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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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這う燈

作者: 古井雅
掲載日:2014/12/25

今までメモ帳からコピペで作成していたのですが、それだと変なところで改行してしまっていたので、出来る限り解消しようと実行。テスト投稿的な認識です。今まで私の文章を見てもらった肩で、この方が良いという人は感想とかメッセージで連絡を下さると助かります。多分これだけで解消できる問題じゃないので、もしこれでおかしいことになってると代替案必要ですし(´;ω;`)



自分のしたことに後悔のない人って少ないような気がする。救いきれない想い出とかもあると思う。

いなくなれば全てなくなるなんてこともきっとない。だけど何か救いを求めて動くのが人なのだと思う。

例えばその行為が、二度と戻れないものでも、状況によってはそれを実行してしまうこともある。後から後悔することは多いけど、結果的に良かったと思えることもある。

そのわずかばかりの可能性を信じたいから、とりあえず動いてみる。戻れない道でも辿ってみる。





目の前に不気味に佇んでいる骨。骨格標本にも似ているような配置はとても綺麗で、今にも動き出しそうなほど美しい造形を保っている。

悲しいほどに燦然と輝く骨の塊は、少し日を浴びて光沢を見せている。ニスのような艶を放ちながら、変わりゆく世の中を見つめるような骸骨の頬を、少しだけ自分の頬と擦り合わせてみる。

少し生臭さの残っている骨の頬に触れた自分の頬には、未だに骨のごつごつとした感触が残っていて、少しだけ擽ったい気持ちになるのは、この骨が誰なのかを知っている自分だからこその反応かもしれない。

決していい匂いではない。ましてや柔らかな手触りとは程遠く、異質な感覚が常に這わせた手のひらにまとわりつくように残っている。体温すらも感じられない冷たい手先に触れてみて、その存在を改めて認識するように手を握る。


「……本当に、君はこれでよかったの?」


何もない部屋、本当に目の前の骨格標本(きみ)しか佇んでいない部屋に自分の声だけが残響している。

ベッドも、ソファも、テレビもパソコンもない部屋の中、差し込んでくるのは真上に存在している太陽の可視光線だけ。普段鬱陶しいほど明るく光る太陽光も、この時ばかりは少し、儚く悲しく、祝福してくれているようにも見える。

泣き声にも似た携帯電話の音も、今の自分の耳に届くことはなくて、流れていく水音だけが自分のココロの中に響いてきた。


「僕は、寂しいよ。君と一緒に座ったソファももうないよ。そればかりか君と一緒に使ったものは全部処分しちゃったよ。君がそうしろっていうから、僕は大切なもの全部捨てちゃったんだよ」


嫌味っぽい言葉でさえも、気休めのように響いて消えてった。

答える声もなくて、自分の声だけが耳障りに聞こえてくるんだよ。いなくなった人に返してもらいたい言葉なんて、今ここにはない。猟奇的な意識の中で揺れ動く一人の人だけが残ってるなんて、実に滑稽なものだった。

今届かない言葉なんて、なんの意味もないんだよ。人に伝わらない言葉の意味は、欠け落ちた月のように脆いんだ。僕の耳には届かない慟哭が、僕の心にはずっと響いて働きかけてくる。嫌だって言っているのに、心の片隅でずっと響いている。


「本当は知ってた。こういう思い抱くことも。今なら君と一緒に地獄を逝っても良かったと思う。辛いことより、寂しい方が痛い」


徐々に、聞こえてくる自分の声がか細くなる。弱く弱く重なるように広がって、耳元にまた帰結する。

嫌だって僕は言った。それなのに君は頑なに懇願した。たった一人だけ残して、君は僕にそう懇願した。そこにはどんな思いがあったんだろう。もう分からないし戻れない心に必死に戻ろうとして、帰ろうとしたけど、もうそれすらもなくなるかもしれない。


