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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
C212防衛ドーム攻防戦

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時代遅れの未来

 補給を追えたバリーたちのベアは、最前線で戦闘を続けていた。


「おい、あの大剣ボーイ。凄いな。うちに来ないかな?」

 

 コウに助けられた大柄な黒人のロバートが、褒め讃えている。


「そうだといいな。ジェニーと初見で連携できるのも大したもんだ」


 エニュオの頭部を破壊した連携は思わず舌を巻くほどだ。

 彼は三次元行動ユニットさえ装備していない。


「お、援軍がようやくきたようだぜ」


 ロバートが皮肉な口調で後方をみる。

 同じくアンダーグラウンドフォースのフライングパスタとレッドバルカンのメンバーだ。

 

 フライングパスタはベアよりも重装甲なグリズリーと呼ばれる重装甲機体に、巨大なロケットランチャーを装備している。

 掃討戦に切り替わったということで、援軍にきたのだ。


 もっとも彼らを非難する気はない。彼らは小規模なアンダーグラウンドフォースであるし、住人の避難や防衛を行っていたからこそメタルアイリスのメンバーは戦闘に専念できたこともある。


 エニュオを喪ったマーダーたちの戦力は総崩れだ。

 撤退する場所も燃料も持たないだろう。彼らが都市部を制圧して、初めて人間を含む制圧部隊が到着するのだ。

 攻略の主軸を喪った今、制圧部隊が来ることはないだろう。


「援軍もきた。一気に掃討するぞ!」


 バリーが叫ぶ。

 僚機たちがそれに続いた。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



「バリーさんたち、頑張ってるな」


 バリーたちの戦闘区域にきたコウは、感嘆した。


「俺にはあんな連携無理そうだ」


 バリーたちは敵機を絞り、集中して確実に撃破している。


 彼らもジェニーとの高度な連携を見せたコウが、そう思っているとは思わないだろう。

 ジェニーの合わせる能力が卓越だったと、コウは思っている。


「君には向いていないだろうね」


 意外にも師匠が同意した。


「集団行動は苦手なんだ」


 バリーたちに続いて、装甲車両も支援攻撃に入っている。大型ではないタイプだ。

 この複数の車両も、見事に連携してマーダーたちを追撃している。


「あれはなんだろ」

「なんだね」

「前輪が車輪なのに後部が戦車みたいなキャタピラ? 変な装甲車がいる」

「ああ。履帯だね。半装軌装甲車だ。第二次世界大戦のときにあった形式の車両だよ」

「第二次世界大戦?」


 コウにとっては生まれる前の遠い昔の話だ。


「うん。君の時代の戦闘車両は装軌式か装輪式に統一されていたはずだよ。あの形式はコストがかかる割にメリットが少ないから」

「何故この時代にあるんだろう」

「……転移者の趣味だ」

「え?」


意外な回答に絶句する。

 

「転移者のなかに無類の半装軌車好きがいたのさ。確かドイツ人の技士だったな。そして少数量産してみたところ、評判も上々。様々なサイズの半装軌車が普及しているよ」

「趣味で量産? できるのか」

「できるよ。【構築技士(ブリコルール)】ならね」

「評判いいのか」

「自動車と同じ感覚で操縦できるんだよ。とくに日本人やら、兵器に乗り慣れていないこの時代の住人には画期的でね。案外悪くない。装軌装甲車よりは高くつくが」

「なら装輪装甲車で良くないか?」

「趣味だ。といっても二十世紀の欠点はあまり問題にならないかな。居住区外は荒野や森林、雪原地帯も多く、履帯は有用だ。インホイールモーター採用で多段変速機も必要ない」

「きてしまっているのか、インホイールモーターの時代が」


 電気自動車が本格的に到来するとコウたちのようなギヤ関係の仕事は無くなると言われていた。未来で改めて指摘されると感慨深い。

 だが、今はそんな問題は些細なことだ。今彼がいるのは未来なのだ。


 戦闘を続行しながら、問答をしていると、テルキネス二機がライフルを構えて襲ってきた。挟撃だ。


「っ! しまっ」

 

 周囲から鳴り響く銃撃音。物陰から颯爽と現れた半装軌車三両が援護に入ってくれたのだ。

 援護の二輌は装備した多銃身の機関砲で牽制し、後方にいた対戦車型が有線ミサイルで追撃する。


 そのカバーの間に前方のテルキネスを破壊し、すぐさま背後にいた、半装軌車と戦闘中のテルキネスを斬撃し撃破する。


「助かった!」


 通信で半装軌車部隊に礼を告げる。


「こちらこそ。ありがとう、大剣の人」


 通信が映し出される。おおきな牧羊犬の犬型のファミリアがそこにいた。


「あと少し。がんばりましょう」

 

 女性の声がして別の通信が入る。白猫型のファミリアだった。


「さっきから頑張っている兄ちゃんだな? 無理するなよー」


 最後の通信は狐型のファミリアだった。


 場違いながら、コウは思わず和んでしまった。

 本当に動物たちが人間を助けてくれるような気がして。


「ああ。皆で生き残ろう」


 コウの言葉に、三匹のファミリアは手をちょこんとあげて応えた。

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