第二章 ウルプス
俺の名前は湊未来。カナに、よってこの世界に召喚されるまでは高校生であった。
この世界に来た理由はカナの両親を救うため・・・・そう思っていた。が、否。他にもりゆうがあった。
イグニス。そう、かつて俺が倒した奴の名前だ。そいつが継承者を残していった。
つまり、俺がこの世界に召喚されたもう一つの理由。それは、イグニスの継承者を倒すことだった・・・・
──旅立ってから二日後。俺はこの二日間野宿の繰り返しで何の進展もなかった。
そろそろ街の一つでも見つけてもいいはずなんだがそう上手くは行かない。
今の時刻は夜。場所は森の中。俺は暗い森に焚き火で火をおこし明かりを灯していた。
「そろそろ転移魔法使おうか・・・・」
いや、それだと旅の意味がない。この二日間そうやって自分に言い聞かせていた。
そもそも転移魔法を使わず旅をする意味って何だ?
「・・・・・・・・・・・・」
「転移魔法展開! ウルプス!!」
ようやく俺は二日間という短いようで長かった野宿から脱出した。
え? 転移魔法使わないんじゃなかったかって?
答えは簡単だ。
だって、転移魔法使わない理由がないから!!
俺を取り巻く眩しい光が消え去った。っと、同時に賑やかな民衆の声と、栄えた街の風景が現れた。
やはりこの世界の街というのはレンガ、石材を中心に建物を建てている。
こういう街のことを西洋? って言うのか。
俺は辺り三百六十度見渡しながら歩き出した。
ウルプス。この世界で最も栄えた街の名前。日本で言う東京のような場所だ。
この世界に来てから何度も耳にした名前で、さっき転移魔法を使った時も頭に浮かんだのがこの町だ。
どれくらい歩いただろうか。俺がそれを目にしたのは・・・・
「みんな~!! 今日も元気~??」
「「うぉぉぉぉぉぉーー!!!!!!!」」
マイクを持った可愛い顔立ちの女の子が叫ぶと同時に、目の前にいるざっと百人近くの人がどっと歓声をあげた。つまりだ、アイドルを想像してくれればわかると思う。
「聞いてください! 未来の道しるべ」
「ミーナ! ミーナ! ミーナ! ミーナ!」
予め打ち合わせでもしていたのか、百人近くの民衆が呪文のようなもの叫んでいる。
「♪~~~~」
気づけば俺も彼女に視線が釘付けだった。歌も上手く一言で彼女を表すなら・・・・この世界のアイドル・・・・っと呼ぶべきか?
ライブ? のようなものが終わり百人近くの民衆が一斉に帰り始めた。俺も民衆の波に乗りその場から去ろうとした時。
「ね~君。」
「え、あ。俺?」
自分に人差し指を向け問う。
「そうそう。始めてみる顔だったから。でさ、どうだった? 私の歌は」
長いピンク色に染まった髪をゆらゆらと揺らしながら質問をしてきた。長い髪・・・・っといってもストレートではなくポニーテールで結んでいる。
「ん~と。上手かったんじゃないか?」
「んー。思ってないでしょう! 顔見ればわかるんだからね?」
ちょっと起こり気味に言う彼女。
顔見ればって・・・・上手かったのはほんとだぞ。内心でそう呟く俺だったら。
「ねね! 名前なんて言うの? 私の名前はミーナ!」
「名前? 誰の?」
「君・・・・バカなの?」
「冗談です・・・・。名前は湊未来」
「湊・・・・未来ね。わかった」
「え?」
「んどうしたの?」
「いや・・・・なんでもない」
ミーナって今、俺の名前を普通に喋ったよな? つまりだ、発音と言うかイントネーションが日本人特有のものを感じた。アカネに名前を教えたときは、『ミナトミライ』って、カクカクとした喋り方だった。・・・・って考え過ぎか。
あれから二時間後? たっただろうか。
ニーナはやたらと質問を重ねてきてなかなか話が終わらなかった。「どこからきたの?」「見かけない格好してるね」等々。それと、一つ。なぜニーナは俺に話しかけてきたのだろう。
話が終わり、「まったね~」っとニーナに言われ別れたあと、俺は近くの宿に止まった。今日はやけに疲れていて早く眠りにつきたい気分だった。が、そんな気分も一瞬にして吹き飛ばされて。宿屋の受付カウンターにそいつはいた・・・・
「あれ、未来。奇遇だね~」
「またお前か」
「またとはなによ! 私みたいなアイドルとお話できることって、そうそうないんだからね?」
別に話したくない。アイドル興味ない。アイドル好きのみんなは気を悪くしないでくれな? 別にアイドルに偏見を持っているわけではない。
「はい、これ部屋の鍵」
「おぉ、サンキュー」
差し出された鍵を片手で受け取り部屋へと向かう。鍵にはプレートが一緒に付いていて、部屋番号が書かれていた。「201」っと。
今日は引っかかることがたくさんあった。ニーナのイントネーション。アイドル。宿屋の受付。
そして、話しかけてきた理由。・・・・考えるのはよそう。眠いから・・・・
そのまま俺は部屋のベッドに横たわり眠りについた。
ドスッ!
なにやら体に負担がかかった。いや、体の上に何かが乗っている・・・・そう表現したほうがいいかもしれない。
ゆっくりと目を開ける・・・・・・・・
「やぁ、お目覚め?」
「・・・・」
ニーナが仰向けになった俺の上にまたいで乗っていた。
「お前・・・・そこでなにやってるんだ?」
「当ててみなさい」
俺は身体をいきよいよく起きあがらせ、上に乗っていたニーナごと。当然のごとくニーナは落ちるわけで「イタ!」と言う声が耳に届く。
「なにするのよ、急に!!」
「それはこっちのセリフだ!!」
真夜中に上に乗っかられた方が怒られるって、どういう始末だよ!!
「それで、何のようだ?」
「んー? 遊びに来たんだよ?」
俺はその言葉を完全にスルーして眠りについた。
昨日せいで完全に寝不足で、カウンターへと向かった。
「おはようございます。お客様」
明るい笑顔と声で挨拶をするニーナ。
「なんでお前は元気なんだよ!」
何なんだニーナって・・・・
今回も読んでくださりありがとうございます。
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