その理由は、目の前に吊るされた紐が物語っていた。丁度骨格標本とすれ違うように作られたまあるい紐。

少し間を置いて、深呼吸してみる。そしてそっと、吊るされた紐に首を入れた。唯一の支えであった高めの椅子を自分の足で蹴りあげて、自分の首に全体重をかける。

一瞬だけ、意識が目まぐるしく血走った。一瞬にして消えていった意識は、まるで星のように輝いて消えてった。


「僕は、君が大好きです。これから先も」


慟哭のように響き渡った言葉とともに、燃え尽きるように瞳を閉じる。そこで燈火が尽きる瞬間を眺めていた。

見つめて見つめて、必死に迎え火を辿って、ひたすらに届きたかった。伸ばした手のひらは、そっと空を掴んでしまった。



***




「……智也? 何言ってるの?」


とある休日の昼下がり、二人で肩を寄せあって座っていたソファに腰を掛けながら、コーヒーを啜る音にかき消されるほど小さな恋人の音が聞こえてきた。

長い間恋人同士である杉浦智也から、「もう一度言って」と聞き返したくなる程おかしなことを告げられたのだ。

それは...。


「だから、殺して欲しいんだ」


二度目の彼の言葉、自分を殺して欲しいと懇願する彼の眼差しと声色で、彼が本気でそう思っていることはすぐに理解できた。

あまりにも突拍子のない一言。恋人であるはずの彼を、何故自分が殺さなければならないんだ。最初に浮かんできたのはそれだった。

だから僕は、彼の言った言葉を反芻しながら、彼にその理由を問いかけた。


「殺して欲しいって、何かあったの? 頼まれたってそんなことしないよ! 智也を殺すなんて……僕には出来ない」


率直に自分の意見を述べて彼を説得するように理由を問うが、何故か彼は自分を殺して欲しいという理由を話そうとしなかった。

頑なに殺して欲しい理由について話そうとしない杉浦に、少し不安になる。あまり弱音を吐くことが多くない杉浦からは、死にたいと言ったネガティブなことを聞くことすら殆どなかったため、彼の言っていることが本心なのか、もしくはただの狂言なのかを判別することが上手く出来なくて、僕は尚更混乱した。

もしかして、自分が原因なのだろうか? 一瞬頭をよぎったその不安感は徐々に形になって現れて、汗ばんだ手のひらを丸めて握りしめながら、再び彼に理由を尋ねた。


「……まさか僕が原因なの? 今まで色々あったけど、なんだかんだで一緒に乗り越えて来たじゃないか! それなのに突然、殺してくれなんて言ってきて...」

「お前のせいじゃないんだ。理由は言えない。お前のためでもあるんだ。信じてくれ」

「言えない……? そんな話...信じられるわけない! 嫌だ! 絶対僕は君を殺さないし死なせもしない!」

「...それでも、俺はお前に殺してもらいたい。もう、お前にこれ以上の迷惑をかけることは出来ない。だから俺は、お前に殺してもらいたいんだ」


彼の声色、彼の表情、どれを選んでも彼の言っていることは本当で、今彼の望んでいることは僕が彼を殺すことであることもすぐに理解できた。

彼の心境を理解すると同時に、僕は酷く混乱した。何故彼が唐突にそんなことを言い出したのか、そして何故彼は、頑なにその理由について言及しないのか、それがどうしても理解できなくて、自分の理解できる範囲を越えてしまい頭がパンクしそうになった。


「絶対に嫌だ! なんでそんなこと言うの? 僕を、嫌いになったの?」


僅かばかりの沈黙を捨て去って、聞こえてきたのは自分の怒号だった。ヒステリックに響き渡る自分の断末魔のような声は、そのまま彼に対する愛情の現れだったのかもしれない。あしてるからこそ、愛されたいからこそ僕は彼にそう怒鳴った。

平常を装うことができず、嘆くような叫び声と共に流れ落ちた涙を必死に拭おうと、自分の袖で目元を隠すようにこする。無尽蔵に流れ続ける涙は拭っても拭ってもなくならなくて、終いには自分の袖だけではなく膝元まで水分が染み渡ってきた。

そこまで嘆いて泣き叫ぶのは、きっと彼の言っていることが本当だと理解しているからで、彼が彼自身に向けている殺意を見てるから。

彼も僕が嘆き悲しんでいる理由を理解しているはずだった。だけど、彼は必死に涙をこらえながら僕の側に来て、ぽんと肩を叩いて抱き寄せてくれた。向けられた銃口すらも消し去るくらい、優しく肩を寄せて躰を抱いてくれた。


