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短編の群

私の半分は魚でできている?

作者: 小林晴幸

過去の作品を漁っていたら、こんなものが出てきました。

2013年の作品です。


 私の名前は真の魚と書いて、マナ。

 お父さんは人魚で、お母さんは半魚人。

 普通、逆じゃね?って思うよね。

 私も思った。



 お父さんは海水に身を浸すと、下半身が魚になる。

 サファイヤブルーの鱗をきらきらさせて泳ぐ様は、優美の一言。

 お父さんの鱗、青くてきれいって言ったら、保護色だからって返された。


 お母さんは海水に沈むと、全体的に魚っぽくなる。緑の鱗が輝くよ。

 ……うん、他にどう言えと? とにかく魚。魚っぽい。

 昔、漁師さんに怪魚と間違えられて捕獲されかかったくらい、魚っぽい。


 そして二人の娘である私は、今まで一度も海に入ったことがない。

 だから私は、自分が海にはいるとどんな変化をするのか、知らない。

 何でって? そんなの、怖いからに決まっているでしょ。

 だって体が変わるんだよ? 変身だよ?

 それもお父さん似ならまだ救いがあるけど、お母さんに似たら目も当てられないよ?

 下手したら全身魚なんだよ?

 ううん。そもそもどう考えても、下半身は魚。

 そして上半身は……

 …………。

 ………………。

 そんな悲しい賭、結果なんて知りたくないよ!

 プールとか河とか、真水で泳ぐ分に不自由ないし、海には絶対入らない!



「でも、二分の一の確率でしょ? あんた顔はお父さん似だし、大丈夫じゃ?」

「他人事だから言える言葉だよね。人魚になるのは正直、四分の一の確率だと思うけど、あんたなら挑戦できる?」

「なんで四分の一?」


 首をかしげる友達の亜唯子ちゃんに、私は言ってやったよ。


「両方の遺伝子が相殺しあって変身しない可能性もあるけど、逆に両親双方の特質が同時に出る可能性も否めないからだよ!」

「というと?」

「……人魚と半魚人、魚割合強めにビジュアル足したら?」

「あー……どんまい」

「ドラ○エにそんなモンスターいたよね……」

「あんた、言っちゃ悪いけど、遺伝子的には立派なモンスターだよ」

「それは人種差別発言だよ! (ぎょ)っぽい人たちも必死に生きてるんだからね!?」

「そう言いつつ、実はあんたが一番差別してるでしょ」


 一度も変身したこと無いのにモンスター扱いしてくる悪い友人に、私はチョップをくれてあげました。

 私、モンスターじゃないもん! 多分!!



 普通に考えて海の底の王国で生まれ育ってそうな私です。

 でも生まれてこの方、私は海に入ったことがない。思いっきり陸育ち。

 なんでかというと、うちの両親が駆け落ち夫婦だからです。

 お父さんは人魚の王国、女王の息子。王子様です。

 肩書きまで鱗のようにきらきらしいのは仕様ですか?

 お母さんは半魚人の王国、大王の娘。お姫様です。

 半魚人の王国……10代乙女として、絶対に足を踏み入れたくない。


 私は父に問いたい。

 何故にあんな魚っぽい嫁を奪ってまで求めたんですか?と。

 聞いたらお母さんが泣きそうだから聞かないけど。

 こんな酷いことを言う娘だけど、お母さんのことはちゃんと大好きだよ。

 うん、本当はわかってるよ。愛でしょ、愛。

 でも海の中にいるときのビジュアルが強烈すぎて……母さん。                                                                                    

 両親のなれそめは互いに一目惚れだと、話に聞きます。

 普通にお父さんの趣味を疑いました。

 半魚人に一目惚れする感性が、普通にわからない。

 私が陸育ちだから? だから私にはわからないの?

 半分は半魚人だっていうのに、私は薄情かもしれない。


 似たような生態、似てないけど通ずるもののあるビジュアル。

 それなのに何故か、二つの王国は仲が悪いらしいよ。

 お父さんとお母さんの結婚も普通に反対されたって。

 海底のロミオ&ジュリエットとは本人談。ヒロインのビジュアルきっついけど。

 そこで駆け落ちを成功させたあたりは、物語よりもやり手だと思った。


 海の底で幅をきかせる二つの王国からの逃亡劇は熾烈を極めたらしい。

 いっつものほほんとしている両親の言だから、どこまで本当か知らないけど。

 でもそれぞれの国の跡取りが国を捨てて駆け落ちだから、追っ手がかかったのは本当みたい。

 何があったのか知らないけど、たまに追っ手だったって人からお中元が届く。

 うん、逃走のさなかに何があったの……?

 何をやったのかは知らないけれど、結局若い駆け落ち夫婦の二人には海の底で居場所など無く、安息はほど遠く。

 そこで地上いこっか!と割り切る当たり、うちの両親は大物です。

 そして未知の領域である地上でのほほん生き延びてるから、本当に凄い。


 最初に金銭を稼ぐ手段として考案したのが、自ら見せ物という強烈すぎる事実をどうなんだと思うわけではあるのですが。



 そんな両親から生まれた、私。

 今後も海には絶対に入るまいと、毎年誓いを新たにしています……。




最後まで読んでいただき、有難うございますv

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― 新着の感想 ―
[一言] 半分どころか、3分の2は確実に魚っぽいね!(笑) 海水浴にはご注意をw
2015/06/07 17:21 退会済み
管理
[一言] 続きが気になります
[良い点] 主人公視点のエッセイ風?、もしくはお話のプロローグ?みたいな感じですね。 どこがと言われるとこまるのですが、なんか雰囲気が良いなって思いました。
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