人肉屋
ある日の深夜0時を回るころのこと。
二人の男が人目のつかない『裏の街』の人肉屋に入って行った。
一人は黒のスーツに身を包み、もう一人は灰色のスーツに身を包んでおり、
二人とも背は高い方で似たような顔つきをし、似たようなオーラを発していたが黒のスーツの男の方がやや高めで全体的に色好きそうだという風をしていた。
「いらっしゃいませえーー」
二人が暖簾をくぐり、人肉屋に入ると、エプロンを着た黒縁メガネの若い男の店員が若干野太めの声を発しながら現れた。
いかにも好青年という感じだったが、強い眼光の持ち主で目の奥になにか怪しい光を発しているというそんな店員だった。
「酒が見当たらないがここは居酒屋じゃないのか??」
「違いますよ、ここは…」
店員の青年はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「人肉だって!!?」
店内に張り出されているメニューの細紙を見た灰色のスーツを着た男がすっとんきょうな声をあげた。
二人は店を間違えたことに気づき、特に慌てるでもなく店を出ようとしたが扉が開かない。
店の外にある看板に書かれているのは『居酒屋 白百合』という文字で騙されたということについて二人とも全く気にしていないことに青年は疑問に思った。
「お客さん、この店に入って食っていったお客さんのうちに目の悪い人がいて人肉ラーメンを食べてネギを綺麗に残していった人がいるんですよ~」
すると、二人は黙ったまま店内の二名席に着席した。
黒いスーツの男は注文をしたが、灰色のスーツの男は酒だけ注文してご飯はなにも注文しなかった。
二人が食事を終え、会計を個別に済ませて店を出ようとすると、
灰色のスーツが先ほどの店員の青年に呼び止められた。
黒色のスーツの男はさっさと店の外に出てガラっと扉を閉めてしまった。
「お客さん、ここでなにも食べて行かないなら、御代が1000倍になりますが」
「さすがにそんな大金持ってないよ」
「それじゃあ帰すわけにいかない」
「あの男の人肉と引き換えってわけにはいきませんか??」
「それなら構いません」
「それじゃつけといてください」
「わーりましたー。あざま~す」
灰色のスーツの男はその後何事もなかったかのように黒色のスーツの男と二軒目に寄って行ったとのことである。
しかし黒色のスーツの男は
今現在も生存中である。
そんなことあるわけない。