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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
アシア大戦前編―巨大兵器群殲滅戦

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荷電粒子砲封じ

「アーテーはまっすぐにアストライアに向かっている。こちらはそれを追おう」

「相手は凄いスピードね」

「あれは地面効果翼機の構造ですな。グラウンド・エフェクトを利用して滑空しているのです」


 三人の構築技士もまたアーテーを分析する。

 データも揃っている。どう戦うべきかは、解析済みだ。


「時速500キロ程度か。それなら余裕で追いつける」


 ペリクレスは高度を上げ、空中を飛行する。バラストタンクには金属水素の元となる海水が満タンだ。

 ロケットブースターが火を噴き、空を浮かび飛行を開始する。


「マット。聞こえますか? こちらアストライア。今から陽動のために攻撃機を発進させます」


 アキから通信が入る。ジャリンとマティーとは仲が良い。ハーラルトも数回顔を合わせている。


「了解! 頼んだよ!」


 アストライアからエッジスイフトが対艦装備に換装し発進していく。

 積載能力に余裕があるので、対地攻撃にも対応できるのだ。


 ツバメの低空飛行のように、エッジスイフトは海面すれすれを進んで行く。最高速度は出せないが、機動力は十分に発揮できる。


 アーテーはまだペリクレスに気付いていない。

 エッジスイフトの対艦攻撃をものともせず、まっすぐにアストライアに突き進んでいく。


「近付いて殴るのはいいとして、荷電粒子砲はどうするのよ!」

「安心しなさい、ジャリン。あんなものは本来大気圏内で運用することが間違いだ。海上なら多くの対策手段がある」


 ジャリンの疑問にハーラルトが答える。

 マティーは頷いた。対策は考えてあるようだ。


 広大なセンサーを持つアーテーが飛来するペリクレスに気付く。

 大きく旋回し、両腕の荷電粒子砲を構えてペリクレスに近付いてきた。


「危険なのは、むしろ巨大な装甲筋肉による打撃。あの尻尾だ」

「アストライアのエッジスイフト帰投開始! ダメージはほとんど与えられていないようね」

「だろうね。そろそろ。艦内総員、衝撃備えて!」


 マティーの号令に艦内のセリアンスロープやファミリア、そして人間が慌ただしく動く。

 兵の質も高そうだ。


「バルバス・バウをラム・モード。ペリクレス最大船速! 対空レーザー砲撃開始! 指定の海面へ! ミサイルは牽制のためにアーテーへ!」


 マティーの指示にジャリンが二人に尋ねる。


「海面?」

「水蒸気だよ。荷電粒子砲はいわば粒子を高速で吹き出す水鉄砲。大気内であれば霧吹き程度の勢いしかなくなる。水蒸気内で射程を伸ばすことは不可能だ」

「中性粒子ビーム砲ではないからね。あれは惑星間戦争時代の兵器。海面上で使うことはあまり考慮されていない。減衰すればペリクレスの装甲にダメージを与えることも難しい」


 二人の説明に納得がいかないジャリン。


「そんなもので対抗できる兵器だっけ? あいつ水があると荷電粒子砲が撃ち放題って話じゃない」

「相手も無限に海水で冷却、金属水素を回収できるが、それが仇となっているな」

「ただでさえ、荷電粒子砲というのは水鉄砲を水中で撃つようなものなんだよ。水蒸気を加えてやることによってさらなる減衰を見込めるね」


 アーテーの周囲を大量の水しぶきが覆う。

 射程は20キロ程度。だが、10キロも維持できないだろうとは容易に想像ができた。


「近付いたら出力を落としたプラズマバリアを断続的に張ろう。周囲に味方機がいないか確認を」


 ペリクレスが電磁装甲のプラズマバリアを断続的に展開する。

 そのたびに水蒸気が発生し、霧がかったような状態となっていった。


 思ったように荷電粒子砲を使えないアーテーは苛立っているようにさえ見える。

 ようやく発射したものの、減衰したビームの威力はペリクレスに一切ダメージを与えることはできなかった。


「霧? そんな簡単に対策されちゃうもんなのか」

「普通なら水蒸気が先に蒸発するだろうね。だが、無限に近い海水を利用した水蒸気バリアなんて想定していないさ。あいつは宇宙兵器だ」

「欠陥兵器にしか見えないけど」

「荷電粒子砲の威力は同口径のレールガンの十倍だよ。大口径になるほど威力は凄まじくなる」

「げ。そんなのを殴りにいくのか!」


 ジャリンはいつも思う。マティーもコウと同じくぶっ飛んでいると。


 ペリクレスはなめらかに海面に着水する。


「着水! ライブラ2、衝撃ダメージは?」

『ご安心を。皆無です』


 ペリクレスの制御AIであるライブラ2が回答する。


 射程ぎりぎりのところでペリクレスは海上を進んできたと思いきや、そのまま潜水する。

 アーテーは混乱した。直進してくると思ったからだ。海中には潜ることができる。

 センサーをみるとそれほど深くは潜っていないようだ。


 ペリクレスは海面から浮き上がる。ロケットのように打ち上がっていく。

 

