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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
アシア大戦前編―巨大兵器群殲滅戦

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複合型戦闘ヘリコプター

 100メートル級巨大マーダー、エリス。

  

 大気圏内での活動を想定し創り出されたこのマーダーは、複数の対空レーザーを持つ他に、毒針に相当する部位にプラズマラムを持つ。

 超高温のプラズマをまとった鋭い針の一撃は、要塞エリアのシェルターはもとより、1キロ級戦艦さえも一撃で破壊するほどの威力を誇る。


 厄介なのが護衛機でもあるホーネット型だ。

 電磁装甲式であり、今まで金属水素の供給が無く、停止していたはずのケーレス。

 エリスと同様の機能を持ち、毒針代わりのプラズマラムで敵機を破壊する、飛行型近接機体だ。


 その数約二百機。低空を飛び回る、非常に厄介な敵だった。


「く。まずいぞ、あのホーネット型は!」


 傭兵が乗るシルエットが後退する。

 プラズマラムに、電磁装甲は意味をなさない。一種の近接貫通兵器だ。


 撃墜しようと対空装備の半装軌装甲車が援護に回る。

 だが、その半装軌装甲車も側面を取られ、一撃で破壊される。スズメバチの如き機動性だった。


 マンティス型やアントコマンダー型を想定して大口径火器を装備していたシルエットが多かったのも災いした。

 副兵装であるアサルトライフルやカービンに持ち替え牽制するが、電磁装甲に阻まれ有効打にならない。


 だが、彼らにも強力な援軍がいた。


 低空から急上昇したのは、戦闘ヘリ。複合型ヘリコプターで推進式ダクテッドファンを二機装備している。

 ファミリアが駆るスズメバチだ。


 低空の機動性なら戦闘ヘリも負けてはいない。

 最高速度にこそ難はあるが、ホーネット型とほぼ互角。最高速度は600キロに近い速度が出せる。


「やはりヘリは使いやすいなー。コウさん、需要少ないといってたけど」


 柴犬型ファミリアがつぶらな瞳でホーネット型を対空ミサイルで撃墜した。


 戦闘ヘリは二十一世紀、歩兵の対空攻撃の充実と脆弱性の問題から急速に廃れつつあったが、運用方法の変更により生き残った。

 コウが電磁装甲を採用したとき、真っ先に開発した航空機が偵察用の観測ヘリと、戦闘ヘリであった。


 これはシルエット戦とマーダー戦における、航空戦力の希薄さゆえ。シルエットベース周囲を哨戒するために作ったのだ。

 機動力がある航空機があれば便利だろうという程度のものであり、少数生産に留めた。


 まさか敵味方ともにこれほど戦闘機を量産する時代になるとは、コウも予想していなかった。低高度の航空支援のため攻撃ヘリコプターが必要と判断されたあと、アシアが増加生産に対応してくれたおかげで、配備が間に合った。


「側面に回り込んだね? そう簡単にはやらせないよ!」


 加速と急上昇でホーネットの機動に対抗する。

 本来ヘリコプターの最高速度の理論値は400キロ程度。別途の推進機構を取り付けることにより、その限界を破ることができる。


 犬型のファミリアが薄く笑いながら、側面に回り込んだホーネット型に正対する。

 そのまま機関砲を撃ちながら、彼のほうが側面に回り込み、対空ミサイルを発射する。


 電磁装甲に阻まれたとはいえ、対空ミサイルでバランスを崩すホーネット型。

 そこに地上の戦車からレールガンの主砲を打ち込まれ、大破した。

 

 コウは最初、子供の頃みたドラマの影響でジェット推進で補助しようとしたが、アストライアに止められた。

 それならば低速の戦闘機をブリコラージュしたほうがいい。ジェット推進と回転翼では得意な高度が違うのだ。


 一機落とされた仲間の復讐か、そうプログラムされたのか。多くのホーネット型が戦闘ヘリに群がってくる。


「まずいぞ! 凄い数だ!」


 シルエットのパイロットが悲鳴をあげる。

 その声に応えるべく、颯爽と現れる攻撃ヘリ軍団。その数20機。


「みんな近付くなよ! 遠くから撃ち殺せ!」


 狐型のファミリアが味方に指示する。


 対空ミサイルで牽制し、ガトリングガンで相手の装甲を確実に削る。

 いくら電磁装甲でも、被弾し続ければ無傷ではすまない。


「こちらサンダークラップ。支援攻撃に参加する」


 秋田犬型のファミリアが、重攻撃機サンダークラップに乗ってやってきた。

 重ガトリングがうなりをあげ、ホーネット型ケーレスをスクラップにしていく。


 高高度が封鎖されているなか、攻撃ヘリコプターは絶大な能力を発揮している。

 直接戦闘のほかに哨戒任務、最前線の敵位置情報を地上の戦車部隊やシルエットと連携、共有するのだ。


 シルエットたちが援護に入り、火力を集中させ、迎撃する。

 離れたところでは、対空車両も攻撃に参加する。


 地上と空中の連携を取り、機動力の高いホーネット型相手に、メタルアイリスと傭兵たちは確実に撃破していった。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



「エリスは、あとどれぐらいで到着する?」

「あと20分程度と思われます。R001要塞エリアからまっすぐにこちらへ向かっているようです」

「わかった。では、レールカタパルト用意!」


 宇宙港も兼ねている、巨大な水面。その場所にはレールカタパルトがある。

 そこにアリステイデスは停泊していたのだ。海では無く錨を使っていないので錨泊ではない。


 水中から巨大なカタパルトがせり上がり、備え付けられたアリステイデスがレールにのってわずかに進む。

 所定位置についたところで停止した。


「レールカタパルト、発進準備完了です」

「オーケーだ。これからは無茶な作戦が始まるんだ。退艦希望者は今のうちだぞ」


 誰も返事をしない。皆、ロバートを信じていた。


「本当にいいのかよ、お前ら」

「今更ですよ。艦長殿」


 猫型のセリアンスロープの女性が苦笑する。

 他の猫型ファミリアたちは全員三毛猫だ。張り切っていた。


「エリスが特定ポイントになったら、アリステイデスを発進させる。みんな、気を抜くな!」

「はい!」


 戦闘指揮所にいる総員の顔が引き締まる。

 これより前代未聞の作戦が始まるのだ。


「まさか、エリスに対し、強襲揚陸艦で空戦を仕掛けるなど。こんな体験そうできませんよ」

「エリスが飛来するってことがまずないからな!」


 ロバートは笑った。

 アリステイデスをレールカタパルトで射出。

 エリスに対し空中戦を仕掛けるのだ。


 宇宙艦であるアリステイデスは単独の大気圏脱出能力も、空中航行能力もある。

 それでも、接近戦主体のエリス相手には無謀といえる作戦だった。


「いざとなったら、横をすりぬけて宇宙に逃げればいいからな」


 空戦といえど、交戦時間は短い。

 一瞬で撃墜されるか、こちらが仕掛けを決めるか。

 一か八かの戦術ともいえる。だから皆を巻き込みたくはなかったのだ。


「そういって転進して攻撃するくせにー」

「そうそう。空中で大立ち回りになりそうだね!」


 三毛猫のファミリアたちが空中戦に期待している。

 彼らもまたロバートのために一緒にいることを選んだ者たちだった。


「エリス破壊作戦を敢行する。危険な任務だが、よろしく頼む!」

「はい!」

 

 戦闘指揮所にいるクルー全員が返事をする。


「さあ。行くぞ。見せてやろうぜ。宇宙船ならではの戦い方ってな」


 薄く笑うロバートの額にもまた、緊張のために汗が滲み出ていた。


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