双子令嬢-ミカとミクの場合 その2
お昼が終わった頃、アル様は私達がいるテーブルへ戻って来た。
「聖女様は疲れたそうなので、一旦王宮に帰るそうで、リヒト殿下が付き添って行きました。私達は先程の続きをしましょう」
おい、聖女。座ってお茶を飲んでいただけで、何もしてないだろう。
演習場の奥でカール騎士団長が何か叫んでいて、レイチェル様が慌てて駆け寄って行くのが見えた。
「アル様、実際に立ち位置を確認しませんか?モニカ様、お手数ですが魔王役をやって頂けないでしょうか?」
「分かりました。では私がモニカ様の正面に立ちます。お2人は私が地面に印をつけますので、そこに立ってください」
私達は言われた通りにアル様が地面に描いた円の上にたった。
アル様はモニカ様の前に立っているので、後ろにいるクリス様に気が付かない。
私達はアル様の意識をこちらに向ける為、話し続ける。
「思ったより魔王(モニカ様)との距離が近いですね、実際の魔法陣もこれぐらいなのでしょうか?」
「そうですね、これでは囲い込む前に攻撃されてしまいそうですね、もう少し魔法陣を大きく展開させないと。。」
後ろにいるクリス様が腕を伸ばして、手のひらをアル様に向けた。モニカ様は何かクリス様の頭の上を凝視している。
そして私達の方を向いて「今よ!!!」と叫んだ。
その瞬間私達は地面に伏せ、クリス様の手から金の光が出てアル様を包み込んだ。
「うわああああ」とアル様の声が聞こえた。目を開けてアル様を見ると、目を手で塞いで立っている。
メリッサが慌ててアル様に近づく。
「アル様、大丈夫ですか?ケイト、アル様が怪我してないか治癒魔法でみてくれる?」
私も慌ててアル様に近づくと。
アル様の顔つきが先程と違って、目に力がある。
「アル、やっと戻って来たなお前」とクリス様がアル様の肩に手を置く。
「クリス様、ありがとうございます。助かりました」
「モニカ様、ケイト様、メリッサ様もありがとうございます。自分の意識はあったのですが、勝手に口や体が動いてしまい。失礼な態度をとって申し訳ございません」
「やっぱりメグに魅了の魔法をかけられていたんですね」
「ええ、卒業パーティーの3ヶ月ほど前でしょうか。リヒト殿下の様子がおかしくなり、レイチェル様と言う婚約者がいらっしゃるのに、聖女様との事を全て優先する様になってしまって。殿下はレイチェル様と仲睦まじいと言う訳ではなかったのですが、不誠実な事をするお人でもないので、何かがおかしいと思い、秘密裏に調べている時に聖女様に魅了の魔法をかけられました。まさか聖女様が闇魔法を使うとは考えておらず、油断しました」
「魅了の魔法は闇魔法なんですか?」
「人の精神を操る魔法ですから。そしてリヒト様がおかしくなった頃から、魔物の発生数が増え始めました。おそらくメグは聖女ではなく、瘴気を発生させる魔女なのでしょう。討伐するべきは魔王でなく、メグです」
「アル、お前はやっぱりすごいな。俺が教えて来た中で最も優秀なだけはある」とルーク先生とアンナがやって来た。ルーク先生に解術の魔法が影響するといけないので、離れてもらっていたのだ。
「ルーク先生。。ですよね?何故目が赤い んだ、そしてそのどす黒いオーラ。お前まさか魔王か?」
これにはクリス様もびっくりしていた。
「え?ルークが?俺、魔王と友達だったのか?」
眼鏡冷血子息と魔王でピッタリじゃないとつい思ったが、口には出さなかった。
ていうか、アル様は魔力のオーラまで見えるのか。
「瘴気から生まれる魔物と俺が無関係で聖女が原因と気がついたのはアル、お前が初めてだよ。おそらく、あのクソ聖女の嫉妬心が魔物を増やしているんだろうな。あいつが魔王になった方がしっくりくるかもな」
いつもの温和なルーク先生からは想像できない言葉遣いと態度でみんなは黙ってしまってるが。アンナは慣れているのか、
「魔女王か。。新しい」と呟いている。
ルーク先生はニヤッと笑って「おい、アル。俺は世界征服とかに興味はないし、俺の臣下達も魔界で何不自由なく暮らしている。俺はアンナと平穏な暮らしがしたいんだ。俺と手を組んで、あのクソ聖女を追い出そうぜ。そしたら俺が魔王でいる限りは人間に手を出さないって約束するぜ」
