表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無力な俺に暁を  作者: 日下部 涼
3.慈愛の少女
7/23

単独攻略

文字数について考えるのは辞めました。

シュークリーム食べてきます。

戦場。


息を静かに吐き、建物の物陰に隠れてじっと機会を伺う。

目標は左に1つ、右に2つ。どれも馬のような姿で部屋を彷徨いている。

俺は自らの愛銃を握り直し、構える。

相手があちらを向いた瞬間、素早く物陰から出て無駄が無い動きで、仕留める。

3つの銃声が鳴り響く。


見事にコアに命中し、動かなくなった鉄屑を見下ろす。

いくら敵と言えども動物型のアーティファクトを見るとかつて飼っていたトラのことを思い出してしまう。

俺は少し悲しみに浸ってから回収班を呼んで次のポイントに向かおうとネルに声を掛けられた。


「おい、マサト。そろそろ休憩しろ。ずっと撃っちゃあ移動の繰り返しだ。集中力が切れるぞ。」

「いや、大丈夫だ。後もうちょっとしたら休憩する。ネルの方こそ休憩したらいいよ。その重たい機関銃を持ち運んでいたら体力が心配だ。」


ネルは少し考えた後、


「…わかったよ。お前も早く来いよ。その後は地下が無いか調べて見て生き残っている人がいないかどうか調べるからな。」


と言って、戻っていった。

大丈夫、とは言ったものの流石に弾丸も水も少なくなってきたし、後1回巡ったら休憩しよう。ここから1番近いポイントは…第2区画の露店の隣のポイント26か。

残り少ないボトルの水を飲んでから敵に遭遇しないように建物の影や屋根を伝い、現場へと向かった。


「…ここか。」


正面の建物は見たところそこらへんにある建物と同じような作りだろうか。

おそらくベージュの壁だったのだろうがすっかりくすんでしまっている。階数は4階でそれなりの高さがあるから万が一の逃げ道の確保のために下から攻めるのが良いだろう。



ポイント攻略は通常は2、3人で1つずつチーム単位で行うのだがチームのネルは休憩、シエルは今日初めての戦闘であるため、隊長の援護に行っている。

まあ、どうせいつもと同じ量の敵が潜んでいるだろうから、もう数年もやっている自分ならば1人でも2人でも変わらないだろう。

物陰に注意しながら地面に降り立ち、素早く窓を壊す。

そして俺は中の様子を注視して建物の単独攻略を始めた。



身を低くして周りの状況を確認すると人が住んでいた形跡はあるがひどく荒れている。

1階は仕切りが無く、広い部屋となっている。

そしてそこには沢山のダンボールが積み上がっていたり、大きな台や電卓のようなもの、汚れたエプロンのような布切れがあった。おそらくここは作業場で隣の露店を経営していたのだろう。


ダンボールはほとんどが空になっていたが子供のおもちゃや食べ物を乗せるであろうトレーや串などが入っているものもあった。

しかし、食べ物はない。おそらく生き残った人達か盗賊かが盗んでいたのだろうか、元々取り扱っていなかったのかのどちらかだろう。

そして肝心の上に行く階段がなかなか見つからない。

隈無く探して行くとなんとダンボールの壁によって隠されていた。その階段を使い注意深く階段を登った。



階段を上がった瞬間、腐敗臭が鼻を掠った。

どうやら2階は居住スペースでこの腐敗臭は冷蔵庫だったらしきものから発生しているようで、部屋はキッチンやリビングがある程度の形が残っていた。

タンスから衣服が出かけており、ガラスの破片や家具の木屑が床に散乱し、暖炉には除いてはいないがおそらく煤がこびれついているだろう。さらにカーテンは所々破け、光が漏れている。子供服が数枚あるので3、4人家族で暮らしていたのだろう。

服を一枚拾い上げて見ると生地はピンク色で首元に花柄が装飾されている可愛らしい服だった。


「ここで暮らしていた家族は無事なのだろうか…」


つい独り言が口に出てしまった。

家族に対しての憧れのようなものが、自分にはあったのだろう。

問いかけのような言葉に当然だが返答はない。

どうやらここの階にもアーティファクトはいないようだ。

今度は簡単に階段が見つかった。

部屋の隅にある壊れかけた階段を使い、足音を立てないように駆け上がる。



3階に上がると腐敗臭がより強くなってきた。

しかも果物とかではなく肉が腐ったような匂いだ。この階には部屋が3つあるのが見える。

まず手前の部屋に入ると若草色の壁紙と大きめのベット、


そして、血。


真っ赤な水玉模様が周りにポツリポツリとあり、部屋の中心は大きな円形に彩られていた。

死体はなかったがこの量は致死量だろう。こみ上げる吐き気に堪えながら次の部屋に入る。


今度は縹色の壁紙の部屋だった。

部屋の内部に一歩踏み込んだ瞬間、ワイヤーが横から飛んできた。間一髪のところで避け、銃を構えてワイヤーを飛ばした本体に撃つ。瑠璃から出てきた弾は一直線に本体の外装を貫通し内部を抉った。


「っと危なかった…。」


とため息と共に呟いた。

あと少し反応が遅かったらワイヤーの先端に引っかかってただろう、それも頭が。

部屋の様子は血の模様の代わりにワイヤーの発射口があったくらいの違いしかなかったので最後の部屋に向かった。


ドアに銃口を向けてふと違和感を覚えた。

敵はいつもの建物は各フロアに数体ずついた。


だがここでは1、2階にはいなかった。


3階も今の所はあのワイヤーだけで本格的な敵とはまだ遭遇していないのだ。

とすると、もしかしてこの先に集まっているとかか?という考えに辿り着いた。

いや、考えるのは止そう。集まっているとしても倒すだけだ。

大きく深呼吸をし、扉を見据えた。

愛銃を構えて引き金を引き、扉を壊す。


扉の先には予想通り敵が沢山いた。

さっきの2つの部屋よりかは広く、キングサイズのベットの残骸がある。

小型の犬のようなアーティファクトがちょこまか動いていたがこちらを認識した瞬間飛びかかってきた。


「くっそ!」


近距離戦だと分が悪い。

手榴弾でまずは数匹倒し、振り払いつつ後退して距離を取り、一体ずつ仕留めていく。

そしてかなりの時間を掛け、ようやく最後の一匹のコアを破壊し、動作を停止させた。


「っ…!」


戦っている時には感じなかった痛みが襲ってくる。痛みが走った左腕を見ると少し出血していた。

さっきの犬型アーティファクトに噛み付かれたのだろう。応急処置を済ませたが少し痛みが残っている。

だがあと少しだ。後1階だけ攻略すれば終わりだ。これくらいの痛みなら大丈夫だろう。

最後の階に続く階段を踏みしめた。


意見、文句、質問等あればコメントでもメッセージでも良いのでください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