決断 召喚術師になるorならない
近年。この世界では召喚術師が減少していると言う。召喚術師と言うのは、全く異なる世界。つまり、異世界から人を連れてくることを召喚と言う。そして、異世界から人を召喚する人たちのことを、召喚術師と呼ぶ。が、今は召喚術師の人数が減り始めている。
その原因は不明。
その結果。俺を術師にさせるためこの世界の少女、カナは俺を召喚した。
カナから話を聞いてから数日後のことである。
「未来。答えはきまったかしら?」
「だ~か~ら~。何度も言うように、召喚術師にはならないって言っているだろう」
「ならない、じゃなくてなるの」
俺に召喚術師になれ。っと、ここ最近ずっとカナに言われ続けているが、逆に断り続けてもいる。
召喚術師になったところで俺にとってのメリットがあるかといえば否。むしろ、デメリットしかない。
「そもそもどうして召喚術師が必要なんだ?」
と以前にカナに問うた。
答えは、
「召喚術師がいないといろいろ困るのよ」
だそうだ。
そして、今に至るわけだが。俺の答えは一向に変わらない。俺はとにかく家に帰りたいとカナに言っているのだが。
「なにを言っているの。あなたの家はここじゃない」
全く話が通じない。
まず、召喚術師になってなにをしろと。それは、俺でなくてはいけない理由でもあるのか。疑問に思うところはまだ山ほどある。が、今はカナを説得させて家に帰ることだけをここ最近考えてきた。
──翌日。
俺は、今日も家にカナが来るんだと思っていた。が、否。確かに家には人は来たが、カナではなかった。
「未来君。お邪魔するよ」
か細い声でそういうと、家の扉を開けてなかに入ってきた。
「村長!?」
家に来たのはカナではなく、村長だった。
この村のリーダーであり、一番の年配者でもある。年齢は八十を越えているのではないか?
「カナから聞いてね。未来君、召喚術師になってはくれんかね」
「いえ、その。俺は家に帰りたいのが一番で・・・・・・その、」
村長は俺の言葉を最後まで聞かず・・・・いや、聞く必要がなかったのか、
「そうか」
っと、寂しげな声で答えた。
とてつもなく悪い気分になったが、やはり召喚術師の話になるとまた別だ。
「あの、村長。教えてくれませんか。召喚術師が必要なことを・・・・」
村長は数秒の間を置き、口を開いた。
「カナの両親は召喚術師でな。昔はとても有名な二人じゃった。が、5年前・・・・」
それは、とてつもなく悲しい。事故だったそうだ。召喚儀式の最中に『デーフェクティオー』(失敗)が起こり、二人の行方は不明となったそうだ。だが、考えられる可能性は異世界に飛ばされたこと。だから、カナは両親を異世界から連れ戻そうと召喚術師を探しているのだと村長は語った。
召喚術師がこの世界では減少しているため、異世界から俺を召喚したらしい。
村長が家を出ていった後、俺は悩んだ。
召喚術師になることをあんなに拒否していたのに、今はなってみようかと言う感情が芽生え始めていた。村長の話を聞いてのせいだろう。
だが、俺を召喚できたのなら、カナ一人で両親を連れ戻せないのか? っと村長に問うた。
答えとしては、連れ戻せないらいし。
原因はカナ一人のでは、力不足だそうだ。だが、異世界から来た俺の力と会わせれば無理な話ではない。そう、村長は語った。
召喚術師になっても俺にはメリットがない。が、困っている人がいれば放ってはおけない。
頭をフルに使い試行錯誤をする。
俺はどうすればいい。
なにをすればいい。
なにをしろと言うんだ。
俺はいままで、召喚術師を拒否した。その理由はなりたくないから。だけど、今は違う考えだ。
俺に召喚術なんてできるのか?
──翌日。
昨日とは違い、家にはカナが来た。
「勝手にこの世界に連れてきて悪かったわ。私の勝手な都合で本当にごめんなさい。今からあなたをもとの世界に返すわ」
カナはそういうとなにやら準備を始めた。
つい、二、三日前なら帰れることに喜びを覚えていただろう。だが、なぜか喜べない。
むしろ、このまま帰ったら罪悪感しか残らないだろう。
「カナ!! その、俺・・・・」
「何?」
今俺はなにを言おうとしたのだろ。勝手に口が動き、勝手に喋り始めた。
「俺、召喚術師になってやるよ!」
俺は、召喚術師になること決断した。
「え、でも・・・・いいの?」
「あぁ」
その瞬間、少女の瞳から涙が水滴こぼれ落ちた。
「あ、ありがとう」
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