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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
電撃戦

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再会

 あれから数日が経過した。

 トラブルなど何事もなかったように、誰もあの事件のことを語らなかった。コウたちもトラブルのことはあえて言わなかった。

 

 だが要塞エリア内での艦砲射撃については記録が残る。

 こっそりアシアが事務手続きを終わらせ、試射実験があり問題なしとの報告書だけがあがっていた。


「アシアから連絡があったね。アリステイデス級の新兵装の試射をしました、ってね。射手不明なのが笑える」


 ジェニーが笑いながら言った。

 現在、関係者がアリステイデスの戦闘指揮所に集まっている。


 艦砲射撃について聞かれ、ファミリアの映像をクルーに見せたのだ。


「あなたたちは何も心配しなくていいわ。私がいても間違いなくぶん殴ってる」

「うむ。迷わず撃つ」


 ジェニーが美しい顔に青筋を立て、リックまで、怒りを隠そうとしない。


「おう。俺が砲撃許可出したかったぜ」


 バリーも映像を見た。とくに幼い子供に割れたグラスで殴打はいただけない。その場にいたら自分でも殺していたかもしれない。


「三人組はグリズリーに乗った傭兵だったようだ。どのみち面接で落ちていたよ。ネレイスやセリアンスロープを奴隷といってしまうような男だ。当然だな」

「良かった」


 コウは胸をなで下ろした。やはり面接に受かるわけがないのだ。


「とっくにP336要塞エリアを脱出して、流れているだろう。そう遠からずストーンズ側に亡命するだろうな。戦場で会うこともあるだろう。油断するなよ、コウ」

「どういうことだ?」

「アシアの怒りを買った人間をファミリアは許しはしないということだ。人類勢力に居場所はないよ。ただの喧嘩ならここまでの介入はしなかった。アシアの逆鱗に触れたのはエメの件のほかに、被害者面して本当の被害者、コウを加害者に仕立て上げて、ファミリアを利用し社会的に抹殺しようとしたことだな」


 リックが詳しい説明をしてくれる。


「彼らはファミリアとコミュニケーションはもう取れないだろう」

「想像つかないんだが……」

「想像を絶する不便さだと思うわ。もう、町の動物たちの助けは二度とない」


 ジェニーもその末路を思う。同情はしないが、悲惨だとは想像つく。


「戦場であったら、決着を付けるさ。みんなに助けられてばかりで、申し訳ない」


 敵として現れてくれたら、迷うこと無く斬ることができるだろう。むしろ、それを望んでいた。


「何を言っているのですか。軽く嫌味ですよ」


 ブルーが薄く笑う。


「ここはあなたの味方しかいません。そう、きっとアシアも含めてね」

『そうね』


 アシアも相槌を打ってくる。


「あら、アシア。定着は順調?」


 ジェニーはわかっていたのか、ことなげに話しかける。


『うん! それに、コウのお客さん、本当のお客さんも到着したしね! これでここもますます盤石になるよ!』

「来たか」


 コウが再会を待ち望んでいた友人が、ようやく来訪したのだった。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆


 