「きゃあ!」


 激しい衝撃で、思わずジャリンが悲鳴をあげる。ハーラルトは面白そうに笑っている。

 周囲には大量の水しぶきが上がり続けている。直径400メートルを超える巨体の水しぶき。


 空中で船体の姿勢を整え、巨大なブースターを噴射し加速する。落下するかのように、アーテーの背中めがけて突撃した。この場所なら尻尾も届かない。


 アーテーは空に浮かんだペリクレスを鋏状である両腕の荷電粒子砲で狙うが、まだ充電が完了していない。

 苦し紛れの対空レーザーはペリクレスの装甲に傷一つつけることはなかった。


「いくよ! みんな! バルバス・バウラムモード!」


 位置エネルギー――重力を利用して、ペリクレスのラムがアーテーの背面に突き刺さる。だが、さすがに一撃では破壊しきれない。

 ペリクレスの船尾の大型ロケットブースターが火を噴き、有無をいわさずアーテーを海中のなかへ突き落とす。


「潜水開始。深度50……100……500……1000…… ここまで押し込んだ! ディープワン! 頼んだよ!」


 シャコ型の巨大マーダーであるアーテーは深海でも動くことができる。だがリアクターは損傷し、思うように動けない。

 深度が深まるたびに、孔の空いた装甲から悲鳴が上がる。内部構造に浸水し、水圧によるダメージも発生し始めたのだ。


 深海に到達した。この場所にはシルエットベース所属のディープワン潜水艦部隊がいるのだ。

 ペリクレスはここまできて、ようやく押し込むことをやめた。


 ディープワン部隊も姿を見せる。


 ひしゃげた背面の装甲めがけて魚雷の集中攻撃を受けるアーテー。ペリクレスも大型魚雷を発射し支援する。

 やがてリアクターが停止し、静かに沈んでいった。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 アストライア、キモン、ペリクレスの三隻が集結した。

 この三隻に搭載されている兵器の質もトップクラスだ。


「俺も行きたいぜ」


 とはロバートの弁だ。彼はずっとP336要塞エリアで待機している。仲間はずれの気分は致し方ない。

 だが常に待機状態という任務をバリーに任すには難しいところ。ロバートも本気でそう思っているわけではない。


「こちらは航空戦力は少ないのです。主にシルエット部隊ですね」


 マティーがバリーに報告する。


「クルト社のバズヴ・カタ部隊と改装型ヴュルガー部隊、そして僕のクアトロ部隊が主力となります」

「今から巨大マーダーとの連戦だからな。精鋭部隊の到着は助かる」


 クルト社は主に若い青年が生き残った。彼らは若すぎた。

 クルト社の再建とともに、パイロットとなる者が多かった。今度こそ守るために。


 今や彼らはバズヴ・カタを使いこなすまでに成長していた。D516要塞エリアの犠牲は、決して忘れない。


「厄介なことにこちらは高評価すぎてな。巨大マーダーに、ケーレスどもは基本高次元投射装甲ときている。ここにきて、追加の戦力は助かる」

「空戦が封じられていますね。空戦に間に合わなかったのは辛かったですが、陸戦を想定した兵器で編成したのが幸いしたようです」


 ギャロップ社はクアトロ・シルエット専用のメーカーであり、世界中からセリアンスロープたちが押し寄せている状況だ。

 陸戦能力と機動力も高い。


「心強い。山脈沿いのアーテーは建築工兵と電車部隊が倒してくれた。こちらは力業でねじ伏せないといけないが、この戦力ならいけるだろう」


 アーテーと大型マーダーの行軍は、怪獣映画を思わせる。


「これより大型兵器群攻略戦を開始する。ペリクレス隊は急いで前線と合流を」

「了解です! ジャリン。指示を」

「はい!」


 マットが返事をし、ジャリンへ指示を開始する。

 戦場にはコウが待っている。

 友人を助けるために、彼らはここにきたのだ。

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