双子令嬢-ミカとミクの場合 その1
目を開けると見慣れない天井が見えた。
狭いアパートなので、いつもは手が届く所にミカがいるのにいない。私は。。私は。。ケイトだ。
ドアがバーンと開いて、メリッサが駆け込んできた。
「ケイトーーー!私、メリッサだわ!」
「メリッサ様、そのような姿でお部屋を出てはいけません」と後ろからアヤさん。。じゃなくて、新しい侍女のアンナがやってきた。
「ケイト様、おはようございます。よく寝られましたか?メリッサ様は大丈夫そうですが、頭痛とかありませんか?」とアンナはカートを廊下から持ってきた。お茶を淹れてくれるようだ。
「大丈夫みたい、そう私達はここにいるのね」
「そうです、今日は学園に行って、聖女様との合同遠征があります。勿論、王太子補佐のアル様とリヒト王太子様もいらっしゃいます」
「「え、本物に会えるの」」メリッサと私は顔を見合わせた。
「早く着替えましょう!!」
「あーー鼻血出ても治癒魔法で止められるかしら」
「お嬢様方落ち着いてください。まだ早いですし、ハンカチも多めに持っていきましょう」
私達はアンナが入れてくれたお茶を飲んでから、ダイニングルームに行った。
そこには悲痛な顔をした両親と弟のリアムがいた。
「「お父様、お母様、リアム、おはようございます」」
お母様はもう泣きそうだ。リアムもつられて泣きそうになっている。
「何で私達の娘達が魔王討伐に行かなきゃいけないのですか?王太子命とはいえ酷すぎます」
「お姉様達と離れるの嫌だー」
「ハンナ、リアム、この事はもう話し合ったじゃないか、王太子様も2人の安全を最優先にすると約束してくれたのだから」とお父様がお母様の肩を抱いている。
リアムは私達の方に走ってきて抱きついた。
アル様とリヒト様に会える事で浮かれている場合じゃなかった。
ルーク先生と戦う訳ではないので、魔王に倒される心配はないけど、瘴気から生まれる魔獣は、魔王様(ルーク先生)もコントロールできないって言ってたし。その魔獣により怪我をしたり、命を落とす可能性だってあるんだから。
私達はお父様、お母様、リアムを抱きしめて、絶対に無事に帰ってきますからと約束した。
ちなみに昨日もこれをやった事を思い出した。出発するまで毎日するんだろうか?
泣きつくリアムを引き剥がし、やっと馬車に乗って白薔薇学園に来た。
「「うわーー本物」」
「ケイトみてー、聖女が落ちる噴水!」
「あ、ルーク先生との出会いの木」
「あれって卒業パーティーの会場?」
「教室にも行きたい!!」
もうアンナの顔が引き攣っている。
「今の発言は他の皆さんの前ではしないでくださいね」
演習場に着くと、もう主要メンバーだらけで、失神しそうだ。
メリッサとお互いに深呼吸をしていたら、カール騎士団長に「それは新しい準備運動なのか?是非教えてもらいたい」と言われたので、2人でラジオ体操を教えたら、後ろでレイチェル様、モニカ様とアンナが悶絶していた。
カール騎士団長はラジオ体操を大変気に入った様で、これから毎日しようと宣言しているのを、レイチェル様がニコニコ見守っている。
モニカ様の側にはクリス様がいるが、眼鏡冷血子息とは思えないほど、モニカ様のお世話を甲斐甲斐しくしてるし、ちゃんと普通に話している。
ルーク先生はそれとなく、アンナの横にいるし。
幸せカップルだらけでちょっと羨ましい。
そして演習場の入口の方が騒がしくなったと思ったら、聖女様、アル様、リヒト王太子殿下がやってくるのが見えた。
私の最推しのリヒト様が歩いてる、金髪碧眼の美男子。思わず見惚れてしまった。
リヒト様は私達の方に来ると
「チャップマン侯爵令嬢、今日も聖女の為に宜しく頼むぞ」と声をかけてくれた。