「魔王の約束は信用できるのか?」とクリス様が強張った顔でルーク先生を見つめてる。
「俺が本気でこの世界の人間を全滅させようと思ったらとっくにやっているだろう。
俺は意外とこの世界の友達が気に入ってるんだ」
「ルーク先生、私は貴方を信じます。裏切るなら、私に貴方を倒せるレベル魔法を教える必要はなかったでしょうし。でも万が一の事があれば、私が責任持って貴方を倒します」とアル様がそう言いながら立ち上がった。
「さあリヒト殿下をを取り戻しましょう」
そこにレイチェル様に宥められて、やっと気分を落ち着けたカール様とレイチェル様が来た。
「聖女も殿下もいないし、もう今日の演習はやめだ。。。なんかあったのか?」
クリス様がカール様に今までの事を説明する。
「クリス、お前こんな長く話せるんだな」
「お前、俺の話を聞いていたのか?」
「聞いていたぞ、やっぱりあのクソ聖女は魔女だったんだな、あれに比べたらルークなんか聖人だぞ、腹黒いけど」
アル様は何か悩んでる。
「どうかなされましたか?アル様」とメリッサが聞くと。
「殿下にかかっている魅了の魔法だが、王家の人間はある程度の魔法耐性を持っているはずなんだ。それがあれだけ聖女に従順に従っているという事は、毎日のように魔法をかけ直されているか、何か魅了魔法を継続させる装身具を付けさせられているかもしれない」
アル様は苦しそうな顔をしている。
「どちらにしろ、これだけ長い時間魅了魔法をかけられてるという事は、精神に大変な負担がかかっている。殿下ももうそろそろ限界かもしれない。限界を超えたら、もう自我がなくなり、まさに操り人形になってしまう、私がお守りしなくてはならなかったのに、臣下として失格だ」
肩を落とすアル様の手をメリッサはそっと握って、「それを言うなら、私達みんなが聖女の本質に気がつかず、野放しにしてしまったのも原因です。自分お1人のせいにしてはダメです。今は嘆く事より、殿下をお救いする方法を考えましょう」
アル様は力強く頷くと、禁書庫の本を取り出した。
「では、魔王討伐改め聖女討伐について話し合おう。クリス様とモニカ様は私が魔王討伐に使おうとしていた魔法で私の魅了の魔法を無効化したんだな」
「ああ、でも俺の魔力もゴッソリ持って行かれて、今かなりきつい」と言うクリス様の顔色は確かに悪い。
「クリス様の魔力量でそれですか、殿下にかけられている魅了の魔法は重ねてがけされている可能性がありますから、私の魔力量でも足りないかもしれませんね」
「アル様、先程の魔法陣はリヒト殿下には使えないのですか?アル様の力が倍増されるんですよね」とメリッサが言う。
「使えると思うが、引き剥がした魔法が正面にいる者に跳ね返ってしまう。この場合は私になるが、私は魔法耐性を持っていないので命はないだろう。勿論、殿下の為に命をかける覚悟はできているが」
「正面ですね、魔法を発動させた人にではないのですね」
「ああ、この場合だと殿下の前にいる者になる」
「では私がそこに立ちます、私は魔法耐性があるので大丈夫です」とメリッサが胸を張って言う。
「そんな危険な事を貴方にさせるわけには行かない、特に殿下にかかっている魔力の大きさがわからない」
「そいつの魔力耐性は女神の加護だ、かなり強いから大丈夫だと思うぞ」とルーク先生が言う。
「女神の加護をお持ちなんですか!」とアル様が感激しているが、実際は買ったんだけどねと知っている女性陣が全員微妙な顔をしている。
「しかし、それでも心配です」
メリッサはにっこりしながら、「それでも何かがありましたら、妹のケイトが治癒魔法を使えますので、治してもらいます。殿下をお助けする為にやりましょう!」
いや、魔法耐性があったらあたしの治癒の魔法は使えないのではと思ったが、黙っていた。
「こんなに勇気のある女性にあったのは初めてです、私は魔法陣を改良して少しでも跳ね返って来た魔法が分散する様にします」とアル様は興奮のあまりメリッサの手をぎゅうぎゅう握っている。メリッサはもう失神寸前だ。
「じゃあどうやってクソ聖女と殿下を離れさせて、殿下を魔法陣のある場所まで連れてくるかだよな」とカール様が言う。
レイチェル様はニヤッと笑って。
「そこは元婚約者の私にお任せください」




