人から五番機を託された?」
数歳違いの、兄に近い年頃だったという青年に。
「そうです。会長のお孫さんとは転移時期は十年違っていまして、もうすでに亡くなっていたのです。コウさんが転移した直後のことです。一人取り残されたコウさんは偶然にも捨て置かれた五番機と邂逅しました。ですが私達セリアンスロープは必然だったと信じています」
「私もそう思います」
アシアの言葉を思い出すフラン。
――コウなんて転移直後は廃墟に放り出されて死にかけで。廃棄されていた五番機に乗り込んで命からがらの逃亡生活。持っていたものは五番機と貴女と同じ試製大剣、お供のファミリア一人。ライフル一つ装備していなかった。それでも私を助けると約束して、その約束を果たしてくれたの。
「コウさんはあなたとお兄さんの話は他人事とは思えないでしょう。ヒョウエさんもです。今回はあの方も追加装甲に関わっています」
「ヒョウエ会長まで。――コウさんは私にとって神様です。きっとそういわれることを嫌がるのでしょうけれど、それでも神様で。少しでもご恩をお返ししたいのです」
ゾラも思わず破顔する。
「我々セリアンスロープもそうなんです! ですがあの方はそう呼ばれることを嫌います。そこがまたいいのです!」
「ですよね!」
意気投合する二人だった。
「では説明を続けましょう。現在の五番機はC型block3です。このblock3改は正真正銘、コウさんのお古なので新造品ではありません。お気兼ねなく。block3に至るまでの随時改造されていた五番機の使い古し。倉庫部品ですよ」
「ゾラさん。それはつまり――トライレームの方々にとっても至宝なのでは? 新造品よりよほど価値がありますよね?」
ゾラは答えず、虚ろな笑みを浮かべ視線を逸らした。
少なくともそんな部品がひとかけらでもオークションにかけられようものなら、セリアンスロープやネレイスが中心の全財産を賭けた決死の競売になるだろう。
そんなことを眼前の少女にいえるわけがない。
「派手にぶっ壊してくれて構わないとはいわれていますね。後生大事に使うより、使い倒してこそ、コウさんは喜ぶと思います。私達が修理に参りますよ」
ギャロップ社の名に賭けて、この業務を他に委託することなど許されないのだ。
「コウさんにありがとうございますとお伝えください。今はアシア救出で忙しいはず。私は必ず生きて、直接お礼をいいますから」
コウがどうしたら喜ぶか考えるたフラン。きっと彼女が生き延びることだろう。
「聡い方ですね。直接お会いするまでは私が言付かりましょう」
さすがはコウ様が目をかけるだけのことはあると、我がことのように喜ぶゾラ。パルム社長に伝えなければいけない。
彼女は六番機。コウとヒョウエのお気に入り。ギャロップ社社員が命を賭して守らなければいけない少女でもある。
「先ほど申し上げた通り、六番機はヒョウエさんのアイデアも入っているんですよ。左右の肩甲がC型block3と違います。六番機が身を低くして突進しても被弾しないよう、工夫されています」
「そこまで……」
言葉を失う。ヒョウエにしてもフランには死んで欲しくないという願いが痛いほど伝わってきた。でなければ突進前提の追加装甲などありえない。
「コウさんから追加装甲のみならず預かりしている兵装もあります」
「なんでしょうか」
「コウさんと同じ兵装と刀をお渡しします。セリアンスロープがコウさんのために開発したDライフル。そしてこの電弧刀をあなたにと」
「あの時貸してもらった!」
最初に出会った五番機に、六番基は小太刀の電弧刀を借り受けたのだ。
「惑星開拓時代から生きる、コウさんの父上ともいうべき方が自ら鍛えた逸品。試し打ちの一振りとのことですが、お受け取りくださいと言付かっております」
ゾラは考える。あらゆる電弧刀は、五番機を想定して製造されている。六番機とは相性は抜群だろうとも。
フランが不安げな視線をゾラに向けるが、ゾラは微笑みを浮かべ首を縦に振る。受け取るべきだと。
惑星開拓時代の存在が鍛刀した刀など、それこそ宝刀そのもののはずだ。受け取れるはずもないとフランの心の片隅でよぎったが、考え直した。
「それはさすがに…… いえ。これも受け取ります。そうしなければならない気がしました」
