いつもと関わらない…はず。
今更ながら2000文字以下だと少なすぎる気がする。
でもこのシリーズはとりあえずこのペースで行きます。
移動用の車に揺られながらまた2、3日本部には帰れないだろうなと考える。
だが、いつもと変わらない。うん、席の場所も、愛銃の輝きもいつもと変わらない。いつもうるさいネルが大人しいとか隣に新人の女の子がいる事なんて変化に入らないはずなんだ。
「…あの。」
ああ、話しかけられたか。出来れば答えたくないがこれからも同じ隊でしかも同じグループだと思うと答えるのが懸命な判断だと思う。仕方なく彼女の声に答える事にした。
「…何?」
我ながら人当たりの悪い言い方だと思う。というか一体このタイミングで何を質問するのだろう。陣形の組み方?いやうちの隊は例えあったとしてもいつの間にか消えているようなものだし、ならばどんな場所に行くのか?とかか。いや流石に隊長が説明してるだろう。なら、趣味は何?とか、いやでも俺に趣味と呼べるものはないし。
だが実際の内容はかなり違った。
「あの、あなたのお名前を教えてください。」
「…へ?」
予想とは程遠い素朴な質問で思わず声が出なかった。
え、名前?名乗って…なかったか。うん、確かに陣形とか趣味とか聞く前に名前だよな。うん、見落としていた。
「えっと、俺の名前は吉良雅人。気軽にマサトって呼んでくれ。ちなみに日本出身だ。」
「マサト君ですか、よろしくお願いします。このフランス支部の基地で日本出身なんて珍しいですね。」
「うん、親がWRCに勤めていた関係でね。」
もちろん嘘だ。捨てられたなんて言えるわけない。
「私はシエル=エドモンドです、出身はイギリスです。」
「俺はネルソン=アルノルトだ、よろしくな。」
聞いてもいないのにネルが話しかけて来た。今まで大人しくしていたのは話しかけるタイミングが見つからなかったからか。だが今話しかけるのもどうだろうか。急にこんなデカブツに話しかけられたらケンカを売られた気分にならないだろうか。
「…!よ、よろしくお願いします。」
よかった、ちょっと驚いているが大丈夫そうだ。
ネルはその態度に笑って、
「ハハっ、敬語じゃなくてもいいよ。俺に対してもマサトに対してもな。」
と答えた。
「そういえば、シエル…さんはどんな銃を使うの?」
「私に気を使ってさん付けしなくてもいいです…いいよ。うーんと、この銃を使っているんだけど…確か琥珀っていうライフル。」
「え、これが琥珀なのか。」
琥珀は確か日本の海松杏という人ががデザインした銃の1つでHK416をもとに作られたカービンだったはずだ。海松杏は数々の素晴らしい武器を作り出しているがその中の『和色シリーズ』はとりわけ性能が良く、量産できない代物であり、それなりの実力がある俺やネルも持っている。それをシエルも持っていると言うことはやはりかなりの実力者なのだろうか。
「へえ、これがあの琥珀か。マサトの瑠璃よりゴツいけど、泥水とかに浸かっても打てるんだろ?確か。」
「そうそう。でも私はあまり浸かりたくないけどね。」
「そうだな。俺も浸かりたくないけどネルは気にしなさそうだな。」
「マサトは俺をなんだと思っているんだ!?」
俺はシエルと顔を見合わせてお互いに笑った。文句を言ってたネルもつられて笑い出した。だが、楽しい時間ほど過ぎるのは早く、飴のようにいつのまにか無くなっている。
不意にツヴァイ隊長は俺たちのいるシートの近くに来て、
「そこ、もうすぐ戦場だ。気を引きしめろ。」
と一言だけ告げた。先程のおどおどした様子ではなくいつものように真面目な様子で思わず背筋を伸ばしてしまう。いつもはこうやって厳しく尊敬できる人なのに支部長など立場が上の人に呼び出された時は残念になるのはもったいない。
「…怒られたか。ま、仕方ないよな。」
「そうだな。仲良くなるのは大切だ。」
「うん、そうだね。それじゃあ改めてよろしくね。ネル、マサト。」
そう言ってもう一度お互いに笑い合った。
『あなたの為なら地獄すら蜂蜜を加えたワッフルよりも甘い』もよろしくお願いします。
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