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「なんとなく惹かれる」を信じていい  作者: アレックス・フクリー
4)身体の相性を、見て見ぬふりしない

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4-2)“身体の相性”を気にしてもいい。むしろ大事にしてほしい

「身体の相性って大事なのかな……?」


 こんなふうに感じている人は、実は少なくありません。たとえば「相手はすごく優しいし、価値観も合う。でも、なんとなくスキンシップのテンポがずれる」とか、「キスやハグの感じが気持ちよくないわけじゃないけど、なんか違和感がある」みたいな。恋愛や結婚を考えるとき、そうした"なんとなく"の違和感がずっと引っかかってしまうことがあると思います。

 あるいは、「手を繋いだとき、なぜか緊張してしまう」「腕を組んだときに不自然さを感じる」といった、より微細な違和感かもしれません。日常的なスキンシップひとつとっても、「自然に身を寄せられる相手」と「なんとなく身構えてしまう相手」がいることに、多くの人は気づいているはずです。

 でも、多くの人はそこで一度、考え込んでしまいます。


「こういうのを気にするのって、軽いって思われるかな?」

「条件も性格もいい人なのに、体の相性を理由に迷うなんて、失礼かも」

「大人なんだから、心が通じていれば体のことなんて後からついてくるよね?」

「結婚は妥協の連続だから、これくらいなら我慢すべき?」


 特に女性は「そんなことを気にするなんて、下品だと思われるかも」と自分の感覚を封印してしまうことも少なくありません。また男性も「男なら我慢するべき」「そんなことより他の条件が大事」と、自分の感じる違和感を無視してしまいがちです。

 もちろん、"心のつながり"は恋愛や結婚においてものすごく大事です。ただ、そのうえで正直に言いたいのは、「身体の相性」も、同じくらい大事なものだということ。なぜなら、体の関係というのは"言葉よりも深いレベル"でつながる行為だから。お互いの体温やタイミング、呼吸のリズムが自然に合うというのは、理屈じゃなく「この人と一緒にいて気持ちいい」と感じられるかどうかの話です。これは、生きている中で感じる"快"の感覚そのもので、意外とごまかしが効きません。

 人間関係の多くは「言葉」を通して行われますが、親密な関係においては「身体」のコミュニケーションも大きな比重を占めます。たとえば、疲れているときに言葉を交わさずとも、そっと肩に手を置かれて安心する。そんな「言葉以前の安心感」は、長い関係を支える重要な要素になります。この「身体の言語」が互いに通じ合えるかどうかは、想像以上に深いつながりを左右するのです。



【身体の相性は「ぜいたくな悩み」じゃない】


「相性が合わない」と感じていても、それが"具体的に何がどう合わないのか"をはっきりと言葉にするのは難しいことがあります。なんとなく、会話のテンポがずれるように、身体のやりとりにも違和感が生まれる。

 例えば、抱きしめられたときの力加減が自分の好みと違う。相手は愛情表現のつもりでギュッと強く抱きしめてくれるけれど、自分はもう少し優しく包まれるような感覚が好き。こうした微妙な感覚の違いは、言葉で伝えるのも難しいし、相手に「もう少し力を抜いて」と頼むのも気まずいと感じてしまう。

 それを、「こっちがわがままなのかも」とか「大切にされてるんだから、それで十分なはず」と、自分に言い聞かせて無理をしてしまうと、心や身体の奥底に小さなモヤモヤが積もっていきます。そのモヤモヤは、時間とともに大きくなり、やがて「この人とのスキンシップが億劫」という感情に変わっていくこともあります。

 そして、その「億劫さ」は、単にセックスの問題だけではなく、日常的な距離感にも影響してきます。朝起きたときの「おはよう」のキスが自然にできるか、リビングでテレビを見ながら自然に寄り添えるか、そんな日常の些細な触れ合いにまで影響が及んでいくのです。

 でも、考えてみてください。これから一緒に長い時間を過ごすパートナーと、スキンシップのたびに「ちょっとしんどい」「気を遣う」と感じていたら、どこかで関係はぎこちなくなってしまいます。身体の相性を大切にすることは、「自分が心地よく生きていくための感覚を大事にする」ということでもあるんです。