最初にコウと出会った時、六番機が彼女に語りかけた言葉。
『私達は託された。その意味を考えることだフラン』
コウは五番機を託された。そのコウが今度はフランと六番機に装備を用意した。彼女はDライフルと電弧刀ともに、コウたちの思いを再び託されたのだ。
アシア救出作戦において、万全を期すという意味でも受け取らねばならない。
六番機は無言。彼女が下した選択は正しかったと直感した。
「貴女にもアシアの直接封印を解く能力。復号資格があると聞いています。六番機が最深部に辿り着くことはないようにしますが、万が一の時はお願いするかも知れません。そのときは我々が総力をあげて支援します」
「私にアシアの復号資格が?」
「はい。アシアと直接話したことがある構築技士。それが資格の一つです。この六番機はアシアを救出した五番機と同列の魂を持つ機体ともいえる、最初期ロット。二重の縁があるとのことです」
「私が…… やります。どんなことでも。それは私がアシアを疑った償いでもあるのです」
L451防衛ドームをはじめ、パイロクロア大陸の住人は超AIアシアに見捨てられたと思っていた。フランもまたその一人だった。
「その思いに我らが応えましょう。――六番機の換装が終わりました。出撃です。確かめてみてください」
「はい」
新たな姿になった六番機に乗り込むフラン。
彼女の想いに応えるかのように、六番機が駆動音を立て始めた。
六番機にもたされたものをフランは改めて実感し、震えた。
「出力の桁、いえ。何もかもが違うんですが。ゾラさん」
六番機のモニタに表示される数字が、見たことがないようなレベルになっている。
見たことがない兵装や機能がずらりと並んでいた。理解できるかも不安だった。
「今までの六番機は高密度水素が推進剤でした。今やその数十倍のエネルギーを生み出す金属水素を機体内で生成し、装甲筋肉と二機のリアクターを採用。コウさんが自ら手にかけてスープアップした機体です。生まれ変わった六番機だと思ってください」
「操縦できるのかな。この六番機を」
重量は増加しているにも関わらず、加速度まで桁違いになっている。地上疾走で超音速を越えるのだ。
対光学兵器兵装の破片調整弾など、説明を読むかぎりどうみてもレーザー用バリアである。
「貴女ならできますよ。六番機を信じて。それに――」
「それに?」
「万が一にも六番機が封印区画に潜入するようになるとすれば、敵はおそらく高性能のアンティーク・シルエットとなります。その性能をもってしても、勝てるかどうか」
「この性能でも……」
フランは少し考え、微笑んだ。それほどの強敵がいると聞いて、むしろ不安が吹き飛んだのだ。
「それなら勝てます。この六番機なら。わかりました。必ず使いこなしてみせます」
強敵がいるなら排除するまで。その存在に対抗するものをコウは彼女に託した。ここまでの装備を与えられた六番機で負けるわけにはいかない。
立ちはだかる者すべて、咬み殺してやる。フランは心の中で決意した。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
読者の方々も予測されていた通り、フランは構築技士資格を有しました。登場時点では有していません。いきなりD級はおそらくオケアノスのえこひいきです! ギリシャの神々なんてそんなもの。いえいえ。浮気もしないし公平ですよ。多分。
女性に甘いだけ? 否定はできません!
強敵と聞いて奮起するフランは根っからのファイターですね。コウやヒョウエが身内に甘いのは今更です。
さてアシア解放資格も改めて明言されました。「アシアと会話する」「構築技士資格を持つ」です。もちろん時間はかかりますが、不可能ではないということです。
アベルは会話している回数やメロスを作った経緯で考えるとA級並みにありそうです。マットやジャリンなども有資格者ですね。
次回からは激戦の連続。前回の戦場みたいな肩すかしは無しと告知しておきます!
大鎧は動きにくい! 肩構えからの突進だと旧○○! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
大変励みになります! 気軽に感想等もお待ちしております!




