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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
兵器開発施設

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閑話 依頼

本日二回目の更新です。

 メタルアイリスを始め、多くのアンダーグラウンドフォースには特定の拠点はない。

 要塞エリアのなかに特定の区画があり、そこへ駐屯する形が多いのだ。

 彼ら用の簡易住居や商業施設もある。


 現在D411防衛ドームにいるメタルアイリスの面々は大きな依頼の準備に大忙しだ。

 依頼内容はストーンズ管理下にある敵要塞エリアへの潜入をサポートというものだ。

 報酬は破格。

 

 うさんくさい依頼なら受けないが、今回の依頼主が問題となる。

 オケアノスから、傭兵機構を通しての依頼だった。

 念のためメンバーに確認し、全員の賛成によって今回の依頼受諾は決定された。前金の分配だけで、機体の新調が出来るほどなのだ。


 他のチームとの共同作戦でもあるのだが、もう一つのチームも変わったチームだ。このチームは傭兵機構のなかでも絶対的な信頼を持ち、ストーンズの敵対者であれば、裏切ることはありえないと言われる程なのだ。ただのアンダーグラウンドフォースではない。


 ブルーも皆と同じように作業していたが、ハンガーキャリアー内の指揮室にいるジェニーに呼ばれた。


「忙しいところ、ごめん」

「いえ。問題ありません」

「最近、慌ただしいからね。色んな方面で」

「何かが動き出したようですね」


 二人が話している内容。それはオケアノスによる企業間の開発技術オークションだった。

 現在の構築技士たちには入手できない技術を使った兵器の一端が開示され、権利のオークションが発行されたのだ。

 補給部隊の結成、その任務に従事するアンダーグラウンドフォースの設立提案も込みという特殊な条件も付随されている。


 これに沸き立ったのが企業、アンダーグラウンドフォース双方だ。

 補給が捗ることがどれだけ重要か、最前線の人間は痛感している。転移者の元軍人たちも驚喜した。

 企業たちはどうにかして開示された情報をできるだけ集め、そして独占できないか躍起になっている。


 今回提供される技術で特筆すべき点は、落札した兵器の技術は応用、転用が認められているところだった。

 こんな提案は行われたことがなく、提供元は明らかに人間だと思われた。

 現在、情報提供元は不明である。各地の要塞エリアでは、特定するためのスパイが暗躍しているというが、見つかったという報告はない。


 そんななか、オケアノスからのストーンズ要塞エリア攻略――関係ないと言い切れないものがあった。オケアノス経由の依頼など、前代未聞だ。


「しかし、なんで私達なんでしょうか」


 他に大手のアンダーグラウンドフォースなどいくらでもいる。メタルアイリスは大手とはいえ、戦力的にはAランク下位に届くか届かないかだ。

 先日のC212防衛ドーム防衛でも名をあげたとはいえ、保有している機材の規模がものを言う。


「オケアノス経由の依頼の件よね。――あの大剣の子よ」

「え?」


 端正な少女の顔が驚きに変わるのは見ていて楽しい。コウが来てからはとくにそうだ。

 ジェニーは悪戯っぽく笑った。


「コウ君ね。名前は記載されていないけど、間違いない」

「ちょっと待ってください。オケアノス? なんでコウが。匿名の依頼って言ってましたよね」


 ネレイス種はオケアノスに作られた。いわば創造主。父母の念を感じるものも多い。

 そしていわば世界を管理する、最大の超AIだ。

 一ヶ月前に消えた右も左もわからない様子だった人間が、いつのまにかオケアノスを行使する――EX級構築技士とはそれほどのものか。


「だって依頼文にメタルアイリスのジャケット愛用しています、って律儀に書いてるもの」


 笑いが抑えきれないジェニー。身元を隠す気がないにしろ、これほどわかりやすいメッセージはなかった。


「なんなの、あの人……」

「企業への技術提供元もあの子ね。タイミング的にも」

「EXですか」

「EXね」


 この世界で彼女たちだけが知っている秘密。

 EX級構築技士。いまだかつて存在しないランク。


「こういうとき、どういえばいいのかな? 情けは人の為ならずっていったっけ。ちょっと違うなぁ」

「私たちが情けをかけられっぱなしですが」


 応急処置はほどこしたが、そもそも彼女たちへの協力の結果だ。

 コウがいなければエニュオ攻略もあやしかったかもしれない。

 

