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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
アシア大戦前編―巨大兵器群殲滅戦

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ウィング・ラム

 敵航空部隊が徐々に包囲網を狭めてくる。

 エッジスイフトは長距離ミサイルを撃ちきったあとは、短距離ミサイルが数発しかない。

 格闘兵装はレールガンのみ。


 だが格闘戦もエッジスイフトはいかんなく能力を発揮する。可変翼は急上昇、急降下、急旋回に最適な角度に位置する。

 そしてその加速度。戦闘機の戦闘能力の高さは最高速度ではなく加速度にある。エッジスイフトは翼を後退させることで、急加速可能なのだ。

 ようやく近付いたコールシゥン編隊は少数のエッジスイフトに翻弄される。 


 護衛艦隊が対空射撃を行う。正確にコールシゥンたちを狙ってくる。


 大軍をもってあたるコールシゥン部隊は押されてはいる。彼らの機体が高性能機であることは間違いない。

 敵の護衛艦隊の防空網と可変翼機の機動性が化け物なのだ。


 コールシゥン編隊の一機が、ようやく敵艦に近付いた。目の前に弾切れだと思われる敵の可変翼を見つける。

 機銃でダメージを与えると、照準を合わせ、確実に狙い撃とうとした瞬間――


 可変翼が角度を変え、斜めに突進してくる。翼を広げたのは減速のためではない。

 このままでは体当たりだ。マッハ1を超える速度での衝突は互いの撃墜を意味する。


 違った。気付いた時には、こちらの機体のみ両断されていた。

 その光景は両陣営に衝撃を与える。


「なんだ、あれは!」


 カストルが思わず叫ぶ。あり得ないことだった。


「まさか、フライング・ラムの一種か……」

「あんなものを?」


 アルベルトが呆然と呟き、ヴァーシャが片眉を吊り上げる。


「なんだそれは」


 まったく聞き覚えのない兵器にカストルも興味を覚える。


「全身翼戦闘機の翼で爆撃機に体当たりして両断撃破する構想が、大昔の地球でありましてね。決してそういう目的で作られたわけではなく、そういう用途もできる形状に過ぎないんですが。可変翼のあれはさしずめ翼刃衝角(ウイング・ラム)といったところでしょうか」

「超音速で衝突など、機体へのダメージが凄かろう」

「ええ。狂気の沙汰です。ですが、それを実現した者が目の前に。衝撃を可変翼で逃がしておりますな」

「アストライアか……」

「アストライアと敵の構築技士の合わせ技といったところでしょう」

「非常識にも程がある!」


 半神半人は苛立ちも隠さなかった。弾切れがないということなのだ。


 一方、コウは通信に映ったリックがじっと自分を見つめている事に気付いていた。

 気まずい。

 

 気付くと同じ視線を送っているブルーも映っている。


「どこのだれだね。戦闘機の翼を刃にして斬り合いさせようとした、近接馬鹿は」

「……」

「エッジスイフト。鋭い機動力を持つアマツバメかと思ったら、翼の(エツジ)で斬ってたな」


 コウは目を逸らすことが精一杯だった。


「超音速で接触など機体が保たないだろう」

「保つよ。ちゃんと強度計算したから…… 強い衝撃を逃すための可変翼だし」

「そんなことに可変翼を使うな。フラップはどうなっているんだ」

「フラップを無くして可変翼から排気して制御、推進ベクタリング機能を持たせている。フラップ無くしたからブレードでも付けようかな、と」

「何故戦闘機で斬り合うんだ! いい加減斬り合いから離れたまえ!」


 珍しくリックが青筋立てて怒っている。

 そのうち戦車でも斬り合いを導入するのではなかろうか、という不安さえ生まれてきた。


「リックの言うとおり、コウ。これは反省案件」

「大丈夫だって! 簡単には壊れないから!」

「そういう問題じゃないから!」


 ブルーも同意見らしい。戦闘機で斬り合うという意見には、味方がいなかった。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



 迫り来る戦闘機コールシゥン編隊を、エッジスイフトは遠距離から攻撃し続ける。

 包囲網は狭まっているとはいえ、エッジスイフト部隊の猛攻は確実に時間を稼いでいた。


 敵戦術機が、一発のミサイルを放つ。


 それらはエッジスイフト部隊の進行方向二百キロ先で爆発した。


「敵が広範囲プラズマバリア発動しました! 敵味方とも、ミサイルが使えません!」

「かかった」


 エメがモニタを見ながら呟く。電磁パルス攻撃の一種だ。MCSこそ障害は起きないが、電子機器やミサイル使用が著しく制限される。


「イーグルアイ。敵は全速行動に移るはず。敵位置を予測してエッジスイフト部隊に転送」

「了解!」

「エッジスイフト部隊、一斉射撃用意。弾幕を張って」

「了解!」


 エメの指示に次々と返事が返ってくる。

 対空ミサイルが使えないならば敵は全速移動する。

 ならば、その全速移動先にありったけの射撃を置いてやるのだ。


「機動が単調になった分、予測しやすいもの」

 

 エッジスイフト編隊が次々に指定位置に移動しレールガンを発射する。

 200キロ先に到達するには六分。マッハ2以上で移動する敵に当てるのは至難の業だ。

 だから、移動先に弾雨を置く。


 毎分20発の射撃が可能だ。全弾打ちつくし、後ろの編隊に交代する。同様にレールガンを射撃するエッジスイフト。

 これで二機でも三機でも撃墜すればもうけものだ。打ち落とせなくて当たり前なのだ。


 結果は、三機のコールシゥンを巻き込み、撃墜。この結果は最大速度を落とさないであろうという予測のうちだ。


 機動が単調になれば、迎撃も容易い。

 プラズマバリアの効果範囲を抜けて回避行動を取ったところへ、対空ミサイルが飛んで直撃を受ける敵機たち。

 

