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われら2  作者: 浦島 十三
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『われら』(ザミャーチン)の「2」(続編ではない)を、記してみる。

「--というわけで長くなりましたが、以上が当施設に関する説明になります。最後に大事なことなのでもう一度だけ、念のためお伝えしておきます。あなたはこの施設からいつでも自由に出ていくことができます。当所のオーナーはあなたの叔父様からあなたのことを「よろしく」と言われたそうですが、あなたは未成年ではないし、犯罪者でもありませんから。」

「それって、今からでもここに入ることをやめることもできるということですか?」

「勿論です。ただし……」

「ただし、出ていった人は、二度と戻ってくることはできない」

私は黒縁眼鏡の竹部さんの言葉を継いで言った。

「その通りです。すなわちあなたはこの場所に縛れているのではなく、この場所で暮らす権利を1回だけ与えられた、というふうにご理解ください。」

「わかりました。よろしくお願いします。」

「ご入所おめでとうございます。」

竹部さんは口元で微かに笑みをつくった。


***


翌朝は早かった。夜明け前というか、外は空もその辺もまだまだ夜のままだった。

外気は冷たかった。


一緒に作業する人たちと1台の車に乗り込み、数分走って暗い畑の中に煌々と光っているビニールハウス一帯に着いた。

皆、車からいそいそと降りてハウスの中にさっさと入っていった。

中は温かい。


「新入りの……」

「ケンジです」

「あぁ、ケンジくんは時透君から最初作業教わって」

年配っぽい人が言った。


「はい、わかりました」

「こっち」

黒い帽子に黒っぽい迷彩柄の服を着た男性が答えた。

「よろしくお願いします」

「はい、よろしく。こっち来て。こんな感じで摘んでみて。ヘタのところを指の間で挟んで実の部分をできるだけ持たないようにして、こう、くいッと。とりあえず、このコンテナに適当に摘んでみて。やりながら教えるから」

「はい、わかりました。」

そうして時透さんから手渡されたオレンジのコンテナが想定していたよりもはるかに大きくて「仕事だ」と思った。

ハウスの中に換気扇の低い音が響いていた。


摘んでみた。丁寧にパレットに並べた。

しばらくすると時透さんがパレットを斜めに抱えたまま近づいてきて私のパレットの中を覗いた。

「さっき言わなかったけど、ちゃんと選んでるね。これとこれとこれはまだ早い。あともっと奥の方……」

といって時透さんは私のそばの苺の葉の茂みの中に手を突っ込んだ。

私には見えていなかったが、赤く熟した大きな苺が時透さんの掌にあった。

「これは逆に、過ぎてる。食べてみていいよ」

「いいんですか?」

「うん」

時透さんから真っ赤に熟した立派な苺を受け取った。

一瞬、洗いたいなと思ったが、まぁ一個くらいいいだろうと思って口にいれた。

「甘っ」

「今はいいんだけど、店に並ぶ頃にはちょっと悪くなってる可能性がある。まぁでも今のはギリいけたかもな。ラッキーだったな。」

「ありがとうございました。ところで、私もそういう風に抱えたほうがいいですか?」

私は時透さんが斜めに抱えたパレットを見た。斜めになったパレットの端には苺が自分の意志で整列しているようにきれいに並んでいた。

「いや今日はは見習いってことで、丁寧にゆっくりやってもらって色々覚えて。簡単そうだけど覚えること色々あるから」

「はい、わかりました。」

またひたすら摘んでいく作業に戻った。


私は慎重に苺へ手を伸ばした。

ヘタの上を持ち、軽くひねる。掌へ落ちる感覚。

今のはスムーズに取れた。

少し嬉しかった。

無言で摘み続ける。換気扇の音がきこえる。


またしばらくして時透さんが近づいてきた。

「けっこう摘んだね。あ、そこ重ねてる?」

「はい。もう一杯になってしまって」

私のパレットの重なっていた数個の苺を時透さんが自分のパレットに移した。

「じゃあ、いったんそれあっちに持って行って。フッサさんのところに。あのエプロンのおばあちゃん。苺って、摘む時より運ぶ時の方が傷つくから。今は重ねないで。一面終わったらパレット変えて」

「わかりました」

私はフッサさんに時透さんからパレットを変えるように指示されたと伝えた。

「はい、ごくろうさん。新しいのはあっち」

そういってフッサさんは、端に積みあげてあるパレットを指した。

ふいにハウスの外の景色が目に入った。

夜が終わりつつあった。


***

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