今の俺がある理由
文字がぎっしりありますがご了承ください。
大体の設定が詰め込まれているので読んでいただけると幸いです。
懐かしき始まりの日。そこから人類には過酷な日々が待っていた。まず問題になったのが病人の治療だった。昨日までAIによって最適な薬が出されていた世界にはどれだけすぐに治る薬があったとしても使い方がわからなければ使えないし、副作用の危険だってある。また、旧式の車は燃費が悪かったり、パソコンは遅かったりして使い物にならないものもあった。さらに電力が失われ、エレベーターが動かなくなりマンションに閉じ込められた人の救出作業も時間がかかった。
そして、数日たったある日、全人類の内の2割が死んだ。俺たちは自分たちの生活の維持に精一杯で空から降ってくる爆弾なんて見えていなかったのだ。中国の北京や上海、ロシアのモスクワなど人口が多い地域や、アメリカのニューヨーク、イギリスのロンドン、フランスのパリ、そして日本の東京など世界の主要都市が火の海に包まれ、世界は混乱に陥った。
だが、人類は諦めなかった。かつての生活を取り戻す為、そして人類が生き残る為に立ち上がった。あの化け物は我々を倒せば機械を取り戻せると言っていた。その発言に目を付け各国は連携を組み、機械に対抗するための準備を始めた。そして結成されたのが世界救済連合(World Relief Coalition)通称WRCだった。世界中の国々から能力のある若者を集め、再び機械を取り戻そうとする団体だ。そうして世界中から集めた人材を適材適所に振り分け、活躍させた。この俺もその団体の1人だ。
ちょうど父親は東京に出張中であり、俺と母親を残して死んだ。だから俺は父親の顔は知らない。
残された母親は自分だけでは俺を育てられないと当時7歳だった俺をWRCの孤児院に預けたのだ。
いや、預けたといえば聞こえがいいが、実際には捨てられたのと同じくらい酷かった。
俺が寝ている間にWRCの孤児院に連れて行き、そこの職員に預けて母親は行方知れずとなった。
そこから俺は孤児院で育ち、10歳で人生を決めれることとなった。
孤児院の子供は10歳になると能力値を測り、才能に応じた課に入ることになっている。大きく分けて4つの課があり医療課、農業課、事務課、そして軍事課だ。
俺個人としては死にたくはなかったので軍事課以外ならどこでもいいやと思っていた。しかし、課の決定の際、1番言われたくなかった言葉を言われたのだ。
『お前は軍事課に入れ』と。
それはまさしく死の宣告だった。医療課や農業課などに入ればまだ命の保証はあった。だが軍事課は違う。軍事課は簡単にいえば戦闘部隊であり、『アーティファクト』というAIを搭載した機械で出来ている敵の兵士を他の人間に被害を加えさせないために戦うのが仕事だ。言ってみれば、『兵士になって自分たちよりも強いAIと戦って死ね』と言われているようなものだった。
そして失意のまま俺は訓練のために後方支援の隊に入った。その隊長の名前は…なんだっただろうか。思い出せない。
とにかく俺を、いや俺たちを見た隊長は叱った。
「死ぬ前から死にそうな顔をするな!そんな考えじゃすぐ死ぬぞ。死にたくなかったら真剣に戦って生きろ!お前達は死ぬために軍事課に来たわけじゃない。人類の希望として選ばれたんだ!」
あの頃の俺は『誰だって英雄になれる』みたいな言葉に対して弱かったのかもしれない。あるいは自分を認めてもらいたかったのかもしれない。だが、その隊長の一言で隊の士気は確かに上がったのは感じた。そして2年間後方支援隊に在籍しその努力を認められ、俺は見事4年前に前線の我らが機動部隊α−4、通称オーバーチュア隊に異動する事となった。