白薔薇学園
3週目のトレーニングが終わった頃、マリアさんから結婚紹介所のオフィスの方に来てほしいと言われ、待ち合わせをする事にした。
いつもの古ぼけたオフィスはもうなく、見違えすぎて違う場所に来たのかと思った。
「うわー改装終わったんですね」
「ええ、後は家具を入れるだけだから、ほらこっちにはドアもあるわよ」
「白のドアは私の所、黒のドアは黒木の所、茶色はミラクルハピネスのオフィス、そしてこの赤のドアがリドリア国の白薔薇学園に繋がってるわ」
そう言って、マリアさんが赤のドアを開けると、誰かのオフィスのようだ。
「ここは黒木がルーク先生の時のオフィスね」
「あーーゲームと一緒。魔王ルートに行くために、何度も通ったからなあ」
「そんなに何度もプレイしたんですか?」
黒木さんの声が突然聞こえた。
「え?黒木さん??」
「今日は先生ですよ」と本を持った黒木さんが本棚の側に立っていた。
あーーそうそう、ゲームでもよくこの格好をして本棚の所に立っていた。
「あら、ルーク先生、今日は授業の日だったのね。これから時間ある?今日はアヤじゃなくてアンナに学校の案内をしようと思ってたんだけど、先生と一緒の方が自然よね」
「こっちの名前はアンナなのか?良い名前だね。次の授業はお昼の後だから良いよ。アンナは制服に着替えないとね。おいで」
と私を続きの部屋に連れて行った。仮眠室なのかベットが置いてある。
「制服ですか?私は今年で23歳なんですけど」
「大丈夫、きっとかわいいよ」と制服を渡して黒木さん。。じゃなくてルーク先生は部屋を出て行った。着てとサイズもぴったり。何で私のサイズ知っているんだ?
部屋を出るとマリアさんとルーク先生が何か話していた。私の名前が聞こえた気がするが気のせいかな?ルーク先生は私に気がつくとにっこり笑って、
「アンナさん、白薔薇学校へようこそ」とお辞儀をしてくれたので、私も覚えての淑女の礼をしてみた。
「じゃあいきましょうか?アンナ嬢」
「うわーーこの廊下、あ!図書館が見える、今、中庭の方に行くんですか???」
「私の案内は必要ですかね?校内の位置は完璧に覚えてそうですが?」
「私が知っているのは、イベントで出てくる主要な所だけですよ。ゲームの世界を実際に歩けるなんて」
「あ、じゃああそこは分かりますか?」
あ。。あそこはルーク先生との親密度が高くなるイベントの場所だ。
木の近くでヒナが巣から落ちてたのを、ヒロインが巣に戻そうとして、たまたま通りかかったルーク先生が木から落ちそうになっているヒロインを抱き止めてくれる。
「今日はヒナは落ちてないから大丈夫そうですね」
「そうか残念だな」とルーク先生は笑った。
その笑顔を見て私はまたドキッとしてしまった。今日は黒木さんより丁寧な話し方で、ゲームをプレイしていた時を思い出してしまう。
そんな時中庭の方から何か騒いでいる声が聞こえる。
「またアイツか」とルーク先生は苦々しげに言うと、「すまない、ちょっとルート変更だ、中庭に行く」と言うので、私も一緒について行くと、中庭のベンチの周りに人だかりができてる。
ルーク先生は人混みをかき分けて行くと、悪役令嬢レイチェルの前には落ちたお弁当箱、その前に泣いている聖女メグ、その後ろに王太子リヒトがいる。
「え?お弁当イベント??」
聖女ルートだと、悪役令嬢が婚約者である王太子と聖女が聖女の手作り弁当を食べている所を見つけて、怒ってお弁当を投げて台無しにする。聖女はショックで泣いてしまい、王太子が慰めて、好感度が上がるという場面。
だがなんか違う。王太子は困惑した顔で聖女を見ている。
そして真ん中に落ちている弁当の包みには公爵家の家紋の刺繍が入っている。
そしてレイチェルさんが聖女メグに静かな声で諭すように言っている。
「私はリヒト様が誰とお弁当を食べようとは気にしませんが、何故あなたがわたしのお弁当を持っているか聞きたかったんです」
「違うわ、あなたは私がリヒト様といるのに嫉妬したのよ、そのお弁当はどうせリヒト様にあげる予定だったんだから、私があげただけよ」と聖女が泣きながら言う。
「アイツ、弁当を盗んで、それがバレて逆上して泣いてるとか、頭おかしいだろう」
先生。。。みんな思ってるけど、心には出してなかったんですよ。
ルーク先生は人混みから抜け出て。
「はい、この件に関係ないものは教室に戻りなさい。昼休みもそろそろ終わりますよ」と先生はお弁当を拾って、レイチェルさんに渡す。
聖女は先生が来たのからなのか、それとも魔王とわかっているから「じゃあもういいです」って逃げた。リヒト王子はその後を追っかけてる。
「レイチェルさん。そのお弁当はもうダメかもしれません。何か食堂で持ち帰り料理をオーダーしてきましょうか?」とルーク先生が言うと。
後ろから「だったら、その弁当は俺が貰いたい、その代わりに私が食堂にレイチェル嬢をお連れしよう」と低い声が聞こえた。
レイチェルさんの後ろに背の高い男が立っている、あらカール騎士団長。
「レイチェル嬢、私の弟子である殿下が無作法な事をした。弟子の失態は私の失態でもある。お詫びにランチをご馳走させて頂けないだろうか?」とカール騎士団長がレイチェルさんを覗き込むようにして話しかけている。
レイチェルさんの顔は真っ赤だ。
「そんなお弁当欲しければあげます。私は食欲がないので失礼します」とお弁当箱をカールさんに投げつける様に渡して去って行った。
レイチェルさん、ツンデレだなあれは。
カール騎士団長はそんなレイチェルさんのお弁当を大切そうに持ってる。
あれは悪役令嬢コースに脈ありだな。て言うことは卒業パーティーで婚約破棄されれば、あの2人はくっつく。
「ルーク先生、私は急用ができましたので、先に失礼します」
「え?アヤ。。。アンナさん、まだ時間ありますが」
「早急にマリアさんにお伝えしないといけない事ができましたので。では午後の授業頑張ってください」
と私は早足でルーク先生のオフィスに行く。
「おい、待て、お前このオフィスからの帰り方知らないだろう」と私に追いついた先生が言った。
は!忘れてた。
「お前は本当に何か決めると周りが見えなくな」
「よく言われます。。すみません」
あ、先生モードから黒木さんに戻った。
黒木さんは鍵でオフィスを開けて、中に入れてくれた。
そして振り返り、私をドアに押し付けるようにして、両腕で私を囲った。
これは「壁ドン」ならぬ「ドアドン?」
「いいか、オフィスのドアを開ける時は社員証をかざすだけでいい。中に入ったら、この同じドアのノブの上のボタンを押すんだ。そうしたら、お前の事務所に戻れる」
「は。。。はい」
「なんか、先生が生徒に迫ってるって背徳感があっていいな。お前、会社でも制服着たら?」
「黒木さん、私で遊ばないでください。23歳がいつも制服着てたら、単なる痛い人です」
「そうか、俺は好きだけどな。これから、アヤが学校に来るのが楽しみだ」
そう言って黒木さんはドアを開けてくれた。向こうにマリアさんが見える。
「またなアヤ」
ごめんね、アヤさん。制服を着せるシチュエーションにして。