 また、身体の相性の不一致は、時に深刻な問題に発展することもあります。例えば、性的欲求のタイミングや頻度の違いが、長期的な関係の中で大きなストレスになることは珍しくありません。「相手は週に3回は求めてくるけれど、自分は月に2〜3回で十分」というような温度差があると、互いに不満や罪悪感を抱えることになります。こうした問題は、「我慢すればいい」で解決するものではなく、むしろ我慢し続けることで心の距離が広がってしまうことさえあるのです。

 だから、それを「贅沢な悩み」や「浅い問題」として片づける必要は、まったくありません。それどころか、これは結婚生活の質を大きく左右する本質的な問題なのです。



【“試せる恋愛”なら、試してみていい】


 自由恋愛の場合、体の相性については実際に関係を持つ中で確認できます。もちろん、その判断は慎重であるべきだし、相手を傷つけないように配慮も必要です。でも、身体の相性というのは、どれだけ言葉で価値観を話し合っても、最終的には「身体でしかわからない」部分がどうしてもある。

 よく「恋愛は試験」と言われますが、この「身体の相性」こそ、実際に経験してみないとわからない最も重要な試験のひとつかもしれません。アンケートやプロフィールでは決して知ることのできない、生の体験から得られる情報なのです。

 たとえば、触れ方、距離の取り方、キスの深さやスピード感、呼吸の合わせ方。教科書では学べない"相性"の世界です。実際に関係を持ってみて「この人とは、無理なく合わせられるな」と思えたなら、それは大きな安心材料になりますし、「なんとなく無理をしてしまうな」と感じるなら、それは見過ごせないサインかもしれません。

 特に注目したいのは、「自分の感覚が受け入れられているか」という点です。例えば、「もう少しこうしてほしい」と伝えたとき、相手がそれを否定せず受け止め、調整してくれるかどうか。あるいは、相手から「こうしてほしい」と言われたとき、自分もそれを自然に受け入れられるか。このような「感覚の交換」がスムーズにいくカップルは、他の面でもコミュニケーションが取りやすい傾向にあります。

 もちろん、セックスそのものが"うまい・へた"ではなく、「合うか・合わないか」の話です。回数を重ねていくうちにすり合わせができる場合もあるし、最初から驚くほどぴったりくる相手もいます。大事なのは、そのプロセスが「しんどい努力」ではなく、「自然な調整」としてできるかどうか。

 中には「時間をかければ相性は良くなる」と考える人もいますが、実際には根本的な相性の問題は、時間だけでは解決しないことも多いのです。むしろ「これくらいなら慣れるはず」と思いながら何年も経過し、結局は大きな溝になってしまうケースも少なくありません。だからこそ、交際初期から「身体の相性」に違和感を感じたら、それを軽視せず、真摯に向き合うことが大切です。

 そういう意味で、「性的な相性」も恋愛の判断基準の一つにすることを、どうかためらわないでほしいのです。他の条件(特に収入)が良いから「性的な相性」を妥協し、結果的にセックスレスになった、満たされないという理由から不貞行為に走って離婚した……これらは最悪の結末です。多くの離婚原因の裏に「性的不満足」が潜んでいることは、カウンセリングの現場でもしばしば指摘されています。

 現実的に考えれば、一生のパートナーとなる相手との間に「身体の相性」という大切な要素を確認せずに結婚に踏み切ることは、ある種のリスクでもあるのです。



【相談所婚活では“確認できない”というジレンマ】


 一方で、結婚相談所の婚活では、交際中にセックスをすることは禁止されています。身体の関係を持たないまま、結婚を決めることになる。このスタイルにはもちろんメリットもありますが、「身体の相性が大切」と考える人にとっては、ちょっと難しさもあります。だからこそ、"相性を測るための別のセンサー"を使う必要が出てきます。たとえば──


