1/3
プロローグ
ある日、とある世界で随一を誇っていた大国の王都が一夜で滅びました。
以前は高々と聳え立っていた雄大な王城は見る影もなく無残に崩れ落ち、人々が住んでいたであろう城下町の家々は今なお燃え盛る黒い炎によってか欠片も見当たりません。
もはや虫ほどの生命ですら存在しているかどうか不確かな、見たものすべてが死都と思わせるような元王都。
しかし、そんな元王都のちょうど中心の広場にただ一人たたずむ男がおりました。
美しい金や銀の刺繍が施された純白のローブに数多の宝石が散りばめられた一振りの杖を持つ金色の髪をした整った顔立ちの男です。
さらにその男が身に着けているものは全て一級品、見るものが見れば例え王族であろうと土下座して譲ってくれないかと頼み込んでしまうほどのものでした。
『ねぇ、おじさんは――――――』
そんな荒れ果てたこの場とは無縁そうな姿をした男は、自身が持つ杖以外にも何か抱えたままつい昨日出会った子供の言葉を思い出し
「……いいだろう、我に出来ぬことなどないのだから」
最後にそう呟いて指を鳴らすと、その場には本当に誰もいなくなりました。