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株式会社ミラクルハピネス

次の日、私はミラクルハピネスの本社ビルの前で緊張しながら立っていた。


思ったより大きなビルだわ。


そりゃあのゲームはかなりヒットしたものね。


もう雇用は決まっているが、私は一応この会社の下調べをしてきた。


会社が設立されたのは5年前。モバイルゲーム「白薔薇学園」のヒットで急成長を遂げ、去年上場を承認され株式会社になった。


白薔薇学園は従来の乙女ゲームと違い、主人公を選ぶところから始まる。

聖女、悪役令嬢、メイド、クラスメート、なんなら男性キャラから女性キャラ攻略なんてのもできる。私は勿論女性キャラだったが。

攻略対象は全ての人なので、まさに人の数だけゲームのルートがあり、毎年新しい人物がアップデートで入り、毎回違うゲームを楽しんでいる感じだった。


ただ普通の乙女ゲームを楽しみたい人のために、メインルートでは6人の攻略対象がいる。


私は王道の聖女からの王太子攻略ルートもしたし、大体の攻略対象のルートはしたが私が1番プレイしたのは魔王ルートだった。


その時は誰をヒロインに選んだんだっけ、生徒だったか、悪役令嬢の侍女だったか?


魔王ルシュファー。普段は学園の先生だけど、実は魔王って設定で。無茶苦茶かっこよかったのよ。黒髪に赤い目、蔑む様な眼差しが私にだけ優しくなる所とか。


なかなか攻略は難しくて、誇張ではなく何百回もプレイした。


妄想に耽っていたら、約束の時間になったので、受付で名刺を見せて、企画課の会議室に案内された。


そこにはマリアさんと魔王がいた。


「え?ルシュファー?」と思わず言ってしまったら、魔王がビクッとした。


マリアさんは慌てて立ち上がり、

「アヤさん、ようこそ。こちらは企画の私の同僚の黒木龍(クロキリュウ)さんです」


魔王じゃなくて、黒木さんも立ち上がって挨拶をしてくれた。

「黒木です、よろしくお願いします」


黒木さんの目は勿論赤ではないが、顔立ちがよく似てる。


そうだ、マリアさんも1番初めに出てくる女神に似ているんだ。


「初めまして、石井アヤです。宜しくお願いします。すみません、ジロジロ見てしまい。昨日久しぶりに白薔薇学園ゲームを開いたら、キャラがお二人に似ていたので。マリアさんは制作に関わったと昨日おっしゃってましたが、キャラクターデザインのベースになったのですか?」


「まあそんな所ね」とマリアさんがウインクをした。


「会社案内は後でするとして、まず雇用契約書にサインしてもらわないと」と黒木さんが巻物のような物と羽ペンを私の前に置いた。


「あーーこれ白薔薇学園で出てきますね。1番初めの女神との契約で、流石のゲーム会社ですね。事務用品も凝ってますね」と巻物を開く。


巻物の中は筆記体の英語みたいなもので書いてあったので少し躊躇したのかわかったのか、

「こちらが翻訳内容です」と別紙をくれた。

まあ、翻訳の方が断然少ないように見えるが、要約してあるのかな?


お給料は今までより高くなっているし、有給休暇2週間、健康診断、長期出張手当などがある。


「出張があるんですか?」


「ええ、私達が考えている結婚紹介所は希望する日本人女性が他国に嫁ぐ時のお手伝いをすると言う物なの、だからお見合いの時に現地に行ってもらう必要があって」


「え?英語とか必要ですか?私は英語がすごく苦手で」と慌てて言うと。


「いえいえ、大丈夫よ。この国は親日国でみんな日本語が話せるから。私もそこの出身なのよ」


「そうなんですか。マリアさんの日本語は日本で生まれ育った私より綺麗ですし」


ほっとしてまた、私は契約書を読む。特に変わった事はなさそうだ。


最後に書かれていたのは、守秘義務。そりゃお客様のプライベートな情報を扱うのだ、そこは心得ている。


黒木さんは私がその部分を読んでいるのを見て説明してくれた。

「石井さんは元々結婚相談所で働いていたので、恐らくお客様のプライベートな情報も扱ってきたと思うんですが、私たちの仕事ではお客様の事だけでなく、出張で見聞きした事も社外で話すのは禁止しているんだ。この国は情報管理が厳しくて、スパイと思われたら拘束されてしまうからね」


「え??そんなに厳しいのですか?」


「ええ、だからアヤさんには家族や友達にも仕事内容を伝えたりしないで欲しいの。そうすれば大丈夫だから」


「わかりました、所で何と言う国なんですか?私は地理も苦手だったので、知らないかもですが」


すると黒木さんがスッと立ち上がり、私の横に来た。

「すまないな、国の名前も守秘義務があって、石井さんが契約書にサインするまで言えないんだ。急に色々言って申し訳ない。契約にもう少し時間が欲しければ、ゆっくり考えるといい。でも私たちとしては、石井さんと一緒に働きたい、特に私がね」と耳元で言われた瞬間、背中がゾクゾクした。


私は彼氏もいたことがないし、男の人に免疫ないので、顔が真っ赤になってしまった。


「黒木、嬉しいのはわかるけど自重しないさい」とマリアさんが言う。


我に返った私は「いえ、大丈夫です。お話は十分に聞きましたから!」と言うと。


黒木さんは羽ペンにインクをつけてくれた。


「ではここに名前を書いてくれるか?」


私は石井アヤと羽ペンで書く。ゲームだとこれでサラサラ書いていたが、結構大変ね。


そして黒木さんが私の手を取った。

突然の事でびっくりして、思わず振り払おうするが、黒木さんの力は強くがっちり掴まれてる。


「申し訳ない、契約書には血判が必要なんだ」


「血判????へ?血」


黒木さんはいつの間にか出した、小さい針のように物を私の親指に刺した。


「あれ?痛くないですね」と言うと、黒木さんは嬉しそうに言った。

「お、わかるか。俺が改良した針なんだ。痛くもないし、跡も残らない。やっぱり使う人に無駄な苦痛を与えるのは古いと思うんだよ」


そんなに血判をする事があるんだろうか?


黒木さんは私の血をサインの上に数滴垂らすと、契約書が一瞬光った気がした。


マリアさんと黒木さんとはそれを満足気に見て。


「「アヤさん、リドリア国異世界結婚紹介所チームにようこそ!」」2人が言った。



「異世界?????」










乙女ゲームとか言ってますが、実はプレイした事ありません。何にか変な部分がありましてもそっと見守ってください。

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