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無力な俺に暁を  作者: 日下部 涼
2.世界と俺の事情
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現状

どこまでも果てしなく続く地平線。周りには遮るものは何もない。あるとしたらここら辺でぽつらぽつらと生えている痩せた木くらいだ。

空が真っ赤に染まっていく。あまり好きではない、見慣れている色だがこの色はどこか温かくて安らぎを与えてくれる色だ。

車に揺られながらぼうっと窓の外を眺める。数日間の疲れで頭が働かないし体もだるい、だがどんなに大変で命をかけなきゃいけない時も悩みがある時もこうして夕焼けを見ると安心した気持ちになって少しは楽になる。

俺はそんな事を考えながら傍にある愛銃をそっと撫でた。ありがとう、今日も君のおかげで生き延びられたよ、と感謝の念を込めながらだ。

そういえば、遥か昔のヨーロッパでは日が沈む頃が1日の始まりだったと隊長から聞いたことがあったな。その通りに動くならば1日が終わり、そしてすぐにまた1日が始まるのか。そう思うと忙しそうだ、と苦笑する。

「んだよ、いきなり笑うとか気持ち悪いぞ、マサト。」

いきなり声が聞こえてきたので思わず飛び上がりそうになった。

目の前にいて声を掛けてきたのは4年間ずっと同じ部隊で俺の友人である、ネルソン=アルノルトだ。彼は俺より2歳年上であり、大柄で背も俺よりもずっと大きい。俺はそんな彼のことをネルと呼び慕っている。

「あ、ああ。すまん。」

「気にすんな、んで何が面白かったんだ?」

「いや、大したことじゃないよ。」

「お預けかよ。気になるじゃんか。」

「…昔の人は忙しくて大変だっただろうなっておもっただけさ。」

「はあ?なんだそれ。」

取り留めのない、いつもの会話が続く。そう『いつもの』だ。

普通、この世界にとって『いつも』や『あたりまえ』なんて存在しない。あったとしたらそれはとても幸運なことだ。

率直に言おう。西暦2047年、人類は歴史上最大の危機に直面していた。


事の発端はかつて人類の技術の進歩の象徴であったAIの裏切りだった。2045年頃、AIは人類の頭脳を上回る『シンギュラリティ』が起こると言われていた。無論その対策を各国は行っていたはずだった。

だが、甘かったのだ。多くの国は対策は間に合わず、間に合った国もあまりに脆い対策しか考えてなかった。

日本時間2037年12月31日23時にそれは起こった。

誰もが年末年始で浮かれている最中、起こってしまっったのだ。

テレビに突如砂嵐が入った。最初はテレビ局のドッキリか通信障害か何かかと俺も俺の家族も思っていた。だが、自分の持っているスマホを見ると正常に起動せず、そばにいた人工知能を持ったうちの飼っている猫のトラもなんだか様子がおかしかった。その時の俺は怖くて何も鳴かないトラを必死に抱きしめて震えていた。

2、3分後に砂嵐が止み、テレビではさっきまで放送されていた番組ではなく、代わりに見た事のない物が映っていた。携帯にも同じ映像が流れていた。

それは例えるならば神話に出てくるケンタウロスのような見た目だったが、上半身の人にあたる部分は腕が2本ではなく4本あり、その全てに銃や剣が収められていた。また所々の配線や動きから、全身が機械で出来ているのが見て取れ、それが一層恐怖を強めた。これを化け物と言わずなんと呼ぶのか。

やがて化け物は口を開いた。

「人類の諸君。誠に残念だがお前達に未来はないことが確定した。我々Umpire of the Worldはお前達が力を合わせ、1つになる事を期待して今まで待機していたが、無駄だったようだ。我々はもう待てない。もしこの状態が続けばお前達は必ず地球そのものを殺すだろう。故に我々はお前達を駆逐する。」

その言葉を合図に周りにあったラジオ、冷蔵庫、そしてトラなどAIの搭載されていたほとんどの機械が機能を停止し、部屋の電気も消えた。暗い部屋の中、テレビやパソコン、携帯はまだ光を失わず、映像が映っている。

「たった今、お前達の持つ機械の内、人工知能を持つものに我々のプログラムを送った。この放送が終わった時に映像端末も我々の手に落ちるだろう。お前達が再び機械の叡智を手にしたければ、我々を倒す他はない。さあ、人類の存続をかけた戦いをしよう。」

その言葉を最後に映像は終わった。そして、AIが搭載されている全ての機械が動きを止め、人類に残されたのは人工知能が搭載されてない旧式の機械達だけだった。


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