 •手をつないだとき、触れた感覚に"安心感"があるか

 •会話のテンポが、無理なく噛み合っているか

 •声のトーンや話し方に"心地よさ"を感じられるか

 •「スキンシップに対する考え方」が、自分と似ているか

 •キスなどの"軽い接触"の段階で、違和感があるかないか

 •相手の匂いに心地よさを感じるか、あるいは違和感を覚えるか

 •沈黙の時間を共有したとき、落ち着くか緊張するか

 •相手の表情や仕草に、自然と心が動くか


 こうした要素は、体の相性の"前兆"のようなもの。スキンシップの延長線上にセックスがある以上、ここに違和感があると、その先でも違和感を覚える可能性は高くなります。

 実は、初めて手を繋いだときの感覚や、初めてのキスの印象は、意外と重要なサインです。「なんだか緊張する」「少し気まずい」といった感覚は、単なる初々しさで終わることもあれば、根本的な相性の違いを示していることもあります。大切なのは、その感覚を「気のせい」と無視するのではなく、自分の中で正直に向き合うことです。

 また、仮交際から真剣交際に進む前に、「スキンシップやセックスに関する価値観」を確認しておくのもひとつの手です。たとえば、「どれくらいの頻度が心地いいと感じる?」「スキンシップって、日常でどのくらい大事?」といった問いで"感覚の相性"を探ることができます。中には「そんな話は恥ずかしい」と感じる人もいるかもしれませんが、人生の重要な選択の前に、互いの価値観を確認することは決して恥ずべきことではありません。

 また、そのような問いを投げかけることが出来る、キャッチボールできるくらいの関係性が出来ていない状態では、結婚に進むのはおススメできません。これから何十年も続く生活のことですら話し合えない状態では、今後他の問題が起きたときもうまくいくとは思えません。心を開いて話せない関係で結婚生活を始めることは、お互いにとって大きなストレスになってしまうでしょう。

「こういう話をしにくい」「恥ずかしくて切り出せない」と感じるときは、それ自体が「まだその段階ではない」というサインかもしれません。真剣交際に進む前に、お互いがリラックスして話せる関係性を築いておくことも、とても大切なのです。



【「好き」と「気持ちいい」は、別物のようで、深くつながっている】


 身体の相性がいい相手といると、自分がまるごと受け入れられているような安心感があります。それは、「この人にとって、私は魅力的なんだ」と実感できる時間でもある。逆に、どれだけ心が通じていても、セックスのたびに違和感や気まずさがあると、自己肯定感が少しずつ削られてしまうことも。

 長期的な関係において、「好き」という感情と「気持ちいい」という感覚は、互いに影響し合います。最初は「好き」という気持ちだけで関係が進んでいくこともありますが、時間が経つにつれて「気持ちいい」という感覚がなければ、その「好き」も徐々に薄れていくことがあります。逆に、「気持ちいい」という感覚が積み重なることで、「好き」という感情がさらに深まることもあるのです。

 夫婦カウンセラーの現場では、「最初は愛していたのに、いつの間にか冷めてしまった」というケースがよく見られます。その背景には、しばしば「身体的な満足感の欠如」が隠れています。日常のスキンシップやセックスに満足感がないと、それが「愛情の欠如」と感じられてしまうこともあるのです。

 特に女性の場合、「相手に大切にされている」と実感できるかどうかが、セックスの満足度に大きく影響します。単なる生理的欲求の充足ではなく、「この人は私の感覚を大切にしてくれている」という実感が、深い結びつきを生むのです。男性も同様に、パートナーから「求められている」「必要とされている」と感じられることが、自信や安心感につながります。

 だからこそ、「身体の相性を大切にしたい」と思うのは、とても健全で自然な感覚です。相性は、"一緒にいて気持ちがいいか"の積み重ね。言葉よりも深いところで、「この人となら、ずっと寄り添っていける」と思えるかどうか。それを、心のどこかで大事にしながらパートナー選びをしていく。それは全然、間違ってなんかいないのです。

 最後に強調しておきたいのは、「身体の相性」を重視することは決して浅はかなことではないということ。むしろ、自分の感覚に誠実であることは、長い結婚生活を幸せに保つための大切な一歩なのです。相手のことを思いやりながらも、自分の感覚を無視しないこと。それが、お互いが本当の意味で満たされる関係への第一歩になるのではないでしょうか。

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