第21話「ヴィネグレットソース」
皆さんの手元に、ほうれん草のポタージュが皿から湯気を立てています。
ホワイトグリーンの鮮やかなポタージュの上には、生クリームが数滴垂らされて、クルトンが数粒散らせてあります。
「それでは僭越ながらこの私、私立百合ヶ丘学園二年に所属するお料理部の部長であり」
「いただきまあす」とアンチョビ先生が大きな声で言いました。
『いただきまあす』
「私のマリマリマリィがぁ……」
ロティさんは食べる前に、フォンの香りと野菜の溶けた甘い風味を嗅ぎました。
「いただきますっ」
一口スプーンにすくい、口に運びます。
自分で採った新鮮なほうれん草と切った玉ねぎ、ジャガイモの素材の甘みが口で蕩けます。
きめの整ったポタージュは、ほんのりと優しいまったりとした味わいです。
そしてバターのコクが、風味を豊かにさせて食欲を唆らせます。
「うぅ………んまいっ!」
「オォ……コノアマミとコクは、ナンデスカ。コレハ、オイシイデスネェ」
「これも農業部が毎日一生懸命新鮮な野菜を育ててくれたお陰だぜ」
「ほんまやなぁ。ジャガイモと玉ねぎ、ほうれん草たちの旨味が見事に調和しててええなぁ」
「よし、ポワレ君。あれを」
「うん」
ポワレさんとマリネ先輩は、キッチンに向かいあれやこれやとはじめました。
「お待たせしました。次は『ほうれん草のミックスサラダ〜ヴィネグレットソース和え〜』です」
大皿にはレタスやトマトとほうれん草とインゲン、そしてカリカリに焼いたベーコンとクルトンが添えられています。
皆さま、やはりサラダには目が無いのか、飛びつくように列が出来ます。
「あの、このドレッシングはなんなんですか?」
「よく聞いてくれたロティ君……言ってやれポワレ!」
「先からあんた全然言わへんな」
「ヴィネグレットソース」
「ヴィ、ィ」
「ヴィネグレットソース」
「ヴィレ」
「ヴィネグレットソース」
「白ワイン酢とマスタード、サラダ油と塩コショウで和えたソースのことなぁ。フレンチドレッシングとか聞いたことない?」
「ほぉ……あるようなないような」
「ジュレ君、実は今日のヴィネグレットは少し特別なのだよ」
「特別?」
「まぁまぁ食べてみたまえ」
「なんか腹たつなぁ。あむ、あむ……おいし、何これすごい檸檬みたいな」
「ピンポンピンポン〜お見事大正解〜」
ポワレさんはキッチンから拍手しています。
「いつもなら白ワイン酢やバルサミコ酢で作ることが多いのですが、今日は皆さんが食べやすいように酢の部分を檸檬汁に変えて見ました〜」
「あむあむ……確かに、香りが爽やかだけどちゃんとドレッシングみたいになってて食べやすいですっ」
ロティさんもお気に召したでしょうか。むしゃむしゃと夢中でサラダを食べます。
「ほんとですわ〜」
「わたくし今度お家で出させますわ〜」
農業部のお嬢様方も大変お気に召されたご様子です。




