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『戯』 その7

またも急ピッチなため後日修正します

「『炎熱焔人』」

 

 俺はその能力名を口にした。『炎熱焔人』、それは俺の所有する『焔』そのものを召喚する能力だ。『幻焔』とは違い、熱を操り炎を操り火をつけられる。燃やし熱し灯し焼き焙り煌き煙り燥ぎ燻し爆ざし炒め焚き炊き……すべての火という火、炎という炎を使う。

この強力な能力だが、使用するには面倒くさい条件がある。それは、こいつの――『焔』の気分が向いたらということである。気が向かなければたとえ召喚してもほんの数秒で消え去ってしまうし、向きすぎていれば一日中いたこともある。

だが、今日はかなりやる気があるようだ。こいつに任せておけばすべて解決してくれる、もう安心だ。


「まずはあの婆さんでいいのか?」


「いや、それよりも回復できる炎使えただろ?あそこで倒れてるやつは俺の……仲間なんだ。回復してやってくれ」


 それを聞き、『焔』は笑う。炎を揺らす。


「そうか、嬢ちゃんにも春が来たか!こんな小っちゃいやつをついにもらってくれるやつが!」


「……うっせえよ。それに仲間つっただろ。この殺し合いが終わるまでの一時的な仲間だ」


「すっかり口が悪くなっちまって……。いくら俺が女の子だと舐められないように、少し乱暴にしてみろとは言ったが、そりゃやりすぎだ。男が逃げちまう」


 参考にしたやつが悪かったな。今まで優しくされた試しがないからどう話していいかわからなかったんだよ。


「っと、あの様子じゃあんまグズグズしてると死んじまいそうだな。お前も一応回復しとくか?」


 『焔』が腕を振ると俺とドマは炎に包まれる。熱くはない。むしろ心地よい温かさのある炎だ。炎の熱により傷を塞ぐように皮膚が伸び覆っていき、血管が心臓がドクンドクンと動き血ができていくのを感じる。

ドマにもおそらく同様のことが起こっているはずだ。この炎の回復力は凄まじい。死にさえしなければ致命傷であっても30分ほどで回復しきれるだろう。


「さて、あとはそこの婆さんとガキか。いいぜ、二人まとめてかかってきな」


 『焔』の力ならドラゴンが数匹相手でも勝てるだろう。火系の漢字でもほとんど上位の存在の『焔』なら。

 

「早く起きんか。『鵺ノ鳴ク一夜』」


 と、そこで婆さんが呟く。


「ゲー」


 さっきまで炎に包まれ焼かれ死にかけていた鵺。それが婆さんの一言で復活し、婆さんの元へともどっていく。婆さんはよしよしと鵺の頭を撫でる。


「『鵺劇』で合成された鵺、それはまだ真の姿であって真の力ではない。『鵺ノ鳴ク一夜』で真の力となる」


 鵺を強化したってわけか。だが、生半可な強化じゃ『焔』の前じゃ敵どころかそこらの虫と変わらねえぞ。


「この鵺の真の力を見よ!その口からは火を吐き、動きは敏捷、爪は硬く、牙は鋭く、尾のヘビは猛毒、高い再生能力と知能を持つ鵺を!」


 強えな。タヌキの要素ないみたいだが。


「行け!鵺よ、やつらを蹂躙せよ」


 鵺が駆けだす。駆け出し、左右に揺れ、いつの間にか2匹へと分かれている。……こいつがタヌキ要素ってわけか。2匹は4匹に、4匹は8匹に分身する。


「ヒャハハ、数が多くなってきたなあ」


「笑ってねえで、お前も分かれろよ」


「分かってるって」


 『焔』もまた分かれて、分身していく。その数は鵺の倍、16の炎だ。幻ではない、すべて『焔』自身である。


 

 『焔』と鵺がそこらかしこでぶつかり合う。二つの炎と1匹の鵺がいたるところで。ある鵺は焼かれ、別の鵺は爆発し、蒸発する鵺さえいる。だが、1匹さえ鵺は残っていればまた分身する。


「儂の鵺の再生力を舐めるでない。生きてさえおれば瞬時に回復できるて」


「ゲー!」


 タフで増えることで死ぬことのないタイプか。まあ鵺の攻撃自体は『焔』が炎だから効いていない。ドマも回復できたことだしこのままじっくりと倒していきたい。


「ゲー」


「……うるせえ鳴き声だな」


 さっきから鵺の鳴き声か癇に障る。どこか力が抜けてきているようだ。


「……おい、嬢ちゃん。あの鳴き声はちっとばかしやべえ。どうも弱体化の効果があるようだ」


 そう言う『焔』の炎が小さくなってきている。


「儂の鵺の鳴き声は敵の全てを弱らせる。たとえ漢字であっても例外ではないぞ」


「ッ‼『焔』、一気に片づけろ!」


 まずい、いくら協力な『焔』でもこのままでは炎が消えてしまう。タフだからゆっくり倒そうとか思ってる場合じゃねえ。


「あいよ!」


 『焔』の炎は小さくなる。小さくなりさらに小さくなり……そして消えた。


「ほっほっほ!ついに力尽きおったか!後はじっくりと嬢ちゃんを料理するのみぞ」


 ……まだ『焔』の力の繋がりは消えていない。まだどこかに火がついているはずだ。


「……これで繋がったぜ!」


 8匹の鵺の周りをボウッと炎が囲んだ。逃げ場はない。火元は地面の草木だ。カバネとの闘いで俺が枝に熱を送っていたように、消えるようにして、地面に導火線を引くように一気に炎を付け鵺を囲んだ。


「さあ、終いといこうじゃねえか。逃げれるもんなら逃げてみろ。俺の炎から生き残れたやつは今までにこの嬢ちゃんただ一人だぜ」


 鵺を囲む炎の輪が縮まっていく。鵺たちは逃げようとするが炎に触れるたびに中央へと押し返される。炎が縮まり狭まり、最後には一つの炎となり、残っている鵺はただの1匹もいなかった。


「……儂の鵺が。……そんな」


「さあ、次は婆さん本人がやるか?今ならそこのガキに助けてもらってもいいんだぜ?」


 婆さんはハッと気づいたかのようにカラマンの方を向き、助けを求める。


「坊、儂を助けてくれるよな?仲間じゃよな?」


 カラマンはうーん、と考えるような仕草をした後、


「いいや、お婆ちゃんはここで死んでね」


 カラマンがそう言った後に婆さんの足元に亀裂が入る。


「……え?」


 亀裂は音もなく広がり婆さんを飲み込むとまた音もなく閉じていった。


「ああ、気づいているのかはわからないけど僕が『戯』だよ。よろしくね、乱暴なおねーさん、炎のおにーさん」


ブリスト

所有漢字:『鵺』


『鵺』

所有能力:『鵺劇』『鵺ノ鳴ク一夜』

『鵺劇』

 鵺を分解したトラ、タヌキ、ヘビ、サルを呼び出して使役する。それぞれが倒されるたびに他の動物にその動物が合体していき最後の一匹になったときに鵺となる。

『鵺ノ鳴ク一夜』

 火を吐き、動きは敏捷、爪は硬く、牙は鋭く、尾のヘビは猛毒、高い再生能力と知能を持つ鵺を強化する。その鳴き声は敵の能力を段々を下げていく。発動条件は『鵺劇』で最後の一匹となったとき。


あっと一話だー

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