 輸送機から降りた二人の男女。しかし、女性のほうは軍服で男はゴシック風のドレス。

 スカンク・テクノロジーズからやってきたフージャリンとマティーだった。


「ジャリン! マット! よくきてくれた!」

「はーい! いきなり私達を転移者企業にする非常識は誰かしら?」

「ジャリン。今更だよ。やあ。コウ。よくぞ僕たちに声をかけてくれた!」


 二人は再会をひとしきり喜んだ。


 まずアリステイデスに案内し、メタルアイリスの主要メンバーを紹介する。

 二人は緊張しているようだったが、ジェニーとアキは見知っている。次第に打ち解けた。


『いらっしゃい! 私がアシア。ジャリンにマットね? よろしくね!』


 アシアが会話に飛び込んできた。

 もうアリステイデスのメンバーには慣れっこだ。


「アシアだって?! は、はじめまして。お会いできて光栄です」

「うちのボスやコウがいつもお世話になっています……」


 惑星管理AIアシア。彼ら人類を守り慈しんできた超AI。

 超AIは神と呼ばれることを嫌っていると思っても、女神扱いは仕方なかった。それほどに人類へ貢献している。

 そんな超AIが彼らを名前で呼びかけたのだ。感動してしまうのも無理はない。


『そんなに緊張しないで。私、ここにいるから。あなたたちの力が必要なの』

「はい! 一命に代えまして!」

「全力でやりましゅ!」


 女装の美青年は今まで見たことがないほど、凜々しく敬礼した。構築技士として、アシアの声を聞けるのは大変名誉なのだ。

 ジャリンも緊張のあまり噛んでしまった。


『気合い入れすぎね。ふふ。おいおい打ち解けるわ。やることは、コウに聞いてね。じゃあ、また会いましょ』


 そういってアシアが消える。


「メタルアイリスの皆さん。これからご指導よろしくお願いします」

「緊張すんなよ。コウの友達だろ? 気楽にいこうぜ!」


 バリーが豪快に笑いながらマティーの肩を叩く。


「コウ? アシアがいるなんて私聞いてないんだけど?」

「あら。そんなに大事なこといわなかったの? ボス」

「ボス!」

「ボスぅ?」


 二人には転移者企業の創業以外、何も伝えていなかった。

 様々な疑念が広がる二人に、バツが悪そうに目を背けるコウだった。


 コウは二人を別室に案内し、詳細を伝えることにした。


「実に簡単なお仕事ね! 要塞エリアにいるアシアを守るために私達は転移者企業を創業して運営すればいい!」

「そうそう。簡単」

「なわけあるかー!」


 ジャリンにキれられた。

 現在はアリステイデスのラウンジの中だ。


「コウ。物事を矮小化して振るのはよくない」


 マティーも重々しく言う。一大事だと彼が一番わかっているだろう。


「そんなに大事かな?」

「転移者企業いくつ作るつもりなのよ、ここ」

「二人にお願いする会社と、クルト・マシネンバウ支社で三社かな?」

「どこに三社も転移者企業がある要塞エリアがあるのよ! 傭兵機構に何か言われるよ?」


 規模にもよるが、一つの要塞エリアに企業が集中するのは傭兵機構が望まない。

 リスク管理の面と、権力の集中化を恐れるためだ。

 とくに転移者企業本部は一つの要塞エリア一社が原則だ。


「傭兵機構は了解済み。というか、この要塞エリアの運営権はメタルアイリスにある」

「は?」

「傭兵機構にこの要塞エリアを任せようとしたら、いきなり俺らに振ってきたんだ。それは俺のせいじゃない」


 それは事実である。

 彼らの本命はシルエットベースだったのだろうが、そこはまだ語っていない。


「こんな大規模工業区画がある要塞エリアをみすみす明け渡すとは、何があったのかしら」

「それは順序が違うかな。要塞エリア運営を任されたから工業区画を増設した」

「なっ」


 要塞エリアそのものは二万年前の開拓時代の遺産だ。

 それを増設したり、改造したりした例はない。


「マット。私、ボスのもとに帰っていい? ここにいたらやばそう」

「怒られるよ。帰りたいのは、僕も同じだけど」

「そんなに心配することないよ。アシアもサポートしてくれるし」

「それが大事っていってんのよ!」


 アシアにサポートされた上での企業創業も前例がない。

 もちろん企業が力を付け、彼女を守る力を持つことを見込んでのことだが、それがわかるからこそ、重責なのだ。


「企業は二つ。俺の依頼の品を作る企業と、製品開発、生産をする企業。しばらくは委託生産をお願いするけどね」

「ドリルと半装軌車?」

「違う!」

 