こ。。声もカッコ良すぎる上になんか良い匂いまでする。
「ひゃ。。はい」
そんな私を聖女様は睨みつけて、近づいて来た。そしてリヒト様に聞こえない様な小声で囁いた「人の男に色目使ってんじゃねーよ、ブスが」
「はい?」
私が何か言う前に「リヒト様待ってくださいー」と言いながら去っていった。
なんだ?あの女。あいつには敬称はいらんな。メグって呼ぶ事にしよう。
2人の後ろを歩いていたアル様はモニカ様に話しかけている。
近くにいるメリッサはもう緊張でカチコチになっている。アル様もかっこいいなあ。
「ケイト様、アル様からお話したい事があるそうなのでこちらへ」とモニカ様が歩き出したので、私も慌ててついていった。
ルーク先生とアンナは、ルーク先生のオフィスに行くそうだ。今は特に用事もないし、練習で術が発動したら、ルーク先生に何か影響があるといけないし。
アル様は本を開き、モニカ様と翻訳について話し合い、紙に色々メモをしている。
モニカ様も通訳をしながら、本を読み進めているが、その表情はだんだん険しくなっていった。そしてモニカ様もこっそり机の下で何かをメモしている。
アル様は紙に描いた魔法陣を見返して、満足した顔をしている。
「よし、これで良いだろう。説明しよう。この魔法陣には中心を囲む様に3つの小さな円がある。この頂点の円には術を発動させる私が、この下の両端にある2つの円には術を増幅、固定させる為に貴方がた2人に立ってもらう。魔王を囲い込み、魔力を吸い取って消し去るのが目的だ」
「待ってください、それでは危険すぎます。この魔法自体を使うことにはある程度に魔力を持っていればできます。しかし、魔法陣を使って、双子の力で増幅した魔法を使えば、魔王から吸い取った魔力が貴方に全て跳ね返って来ます。聖女様ならその魔力を全て吸収できますが、貴方では命を失いますよ」
「モニカ様、それは本当ですか?」とメリッサが焦った様な声でいう。
「それは問題ない。聖女様にこんな危険な役目をさせるぐらいなら、私の命ぐらい問題ない」とアル様は表情を変えずにいう。
アンナの話だとアル様も魅力の魔法にかかっている可能性があると聞いていたが、そのせいで自分の命も何とも思わなくなっているのだろうか?
そんな事を思っていると、メグがこちらにやって来た。
「アル様ー、そろそろ休憩にしません?その魔法陣が魔王を倒すやつ?私は怖くてできないから、宜しくね」
「勿論です、私は貴方をお守りしたいから、私の命ぐらい何ともありません。貴方が幸せになる事が、私の幸せなんです」
あ、こりゃ思いっきり魅了の魔法にかかってるわね。
後ろにいるモニカさんもそれを聞いて目が見開いている。
アル様は「少し席を外します、失礼します」と本を持ってメグと去っていった。
「ありゃやばいわね、魅了の魔法って怖いわね。あれじゃ操り人形みたい」とモニカ様は怒っている。
メリッサはアル様が死ぬかもしれないと呆然としている。
モニカさんが先程何かをメモしていた紙をポケットから出した。
「とりあえず、あのぶりっ子聖女のせいでアル様が命を落とす必要はないわ。アル様が魔法陣作成に集中している間に、詠唱を書き写したの、これでアル様にかかってる魅了の魔法を解除できないか試してみましょう」
「でも私達では魔力が足りないかもしれません」と私がいうと。モニカ様はにっこり笑って「それはクリス様ができると思うわ。クリス様の魔力量もアル様に匹敵するほど高いですから」とモニカさんはクリス様を見つめている。
「ではアル様が帰って来たら、やってみましょう」とまだ呆然としていたメリッサを呼んで、ランチを食べながら作戦を練った。