 さらに加速させる機体も現れるが、射程圏内に入ったところで、防空巡洋艦からレーザー砲の照射を受けて撃墜される。


 回避行動を取らせることで、侵攻速度も遅らせることができる。

 

 アストライアに近寄らせない――


 敵部隊は確実に数を減らしていった。


「これでいい。敵は総力をあげて攻めてくるはず」

『飽和攻撃に移るでしょう』

「ええ。そうすればP336要塞エリアが手薄になって、制空権が取れるはず。あとはこちらに来る敵すべて、撃滅する」


 エメは、向かってくるすべての航空部隊の撃滅を目論んでいた。


 イーグルアイより連絡が入る。


「敵機、多数。その数、複数編隊が十部隊以上同時に飛来してきます――いえ、連続して同数、後方にも確認されました!」

「きた。通信つないで。――バリー司令。こちらエメ。敵機編隊、複数部隊確認。そちらの作戦行動を開始お願いします」

「わかった。ジェニー! 頼むぞ! 航空優勢のち、タキシネタ隊のみこちらへ合流だ! エメちゃんを助けにいくぞ!」

「了解! さっさと終わらせるわ!」


 P336要塞エリアはすぐに発進が開始された。

 ほぼ全機に近い数だ。


「こちらに飛来しているのは二~三千機と予想。主力は未確認の双発機です。今後はそちらが手薄になると思われます」

「性能がいいほうが、アストライアに向かったのか…… クソ。航空優勢を取ったら俺とキモン級がそちらに向かう。もう少し待っていてくれ」

「護衛艦もないのに、来られても邪魔です。――それでは当艦隊はこれより迎撃行動に専念します。通信を終了します」


 通信を切って、戦力を確認する。


「補給急いで! 最後の補給と思ってください」


 エメの号令により、艦内のファミリアと作業用のクアトロ・シルエットが動きを加速する。


「提督! MCS型操舵室へ移動してください! あそこなら、端末指示も出せます」

「はい。僕たちのためにも、お願いします」


 操船を一人で行う場合の、MCSシステムを使った操舵室だ。

 緊急で脱出する場合にも使う。ファミリアはその事態を想定しているのだ。


「わかった」


 彼らが身を案じてくれているのは分かっている。

 エメは素直に従うことにした。


「ここからが本番」

  

 シートに座り、端末に指を走らせた。

 彼女の戦いは、これからなのだ。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆



「ゆけい! 地上部隊、最大で展開。航空部隊を支援せよ! 機甲部隊先行せよ!!」


 リックの号令が轟く。


「十にも満たぬ少女と、我らが同胞が作ってくれたチャンスを無駄にするな。戦車部隊、対空戦闘だ。レールガンなら攻撃できる!」


 戦車の主砲による対空攻撃は二十一世紀からすでに実用化されている。それは主にヘリなど低空飛行に関してで、超音速で高度一万メートル以上を飛ぶ戦闘機に対してではない。

 それでもデータリンクさえすれば、レールガンなら対応は可能だ。


 対空機銃はむしろ役に立たない。対地ミサイル対策で必須だ。そのために装甲車や半装軌車が随伴車両として同行している。

 ここは役割分担を行っている。


「エメちゃん。どれだけ敵を引き連れていくつもりなんだ。ジェニー。邪魔といわれたが、絶対助けにいくぞ。空を奪い返せ!」


 あえてきつい言葉を使ってエメを想う。

 

「ディケ。この海域からエメちゃんがいる場所までどれぐらいかかる?」


 キモン級は海底に身を潜めているのだ。


『二時間程度です』

「聞いたか。ジェニー。頼んだ」

「ええ。さっさとこいつらを片付けて――助けに行かないとね。助けられっぱなしなんて絶対嫌よ」

「こちらも海上から支援に入る。さっさと終わらせる」


 バリーに頷いて通信を切る。


 ジェニーは胸が痛い。先ほどの演説で、だ。

 彼女は死を覚悟している。私がいなくなったら。二回繰り返した。

 その言葉がずっと脳裏に焼き付いている。


 メタルアイリスの隊長は誰か。コウではない。バリーでもない。自分なのだ。

 

「そんなことは絶対させないんだから!」


 タキシネタ隊、ファルケ隊、スターソルジャー隊が続けざまに飛ぶ。一度に発進できる数は限られるが、エメの航空支援で敵の波状攻撃には穴が空いた。

 主戦力はアストライアに向かっていったのだろう。

 単発機の編隊のみ視界に映る。


「消えろ!」


 ジェニーが交戦を開始する。

 次々に撃破されていくパック。


 別方角から敵機が飛来する。数は相手が多い。

 そこに対空ミサイルが飛んでくる。地上部隊も展開が終わったのだ。


 逸る気持ちを堪え、タキシネタの機動力を生かしジェニーは次々に敵機を撃破していった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・戦闘機で斬り合いしようぜ! [一言] ・戦闘機で斬り合いとかおかしいんだけど、そこに惹かれる私も結構おかしいのかも知れない。
[一言] >そのうち戦車でも斬り合いを導入する 斬撃戦車に斬撃戦艦に斬撃偉大なる御方の出番は何時だろう
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