始まり 少女との出会い
──ここが地球でなければ日本でもない。全く別の世界だと言うことまでは整理できた。
が、なぜ俺はこの世界に来た。
自分の家の自分の部屋の自分のベッドの上にいただけで来れる所ではない。あ、誰かに『召喚』されたとか? そんなファンタジーなことってあるか? ・・・・・・
あ~、もうわかんね。
頭をぶるぶると横にふり、両手のひらで両頬をパチンっとおもいっきり叩いた。
・・・・当然痛い。
周りからなにやら沢山の視線を感じる。
辺りを見渡せば民衆たちの視線が俺一点に集中していた。例えるなら、みんな同じ服装なのに、一人だけ違う服装をしている感じと同時に、素朴な感じを覚える。
───ダダダダダダ!!
民衆から注目されている中、背後からものすごい足音が耳に届き、後ろを振り返る。
瞬間、両肩をガシッとものすごい力で掴まれ、一言。
「やっと見つけたわ!」
「え、あ、はい??」
俺は唖然とした顔で目の前の少女を見つめている。 ショートヘアーというのか、髪は肩ほどまで伸びており、美しい赤色に染まった髪の毛は、走ってきたせいか随分と乱れている。
「え? なに」
急に両肩を掴まれたせいか、俺はいまだに混乱している。
「説明はあとで、ちょっと一緒に来て!!」
少女は急いでいるのか、両肩を掴んでいた手は今度は俺の腕の袖を掴んだ。と、同時に少女は「転移魔法展開! コロッセオ!」と叫んだ。
瞬間、辺り一面光に包まれた。いや、辺りが包まれたのではなく、正確にはおれ自身が包まれた。
光に包まれたかと思うとそれもつかのま。
ほんの数秒で光は徐々に消えていった。眩しかったせいか無意識に目を閉じていた。閉じていた目をゆっくりと開けると、そこにはさっきまでの街ではなく、全く別の場所が広がっていた。
少女は掴んでいた手を話すと、スタスタと前へと歩いていった。
「ついてきて」
俺はなりふり構わず少女の後についていった。
俺の今いる場所は、さっきまでいた街とは違い村? 辺りを見渡せば畑仕事をしている人、そこらじゅうを走り回っている子供などがいた。
「やぁ、お帰りカナ」
「ただいま」
どうやら、赤色の髪の少女はカナと言うらしい。
カナという少女に話しかけてきた男性は、見た目三十代半ばだろうか。
「その子は・・・・例の?」
「えぇ。」
突如男性は俺の方に視線むけてきて、「この子が・・・・」っとなにかブツブツとつぶやいていたが聞き取れなかった。
「急いでいるから、もう行くわ」
そういってカナはまた歩き始めた。俺もそれに続いた。
しばらく歩き、カナは足を止めた。目の前には一戸建ての建物があった。見る限り石材を中心に造られた建物は表札に『ミナト』っと書かれていた。
「さぁ、入って。今日からここがあなたの家よ」
なにがなんだか分からなくなった俺は言うがままに建物の扉に手をやる。
鍵は掛かっていなかったのか、扉はギィギィギーという音をたてて開いた。扉は一般的な開き戸や引き戸ではなく・・・・・・いや、開き戸には違いないが、観音開き式となっていた。
俺は建物の中へと歩を進めた。
俺に続いてカナも後ろから建物の中へと入ってきた。
「いろいろと説明することはあるのだけれど。・・・・あなた、召喚術師になる気はない?」
あれからどれ程の時間を要しただろうか。
俺はカナからいろいろな説明を聞いた。
話によれば、この世界に俺を連れてきたのは、いま、まさに目の前にいる少女。カナ本人だった。連れてきた理由は、この世界では近年、異世界から人を連れてくる『召喚術師』というものが減少してきているらしい。だから、俺を連れてきて術師にさせたいらしい。
だが、別に俺を特定して召喚したわけではないらしい。つまり、たまたま召喚したのが俺だったというわけだ。
「もう一度言うわ。未来。召喚術師になってもらえないかしら。いいえ、なってもらうわ。」
その言葉は俺にとって一つの強制そのものだった。
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