「泣かないで、俺は君のことが大好きだから。それは今までもこれから先もずっと変わらないし、変わりゆくものでもない。ずっと俺は君が好きで、君も俺が好き。それは永遠に変わらない。変わらないでもらいたいと願うから、俺は君に殺されたいんだ」

「意味、分からないよ……僕のこと、好きなら僕の隣にいてよ...」

「俺もそうしたいよ。ずっと、ここに佇んで傍にいたいんだよ。だけどね、それじゃあダメだって、気がついたんだ。俺は、自分が壊れてもいい。その相手が君なら、俺はきっと本望だから」

「なんで? 好きで一緒にいちゃ、だめなの?」

「大丈夫、少しだけ、先にいくだけなんだ。君の辿る道を、俺が一足先に見てくるだけだから」


その言葉を聞いた当たりから、何故か視界がぼんやりと歪んで、消えかけるように意識から手放しかけた。

天地がひっくり返るような感覚と共に、さえ切らない頭をぽんぽんと叩いて、必死に目を凝らして彼の顔にピントを合わせようとする。

やっと彼の顔にピントが合った頃、彼はその様子を悟ったように僕の瞳を手のひらで覆って、額に温かいキスを落とした。


「眠いんだね。大丈夫、少し眠りなさい。君には生きていてほしいから。絶対に君だけは生き長らえさせるって決めたから」

「ん……いや...嫌だ」

「俺も嫌、だけどもう、決めたから。だから少しだけ、遠距離恋愛させて。そのときまで、君は俺を愛していてくれる?」


その問いかけに、完全に答えきる前に僕は自分の意識から手を離した。

意識があるかないかの虚ろな意識の間で、僕はかろうじて彼の問いかけに首肯して答え、彼の答えを聞かずにそっと瞳を閉じてしまった。


「……ごめんね。本当は、君に殺されたかったんだ。自分の末路(おわり)くらい、君に委ねたいと思ったんだけど、それすら出来ないみたい。だって、俺は俺のうちに、死にたいから。でも、君には生きていてもらいたい。今まで本当にありがとう。そして、さようなら……」





それから意識を取り戻したのは、丸一日経ってからだった。後から分かったことだが、自分が飲んでいたコーヒーに強い睡眠薬が含まれていたようで、その作用であの時眠ってしまったことを知った。

目を覚ましてみると、目の前にあったのは彼の死体だった。まあるい輪っかにかかった首に全体重をかけ、嫌な軋み声を鳴らしながら体中の穴という穴からだらだらと体液が垂れている。部屋の中の静寂は、その滴り声と自分の慟哭で打ち消されて、自分の慟哭はすぐに啼血に変わり、床に飛び散った彼の体液と、自分の吐血と入り混じって凄まじい激臭を放っている。

頭がくらくらするほどの激情と共に押し寄せてくる吐き気、近寄ることすら耐え難く思う程薄気味悪く軋む泣き声。それを物ともせず、僕は吊るされた彼の死体を必死に掴んで揺さぶった。


「どうして起きないの」

「もう朝だよ」

「早く起きて」

「嫌だ」

「いかないで」

「僕を一人にしないで」


幾つもの嘆きが警鐘のように広がっていき、体液にまみれた床に突っ伏しながら、必死に彼の足元に縋り付いた。

いつの間にか自分の涙とか、唾液とかが彼の足元を濡らしていて、雨の中走ってきたような足元になっていた。一頻り泣き続けた僕は、強い腐敗臭がする床の片隅で、再び瞳を閉じた。

それ以降の記憶は自分になくて、ただひたすらに意識から手を離すことしか出来なかった。



***



それからのことはよく覚えていない。よく覚えていない間に、目の前には彼の死体から丁寧に肉を削ぎ落し、人型の姿まで整理された人骨の骨格標本。完全にない意識で創りだされたそれに対して、僕はさほど強い疑問を抱くことはなかった。

なぜならそれは、彼の死体の直ぐ側にあった二つの手紙の一つ、自分宛てに書かれていた手紙に指示されていたことの一部だったからだ。


「"自分が死んだ時、すぐに肉をそぎ落として骨格標本として欲しい"、出来たよ、智也」


手にとった彼の文字を読み上げながら、追悼の意味を含んで彼の骨格標本に笑いかける。すると少し、彼の骨が笑みを浮かべたように歪んでいるような気がしてこっちまで顔が綻んでしまう。例えそれが、自分の気のせいだとしても、今の僕はそれを楽しむことしか出来なかった。