 コウが設計するものはドリルと半装軌車というイメージが付いている。


「じゃあC級構築技士の僕は依頼の品を作るほうだね。開発はB級のジャリンに任せる」

「あんた、そういってすぐ楽なほうへ……」

「そうなるよな。では生産を頼む兵器を見せるよ。まずはマットに頼むシルエットからだ」

「コウ設計のシルエットを見ることが出来るのは初ね!」

「楽しみだ」


 彼らは最下層の格納庫に移動する。

 そこにあるのは、四つ足のシルエットと整備しているセリアンスロープたちだった。


「この四脚型シルエットが三種類、需要は二種類かな。それをマットに」

「ちょっと待って?! 四脚のシルエットなんて聞いたことがないよ!」

「セリアンスロープ専用だから」

「待ちなさい! さらりと爆弾発言しないで!」


 彼女も構築技士だ。セリアンスロープたちがシルエットに乗れないことは知っている。それが彼らの苦悩になっていることも。

 もしそれがシルエットに搭乗することができたら? 世界中からセリアンスロープが殺到するだろう。


「マットが改良してくれて構わないから」

「話を平然と続けないでくれるかな? これ普通の転移者企業を作ることより、大事だよ?!」


 コウは小首を傾げ、近くの狐耳のセリアンスロープを呼び寄せる。飛んできて、耳打ちし小言で相談する。


「そうなるっぽいね。彼が君たちのクアトロを量産する企業を立ち上げる予定のマティーだ」

「また神が増える……」


 狐耳の青年は畏怖するように呟いた。


「はは、おおげさだなあ」


 コウは最近すっかりセリアンスロープたちに持ち上げられ、彼らなりの尊敬方法だと思うようになった。

 心から言っているとはみじんも思っていない。


「いや、そういう反応になるのわかるよ。それぐらいのことだからね!」


 マティーも遂にキれはじめた。


「私、普通の転移者企業でがんばるから。それでいいから」


 楽な方を選んだはずのマットは、責任重大な事態になった。

 

「最初はこのシルエットの需要をまかなうだけで、忙しいと思う」

「だろうね! その需要なくなるとも思えないし!」

「次はジャリンに任せる方へいこう」

「ふふ。僕がこれだけの重責なんだ。ジャリンはもっと凄いに違いない……」

「あんた、そういうこというのやめてよね?」

「クアトロ以上のものはない気がする」

「さてはわかってたな!」


 格納庫は階層に分かれている。

 コウはそれぞれ、ざっと説明を行う。


「へえ。ファミリア用多目的戦闘機に、戦車に装甲車、輸送ヘリかあ」

「普通だろ」

「うん。それは認める」


 ジャリンが納得し、マティーが悔しがる。明らかにクアトロと違って普通の兵器群だ。

 

「最後のあれなに? 重攻撃機。空飛ぶ戦車じゃん」

「ボスの作ったタキシネタと同種だよ」

「タキシネタは二種類のシルエットなんて搭載できないんですけど?」

「二種類といっても、中は単なるコックピット代わりだから」

「なんで単なるコックピット代わりのシルエットが空中機動戦闘を考慮された設計になっているんですかねぇ……」

「空中だからだよ。墜落中脱出して反撃もできないようじゃね」

「盛りすぎ」


 ジャリンも呆れる機能を持ったサンダーストームだった。

 ブルーのために改良した結果、そうなっただけだ。


「あれは生産しても売れないんじゃないかな。燃料供給元がシルエットだから価格が高い」

「どういうこと?」

「あのシルエットに小型金属水素生成炉を搭載しているんだ」

「あえて二回言うわ。盛りすぎ。パイロット保護主義にも程があるんじゃないかしら?」

「偵察ヘリ含めて、他のも電磁装甲だったよね?」

「他のは貯蔵型だね。何せ、レールガンと対空ミサイルが飛び交う戦場だから、生半可な防御力じゃ飛ばそうとも思えない」

「それはわかるな。だから航空戦力がこの星からなくなったんだし」


 居並ぶ航空機を眺めつつ、ジャリンが呟いた。


「マットほどじゃないけど、私も忙しくなりそう」

「僕が苦労する前提なの、やめて欲しいな」

「注文がんばってさばいてね、マット」

「うぅ……」


 戦闘指揮所で、コウの非常識さを訴える二人を一同が大いに慰める。

 実に解せないコウだった。


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