新型アーティファクト
昨日は童話の方を投稿するのを告知し忘れていた…。
投稿しなかったの許してください。
「あれ…?」
最上階である4階は拍子抜けするほど何もなかった。
あるとするなら部屋の一面だけある窓と所々に転がっている小さな四角い鉄のブロックだけだ。
おそらく窓の部分はベランダとして使われていたのだろう。
「なんだ、ただの犬の溜まり場だったのか。」
そう呟いて肩の力を落とすと一気に疲れが出てきた。
今まで少ない体力を使っていたのだから当然だろう。
犬は全部倒したし、他の階にも何もなかった。ここはダミーだったのかもしれない。
何もないなら早く休憩して体力を戻すのが1番だろう。ネルにも早く来いと言われてたし。
最後の仕事として回収班を呼ぶために耳のそばにある無線機で報告する時だった。
「こちら雅人です。ポイント26の殲滅が完了致しまし——。」
突如、足元を転がっていたいくつもの鉄ブロックが突然意思を持ち始めたように動き出す。そして俺の前方で大きな塊になり————
「Arghhhhhhh!!!!!」
2メートル以上はあるアーティファクトが立ちはだかっていた。
「…は?」
相手は周りを見渡し、俺を見つけたようだ。赤く、無機質な目がこちらを見ている。
「Shaaaaa!!!!」
突然、相手は腕を振り回し、壁に叩きつけようとしてきた。
俺は突然のことに驚いて立ちすくんでいたが、すんでのところでなんとか横に転がり避けることができた。
すぐ横の壁を見ると完全にではないものの砕けていた。
あれに当たったらひとたまりもないだろう。急いで銃に手を掛け、数発打ち込む。
少し動きは止まったものの数発だけでは効いてないようだ。
相手はすぐにまた腕を振り回してくる。
避け続けながらどう対応するか思案した。
弾丸で効かないなら火力の勝る手榴弾を投げて削った方がよさそうだ。
「あれ…」
手榴弾の入ったポケットに手を伸ばした時に気がついてしまった。
前の戦闘で手榴弾を使い切っていたようだ。
まずい、これはまずい。瞬間火力のある手榴弾がないことには瑠璃で削り切るしかない。だが残弾が残り少ないのだ。とてもじゃないが削りきれる量じゃない。
しかし、このまま逃げる訳にはいかない。逃げたら周りの建物に被害が及び、この街の復興が遅くなり、しかも連絡がないと周りの隊員に負担を掛けさせてしまうだろう。
そんなことをさせたくはない。
もう一度耳のそばにある通信機に向かって緊急援護を要請するために動きを止めた。
それが一瞬の隙を与えてしまった。
相手はそんな隙を見逃してくれるほど優しくはない。
そして、壁に向かって俺の体は勢いよく吹っ飛んでいった。
「っかは!」
背中が打ち付けられて痛い。呼吸するのも辛い。
だが、ここで立たなかったら死ぬ。確実に死ぬ。全身に力を込めて立ち上ろうとするもできない。俺はこんなところで死にたくない。言うことを聞いてくれよ俺の体。
相手は俺に向かって手を近づけてきた。
ああ、このまま、手に潰されて死ぬのかな。虫みたいにプチってされるのかな。
もう考えたくなかった。
ただ目の前の景色が見たくなかった。
目を閉じた。
刹那、連射する銃声が聞こえた。
もう目を開けるのも億劫だったが誰が来たかは確認しないと。
「…シ…エル…?」
目の前で戦っているのはシエルだ。それも隊長とではなく1人でだ。
移動中の風貌からは想像もできないような速さと銃の正確さで着実にアーティファクトの目を狙っている。
目を潰した後、銃で四肢の関節部分にある導線を刻んで行く。
そして動きを完全に封じ、アーティファクトの上に乗ってコアを破壊しようとした。だが顔には悲しみが浮かんでいる。
「 」
彼女はなにかを呟いて胸元にあるコアに向けて銃弾を打ち込んだ。
「Nnnngggoooaaa!!!!!」
断末魔の叫びが辺りに響き渡る。
巨大なアーティファクトは可憐な少女によってあっさり倒されたのだった。
「マサト!」
敵が完全に動作しなくなったのを確認してから彼女はこちらに駆け寄ってきた。
「大変!大丈夫、意識ある?出血量はそんなにないけど頭をぶつけた様ね。ええっと、ネル!今すぐポイント26に来て!マサトが脳震盪を起こしてそうなの!っとよし、とりあえず横にしないと。」
俺の体を横に寝かした後、顔を覗き込んで頭の傷に気がついたらしく血をタオルで拭き取ってくれた。全身がひどく痛く、気が遠くなりそうになっているにも関わらず、タオルのいい匂いだけはしっかり感じられた。
「マサト、意識あったら返事して!」
「シエ…ル…」
と声をかけて、首を回そうとするとさらに痛みが増して来た。
「っ…!」
「よかった、意識はあるのね。でも背中を痛めてるようだから首は動かしちゃダメだよ。」
とこちらに意識があることが確認できて顔がほころんでいた。
その顔を見てようやく俺の緊張も解けたのか急に眠気が誘ってきた。
遠くで水の音が聞こえる。
もう少しで意識を手放しそうだったが、突然顔に冷たいものが触れて驚いて意識を掬い上げられた。
どうやら、濡らしたタオルで俺の顔を吹いてくれていたようだ。
「ああ、ごめんなさい。血が付いていたからタオルで拭おうとしたんだけど起こしちゃったみたいね。」
「…いや、大丈…夫。続けて。」
と言って再び目を閉じて眠りにつこうとする。
頭に触れる冷たいタオルは先ほどの戦闘で熱を持っていた筋肉を冷やし、なんというかとても気持ちいい。
「マサト!大丈夫か!」
意識が闇に飲み込まれる直前、ネルの声が聞こえた。
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