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『戯』 その4

バトルに向けた前振りというかなんというか

 この『戯』につき合わされている殺し合いというゲーム、実はもっと早く終わると思っていた。6人で殺し合うとは言え、全員が二人一組の3チームである。しかも初日の朝には一人減っているためあと三人いなくなれば殺し合いは終わる。

 だが、二日目を終わろうとしている現在、状況は初日の朝となんら変わっていなかった。


「この島が広いからなのかな、全然会わないね」


「会わないというよりも避けられているのかもな」


 俺がまたも適当な塩で味付けした夕飯を二人で食べているときドマが呟いた。俺が返事をするとは思っていなかったんだろう。期待するようにこちらを見る。


「避けられているって?どういうことだい」


「婆さんと子供のチームは分らないが、あのカバネって女は『変』を持っている。大方俺らが減るのを待っているんだろう。一人になっちまったからな」


 しかもどこかで見張っているんだろう。鳥や何かに変身して。俺らとあの婆さんたちが闘っているのを見て能力や弱点を見極めるつもりもあるのかもしれない。


「昨日もそうしたが、見張りは交代で行うぞ。まずは俺からだ。2時間交代で時間が経ったら起こすからな」


 時計なんて持っていないため体内時計であるが、そこは任せてくれ。


「わかったよ。じゃあ俺は先に寝させてもらうね。おやすみボタンちゃん」


「とっとと寝やがれ」


 ドマは丸くなり寝始める。ちっ、無防備なやつだ。恐らく俺に対してはもう警戒心なんて持ってないんだろうな。


「……俺はお前とは違うぞ。信用はしてやるが信頼はしない」


 俺が今まで生きてきて汚くない大人に出会ったのはほんの数人だ。どんな聖人と言われたやつも実は裏で金を巡って権利を巡って争っていたのを見てきた。


「まあ俺が信用したってのも久しぶりだなあ」


 俺が信用しているのは決して裏切らない自分、それに指で数えるくらいの人間だ。信頼するのは唯一、『焔』という俺の力だ。

 この二時間、決して無駄にはしない。『焔』と『雹』でできることを考えておかなければ。氷と炎の相反する能力だ。使いどころを間違えれば互いに打ち消し合ってしまう。


「まあまずは俺の『焔』で空気中に水分をつくったりだよなあ」


 そんなことを考えているとあっという間に二時間は過ぎていった。




「じゃあ今度は俺だね。ゆっくり寝るんだよ、ボタンちゃん」


「二時間だからゆっくりも何もねえだろうよ」


 こいつには寝顔を見せたくないので後ろを向き横になる。顔を覗き込んできたら蹴っ飛ばしてやる。






 ……あいつ、騙しやがったな。いや、ゆっくりって言ってたから騙してはいないのか。


「てめえ、何で起こさなかったんだ」


 目が覚めるとそこはもう朝日が昇っていた。二時間どころかたっぷり6時間は寝ていたことになる。気を張り続けていたため俺も疲れていたんだろう。熟睡してしまい、途中で起きるなんてしなかった。


「いやあ、あんましボタンちゃんが気持ちよさそうに寝てるもんだからつい……」


 それを聞き俺は顔が真っ赤になる。気持ちよさそうに寝てる、つまりは見られていたんだな。


「……寝顔を見たのか?」


「起こそうと思ったときにね。そんな乱暴な言葉は止めれば?寝てるときは本当に可愛かったよ」


 最悪だ。蹴っ飛ばすなんて言っておきながらあいつに対する警戒心が途切れていた。仲間とは言え、完全に信用してしまったってのか俺が?


「……今日の夜も同じことやったらてめえに火つけるからな」


「それは怖いな。気をつけるよ」


「だけどお前、最初の二時間以外寝てないんじゃないか?そんなんで今日は大丈夫なのか?」


「元からそんなに寝れなくてね。昔からこうだから大丈夫だよ」


 体質ってやつか。便利なことで。


「じゃあ今日も行くか。今日くらいは誰か見つけるぞ」






 


 こいつと、ドマと仲良くなった気がして気が緩んでいたんだろう。それが油断に繋がった。いや、油断しなくても普通思うか?まさかあんなのにまで変身できるなんて。



 森を抜けた先は草原だった。見晴らしもよく、近くには湖も見える。これなら婆さんの『鵺』の動物も攻撃し放題だし、子供の『巻』の竜巻も逃げやすい。『変』も俺らに向かってくるようなのがいればすぐに気づけるから変身しづらいだろう。


