聖女と魔王と女神
話は少し時間が戻ります。そしてアンナ目線になります。
私はリヒト様達が金庫室に来る前に反対側の階段から上がって応接室のある階まで戻った。
レイチェル様の侍女をしている時に何回かお屋敷に来た事があるので、迷わずに動き回れる。
応接室の前に行くと、モニカお嬢様がドアの前に立っていた。
「お嬢様、どうかされました?」
「もう。。見るに耐えなくて、本以外の事であんなに怒りが湧いたのは初めてだわ。クッションを引きちぎりそうになったので出て来たの」
「皆さんはどうですか?」
「カール様とクリス様は頑張ってるけど、固いわね。元々そう言うタイプじゃないし。メグがカール様の腕の筋肉を触った時なんか、カール様は手が腰にいったわよ、今日は帯剣してないから、剣はないけどね」
切り捨てるつもりだったのか。
「しかしルーク先生はすごいわね、どこのホストクラブかと思うぐらいの盛り上げ方よ。まあ演技だとわかっててもいい気分じゃないわね」とモニカ様と話していると、ドアがバーーンと開いた。
メグが私達を胡散臭そうに見て、
「ちょっとあんた、アルは何処に行ったの?金庫室に案内するだけじゃないの?あの女と一緒に私の男達がいるって考えると虫唾が走るわ」機嫌の悪いメグの手をルーク先生が取って、
「聖女様、私達ではお役不足ですか?妬いてしまいますね」
「そんな事ないわよ、ちょっと気になっただけだから」とメグはソファーに戻る。
「そこの侍女、お茶を入れなさいよ。気が効かないわね」
私は言われた通りにお茶を入れつつ皆さんの様子を見る。
クリス様は笑顔だが、クリス様の思考を読んでいるモニカお嬢様がプルプルと怒りに震えてる所から平気ではないのだろう。
メグはカール様の膝の上に乗って、ルーク先生からブドウを食べさせて貰ってる。カール様の手は手近な花瓶をつかもうとしているが、ルーク先生が反対の手で必死に止めている。
私は素知らぬ顔をして、淹れたてのお茶をメグの前におく。そして壁際に戻ろうとしたら。
「あんた、よく見たら図書館のアシスタントじゃないの、ルーク先生に助けられてた」
「あんたルーク先生の事が好きなの?ルーク先生が優しくしてるからって侍女の癖に勘違いしないでよ」と言いながらお茶を飲んだ。
「あつ!あんたわざとやったんでしょ、こんな不味いお茶飲めないわよ」と私にお茶ごとティーカップを投げつけた。
「熱い!!!!」ティーカップは私の顔に当たり、お茶が顔にかかった。火傷するほどではないが、熱いし痛い。
その瞬間部屋の空気が一瞬凍りついた気がしたが、すぐに戻った。
「何よ今の殺気。ルーク先生が私に首っ丈だから怒ったの?じゃあルーク先生とのキスを目の前で見せてあげたら、アナタも諦められるかしらね。私って優しいわね」
「聖女様、それはリヒト殿下への不敬になってしまいますよ」とルーク先生は笑顔で言う。
「大丈夫よ、殿下は私の言うことはなんでも聞くし、怒らないから」とルーク先生に顔を近づける。
ルーク先生も諦めた様に動かない。唇が触れそうになった瞬間、私は叫んだ。
「このクソ聖女、私の男に手を出すな!!!」
部屋が一瞬で静まりかえった。ルーク先生はなんだかちょっと嬉しそう。そんな場合じゃないから。
「あらやっぱりそうだったのね。でも大丈夫。ここにはリヒト様とアル以外の残りの攻略対象すべているから、私がみんなに魅了の魔法をかけて、逆ハーレムを完成させるわ。あなたのかわりにルーク先生を可愛がってあげるわよ」と言った瞬間、黒っぽい紫の光が聖女から出て、カール様、クリス様、ルーク先生、そして2人の使用人を包んだ。
光が消えるとメグはみんなを一連に並ばせる。
「とっととこうすれば良かったわ、クリス様はあの図書館の暴力令嬢を、カール様はあの侍女を拘束しなさい。私がルーク先生と楽しむ所をたっぷり見せてあげるわ」
私はカール様にガッチリとホールドされて動けない。
メグがルーク先生の上にまたがり、服を脱がそうとする。
私がカール様の拘束を振り解こうとすると
カール様が「心配するな大丈夫だ」と耳元で囁いた。
え?
