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なぐられて影武者  作者: 十五郎
第4章 三千世界の重箱の隅を突くような轟音を伴う戦闘でクライマックスだったりする
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4-13

~前話のあらすじ~

 ガルルア・ランメイスとアウレヅィア・セメンの戦いはあっけなかった。アウレヅィア・セメンの熱線一発でガルルア・ランメイスは機能停止となった。クラオジルスは攻撃を食らう直前にヒメコを抱きかかえて飛び立ったのだが、アウレヅィア・セメンは彼のことを見つめ続け――


 スイナはイストとアウレヅィア・セメンが飛び去った先を見ながら、とてもあっけなさ過ぎると思った。

 戦いとは呼べないほどの興醒めする結末だったが、それを以外だとは思わなかった。なぜならば、事前にアウレヅィア・セメン本人が言っていたのだ、「戦いなど起こらない」と。また、あまり意味はわからないが、「我の攻撃は我等の中で一、二を争う」とも言っていた。

 アウレヅィア・セメンの攻撃によって胸から上が消し飛んだガルルア・ランメイスは、ゆっくりとその巨体を倒していく。巨体故にスケールがいまいちわからなく、スローモーションのようにも見える。だが、ラヌイジオ城の跡地にぶつかったときに巻き上がった粉塵の量のおかげで、相当のスピードを持って倒れたのだと理解できた。

 粉塵がどこまで巻き上がるのかを見ているとき、イストが空からゆっくりと降りてきた。もちろん彼の横には、先ほどの閃光の主であるアウレヅィア・セメンが宙に浮いていた。


「終わりました」


「ご苦労。それでお兄様は?」


「攻撃する直前にガルルア・ランメイスから飛び降りていたので無事だと思われます」


 スイナはイストの顔をじっと見つめた。

 いつもの無表情で引き締まった顔である。巨大な力を得ていい気になっている様子もなく、そこはホッと胸をなで下ろす。

 地面に足を付けたイストも、そんな彼女の安心そうな顔を見たことで心が軽やかになった。もう、終わったのだと思った。

 しかし、そう言った人の願いを理解しない存在がひとつ。


《次はなにを滅ぼすか、我が声を聞き取った者よ》


「は?」


 アウレヅィア・セメンは深い紅色の瞳をイストに向けて尋ねてきた。


《滅びではないと? では、なにを支配するか?》


「ちょっと待ってください。なにをおっしゃっているのか理解できません!」


《我が声を聞き取った者は大いなる力を手に入れた。それを使う義務がある》


 余りにもの物言いにイストは唾を飲み込もうとするがそれもできなかった。いつの間にか口の中が乾いていたのだ。

 童話を思い出す。太陽を引っ張った王様は乾いてしまったのだ。地下遺跡にいたあのジジイが童話に出てきた王様と同一人物である可能性は高いが、自分もああなるのだろうかと考えてしまう。いくら炎の精霊憑きであると言っても、所詮は人間と言うことだろう。世界には勝てない。

 アウレヅィア・セメンは続けた。


《我は我が声を聞き取った者に課せられた使命を知っている》


「……は」


 思わず乾いた笑いをしてしまう。このドラゴンは一体どこまで世界の根幹をなす存在なのだろうか。人間の昔の思い出、つまりは記憶でさえもどこからか引き出してきてしまうのか。


「影武者、お前は一体……?」


 スイナも声が聞こえたのだろう、イストに心配と怒りが混じったような視線を向けてくる。

 イストはそれに対して釈明をしようと思ったが、今だアウレヅィア・セメンはイストの目を見つめ続けている。先に対処しなければならないのはこちらだ。


《我が声を聞き取った者は、自らの国を持つと願われている。我の力を使えばたやすく叶えられるぞ》


 確かにそれはそうだ。あれほどの攻撃力を見せつければ、多数の国を従える王となることも可能だ。一度の熱線を放つことに喉の渇きぐらいしか代償を払う必要がないのならば、大いに有効な兵器だと言えよう。

 しかし、それは自らの国を持つと言うことになるのだろうか。支配者になることは可能だが、その支配したものを自分の物だと言えるだろうか。

 イストは空を見上げた。

 ガルルア・ランメイスが倒れたことによって巻き上げられた粉塵は、上昇気流にも乗って上空へと舞い上がっていく。ものすごい勢いで高く上がっていく。

 快晴の空に上がっていくそれを見て、イストは決心した。


「揺るがぬ光球アウレヅィア・セメン様に私の考えを申し上げます。私は――」



とりあえずクライマックスは二つのシーンを同時投稿しました。

残すところは終章のみ。

なお、終章は二つのシーンで別れているので、これまた二つ同時投稿します。

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