「……ここで煙を上げてみるか。どいつか気づいて見に来るかもしれない」


「そうだね。お願いボタンちゃん」


 木のそばに座り込み、火を起こす。もちろん木はあらかじめ少し燃やし、カバネが変身していないか確かめた。そこから枝を集めその枝を燃やす。


「俺の『幻焔』は350℃って炎としては低い温度だが、それでも枝に熱を集中させれば燃える。……いい機会だから言っておこう。俺の『幻焔』の能力は熱と幻だ。350℃までの熱と幻の炎を創り出せる。普通の炎もつくれないが操るくらいはできる」


「へえ、すごいんだね。でも俺に言ってよかったのかい?」


「……それよりも何で黙ってたんだとか言わないのか?俺はお前を騙してたんだぞ」


「何か隠していたのは分っていたからね。それにもう話してくれたんだからいいんだよ」


 と、そこで風が吹く。記に生えていた葉、地面に落ちていた葉が風に巻き上げられ俺たちのほうへと飛んでくる。一瞬、『巻』の能力かとも思ったが、周りには誰もいない。どうやら気のせいであった。ドマの顔、髪、服にはいくつもの葉がついており、俺は笑いながらそれを取ってやろうとしたとき、


「へえ、そんな能力だったんだ。すぐさま殺しにかからなくてよかった」


そうドマのほうから声が聞こえた。周りにいたのは『巻』を所有する子供ではなかった。

 『変』を所有する保漢者、変身能力を持つカバネ。だが、ドマに変身しているわけではさなそうだ。


「ここよっ、て言えばようやく気付いてくれるかしらね」


 それはドマのほうから聞こえるがドマではない、ドマの服から聞こえてきた。正確にはドマの服についている葉。


「まずは一人目」


 葉の先からなにやら尖ったものが飛び出す。それはドマの身体を突き破り易々とドマの背中まで貫いた。


「……え、あれ?」


 ドマが倒れ、葉がヒラリと舞う。

 葉からは手足が生え、さらに顔や身体もでてくる。


「っ‼『幻焔』」


 この距離なら350℃の熱も使える。カバネが変身しているであろう葉に熱を送る。だが、早々に変身を解き元の姿に戻ったカバネは一歩、身を引く。


「実はね、ずっとあなたたちのことを見てたんだけどね。つい、出てきちゃった。それで思ったんでけどさ、あなたの熱を送る能力って人ではなくその場所に送ってるんじゃない?」


 その通りであった。『幻焔』は1秒をかけ熱を指定した座標に送る。だから避けるのは容易い。いつもは幻と一緒に使う能力である。


「ドマ!傷を見せて見ろ」


 まだ傷口を燃やして止血すれば間に合うかもしれない。俺もこいつも回復できる光魔法や回復系の漢字を所有していない。だが、一日でも持てば、こいつらを皆殺しにして街へ帰ることができれば、治せるかもしれない。


「……ごめんよボタンちゃん。でももういいよ、自分でわかる。この傷はもう致命的だ。俺のことはいい、まずはあの女を殺しに行ってくれ」


「……わかったよ」


 確かにこいつのいう通りこの女を逃がすわけにはいかない。俺の能力を知られたこともそうだし、ここまで変身できる能力も厄介だ。それに何より


「俺の仲間を傷つけてこのまま逃がせるかよ」


 こいつは俺が殺る。あの愚かであった両親のように炎で焼き殺す。


「ついでにあなたを殺せば私の勝利も目前ね。残りはあのお婆ちゃんか子供のどっちかでいいんだもの」


「俺も残りの力で闘うよ。傷くらい、『雹』で無理やり凍らせれば少しは持つ」


 ドマは何とか起き上がり、周囲に雹を創り出す。


「ったく、俺が殺すって言ったのによ。まあいい、行くぜ!『幻焔』」


カバネ

所有漢字:『変』


『変』

所有スキル:『変化』『万象変化』

『変化』

身体の一部を武器などに変化させる。硬度は自分以上にならないので骨程度。

『万象変化』

身体すべてを物質であればなんにでも変化させられる。質量、大きさなどすべてその物質と同様になる。攻撃力、防御力も同じになるためあまり小さいものに変化すると不利になる。ただし、自分以上の攻撃力、防御力にはならない(変化自体はできる)。  



何時間カバネは葉っぱに変身してたんだ?って疑問がある人いるかもしれないので説明します。

もともと虫に変身して接近→風が吹いたので葉っぱに変身→ドマか主人公のどっちかにくっつけばいいなと思っていたらドマの服に貼りつけられたので一部を剣に変身しドマを刺し殺す(まだ死んでいない)

そして現在です。ちなみ虫や葉っぱに変身している間は防御力も虫や葉っぱと一緒になっちゃうのでけっこう脆いです。

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