「おやおや、メグ。私という婚約者がいるのに堂々と浮気か?」
ドアが開いて、リヒト様と。。青のアクセサリーだからケイト様かな?が入って来た。
「り。。リヒト様、違います。その侍女が私に毒入り紅茶を飲ませようとして、ルーク先生にも危害を与えたので、ルーク先生に怪我がないかチェックしている所です。カール様が取り押さえてくれてますので、その女は死刑にしましょう」
すごいなここまで息を吸う様に嘘がつけるのってとつい感心してしまった。
メグはリヒト様とケイト様を見ると。
「は?リヒト様、なんでその女の手を握っているのですか?」
「いや、新しい聖女を見つけたので、前の聖女をクビにしようと思ってね。エスコートさせて頂いてるんだ」
「何を言っているのですか?リヒト様こっちにいらしてください」
しかしリヒト様は動かない。
「え?なんで?魅了の魔法が解けてる?あんた何したのよ!!」
「ギャーギャーうるせえ、俺の上から退けよクソ聖女」とルーク先生がメグを床に振り落とした。
「カール、いつまで俺のアンナを抱きしめてるんだよ」
それを聞いたカール様はパッと私を離したて、ルーク先生に私を渡す。
「なんで魅了の魔法が効いてないの!!!」
「俺は魔族だし、カールとクリスには保護魔法のついた腕輪を渡してある。お前が魅了の魔法を使うのはわかってるんだから、対策するに決まってるだろう」
メグは焦った様に周りを見て、
「魔族って何よ。そこのあんた達、私を守りなさい」と使用人2人に言う。
「無理でーす。もう我儘上司は1人で十分です」
「本当に聖女じゃなくて、魔女ですね。魔界にスカウトしますか?」
「牛尾、八木、冗談はいいからクソ聖女を拘束しろ」
あ、よく見たら使用人は牛尾さんと八木さんだった。
「何なのよこれ、私は聖女でこの世界のヒロインなのよ。女神様に選ばれたんだから」
「その件は申し訳ないけど、私の判断が間違っていたみたいね」とドアを開けて入って来たのはマリアさんだった。一緒にメイさんもいる。
「何なのよ。特にあんた、侍女の癖に!私の攻略対象にいつも別の女を連れて来て邪魔をして。頬の火傷じゃすまないぐらいに燃やしてやる!!」と私に向かって火魔法をかけようとする。
「メイやれ、みんなは目をつぶれ」と言いながら、ルーク先生は私の目を手で隠した。
「やっと静かになったな」とルーク先生が私の目から手を離したら、目の前には叫んでいる様なメグがそのまま石になっていた。
「うわーこのまま、かち割りたい」とカール様が何か投げる物がないか探している。
「メイさん、これっていつかは石化が解けるんですか」と私はメグを突っついてみた。
「そうですね。まあこの国には魔素が大量にあるので、50年ぐらいはいけるかと」
「50年後の住民に迷惑かかるし、海とかに沈めましょう」とモニカさんが恐ろしい事を言っている。
ルーク先生は私の頬に手を当てて、
「ごめんな、守れなかった」と悲しそうに言った。
「2回目はちゃんと守ってくれましたよ」
「あら、どうしたのアンナ。見せて」とケイト様が来て、私の頬に手を当てたら、火傷の跡は消えてなくなった。
「ケイト様、ありがとうございます!あれメリッサ様、アル様、レイチェル様は?」
「アル様とレイチェル様はメリッサをゲストルームに連れて行っているわ。リヒト様の魅了魔法を無効化した時にメリッサが気を失ってね。特に外傷とかはないから大丈夫と思うけど」
そうしたらレイチェル様がやって来た。
「メリッサ様は大丈夫ですか?」
「メリッサ様は大丈夫よ、ただアル様がね。。。」レイチェル様が困った顔をしてる。
「アルに何かあったのか?」とリヒト様が焦ってる。
「いえ、メリッサ様が目を覚まされたのですが、アル様に運ばれているのに気がついてまた気絶しまして。慌てたアル様がメリッサ様ごと転んで足を捻ったみたいで」
「何やってるんだ、あいつは。ケイト嬢、申し訳ないないが一緒に来て頂けないか?」
「私もメリッサの様子を見たいので、行きましょう」
レイチェル様とカール様も一緒にゲストルームへ行った。
クリス様はモニカ様に図書館の禁書庫にアル様が持ち出した本を返しに行くついでにあの本を閲覧しに行こうと頼み込んでる。何故あそこまで必死なのだろうか。
「私達も帰りましょうか?でもコレどうしますか?」
やっと終わりが見えて来ました。