「だよねー。きっちり仕事こなして成果上げないとね」

「しかし、それだけ危険な任務ではないでしょうか」

「難度は高いよ。でも依頼主に裏切られる心配はほぼないし。前金も結構どころじゃない額があるし。宝の山でも掘り当てたのかな、あの子」

「それこそ未発見の廃墟要塞を占有したとか」

「ありえそー、それ」


 構築技士ならば手つかずの施設を動かすことも可能だ。見つかればの話だが、彼女たちの予想は正しい。

 二人が出会った時のコウは難民同然の放浪者だったのだから。

 可能性は自ずと限られていた。


「合流する戦力はシルエット一機だけらしいから、まず彼の機体で間違いないね。代理人、という名目らしいからそのつもりで」

「名目ですか」

「本人も自分の立場は自覚しているよ」


 あまりに無防備であれば心配になるが、そこは意識しているらしい。


「攻略対象はX463要塞エリア。最初にストーンズに攻略された場所の一つ。つまり、何かがあるってこと」

「ストーンズの初期攻略地点の謎までわかる可能性が?」

「あくまで可能性ってところかなー? 本人が気付いているかは……多分気付いてないかな」

「なんででしょう?」

「敵の戦力、そして人類の生存圏で一番近い場所。そこまでちゃんと調べてある。でも初期攻略地点とは書かれていなかった。もし私達がここを攻略するなら、依頼書に必ず記載する事項ね」


 ブルーもそれには同意した。初期攻略地点は謎が多い。占拠後の守りも堅く、何故その場所を攻略地点に選んだか長らく謎だったのだ。


「マーダーだけじゃなく、この場所を任せられた人間と戦うことになる。コウは理解してるかな」

「わかりません。でも地球、とくに日本からの転移者にはきついでしょうね」

「それならそれでしっかりサポートしないとね。戦い慣れしていないのはしってました、でも対策してませんでした、ってのは傭兵の名折れ」

「わかります」

「そして私達を高く売る、と」

「売っちゃうんですか?」

「買ってくれるならね。資金繰りに頭を悩ませずに済みそうかな、なんて」


 そういってジェニーは笑った。傭兵は命懸けの仕事であり、兵器を取り扱う以上、必要経費の負担も大きい。

 

「売られても構いませんが」


 珍しく微笑した。悪いようにはされないと思ったのだろう。


「……ブルーだけ欲しいっていわれたらどうしよ……」

「がんばって移籍金を釣り上げてください」


 珍しく無口な少女がからかってくる。


「ありえそうな気がしてきた」


 可能性を考えると笑えない。

 傭兵の引き抜きはもちろん多い。取り分の多い方へ移動するのは当たり前だ。


「ちゃんとブルーを籍に入れることを確約するなら検討しよ」

「何の話です?!」


 顔を真っ赤にするブルーに、仕返し成功とばかり微笑むジェニーだった。


お読み頂きありがとうございます。

無事GW中の二話投稿を完走することができました。

誤字脱字報告、大変ありがたいです。表現変更が必要な部分もあるため、本格的な改稿は明日から取りかかりたいと思います。本当に助かります。この場を借りて御礼申し上げます。


GW期間中、ずっとジャンル別で日刊一位にいることができたのはひとえに皆様の応援のおかげです。

改めてありがとうございます!

次の章より、再び大規模戦闘に入ります。様々な局地機、特殊戦機を出したいと思いますので、ご期待ください。引き続き応援よろしくお願いします!

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