彼からの手紙の内容は、今までの感謝の言葉や、些細な秘密事とか、くだらない内容と一緒に僕にしてもらいたいことも同時に書かれていた。その一つが、彼の骨を骨格標本として僕の手元において欲しい、とのことだった。

それ以外にも、警察や両親が訪ねてきた時には「最近会えていない、メールは来るが会えないの一点張り」と答え欲しい、などの彼の死後起きうることを想定して書かれた台本のようなものだった。少しだけ不自然なそれが、今まで普通にしてきた会話のようで少しだけ嬉しい。


全く、こんなものを残すのならば何故死んだんだ、そんな冗談さえも愛おしく感じてしまい何もない日々を過ごすこと一週間あまり。未だに彼が死んだ理由は分からない。

彼のいない日々は本当に退屈で、少しの温もりでさえも微睡んでしまいそうなうつろな意識と視界、こっちまで彼のいる世界に逝ってしまいそうな感覚に落ちては彼のことを考えている。

すると、そんな退屈な日々を打ち壊すような出来事が起こった。それは死んだ彼からの手紙だった。恐らく彼が死ぬ前に僕宛に送ったもので、日付指定して届けたものだろう。


唐突に届けられた封筒物を強引に開けて、すぐに内容をチェックしてみる。

そこには、今まで完全に謎だった自殺をした理由について書かれた手紙と、彼のカルテが同封されていた。


「……脳腫瘍? これって、智也のカルテ...だよね」


彼のカルテに書かれていた病名と、彼の手紙の内容を重ねあわせれば、彼の自殺した理由が薄っすらとわかってきた。

彼は、末期の脳腫瘍で既に余命も少なくなっていたらしい。そして彼は、自分が衰弱し切る前に死んで、自分という存在を保とうとしていた、とのことだった。

メモ書きのように残されていたその薄い内容は、彼の最期の抵抗だったのかもしれない、そんなことを思いながら、僕は自分も彼の後を追う準備をはじめて、それを実行に移した。




走馬灯のようによぎったほんの僅かな時間の破片、それをみたほんの少し後、僕は目を覚ました。

目に入ってきたのは心電図とその音色で、自分が病室のベッドの上で眠っていることに気がついたのは、それから少ししてからのことだった。


「(あぁ、失敗しちゃったのか)」


自分の躰に、重い後遺症が残ったことは感覚で理解できた。認識の遅さ、回らない呂律、未だに虚ろな意識、恐らくこれらの不可解な感覚は全て、後遺症なのだろう。

その不快な感覚は、言ってしまえば自分が生きている証拠、言い換えれば自殺に失敗してしまったことの証明だった。

少しガッカリする気持ちと、生きていてよかったと思う気持ち、その二律背反的な感情がどうにも今の自分に心地よさを与えてくれているような感じがした。


「?はうあrfびゃうk4うhfんくあいlf?」

「!!あうえはふぃんcるあfkヴぉrじぇ@」


何か騒ぎ声、聞こえてくるんだけどなんでか雑音のようにしか聞こえてこない。まるで霞んだノイズのように耳元で響いているのは、家族の声だと気がつくのにかなりの時間がかかった。

細切れのような声は喧騒そのもので、少しだけ鬱陶しさも覚えたけど、これで良かったのかもしれない。今、僕は確かにここに生きている。一度死にかけて、彼の声を思い出して、やっと気がついたんだ。彼が一番望んでいたことを。

最期の君の声を。


「"今まで本当にありがとう。そして、さようなら……また巡りあわせてね"、なんて、ずるいこと言うなぁ」


そんなことを虚空を見上げながら呟いたのは、僕の本能かもしれない。

いつかまた、巡りあいましょう? それまで少し、オワカレ。


前書きの方では一切この話に触れていませんね。テスト投稿だから仕方がないです(´・ω・`)

今回の主人公の幸せを願って生きていきたいと思います。

相変わらず稚拙な文しか書けなくて歯がゆい思いをしながら投稿していたり……。ここまでご覧くださった皆様、お付き合いありがとうございます。

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